「起業支援」のスペシャリストに聞く。「好きなことで稼いでいる人」とそうでない人の決定的な違い

東京ウォーカー(全国版)

年功序列制が崩壊したといわれる現在、ひとつの会社に定年まで勤め続けることがあたりまえではなくなった。その流れを受けて、転職をする人、そしてなかには起業する人も増加している。ただ、転職はともかく起業にはハードルの高さを感じる人も少なくないはずだ。これまでに数多くの人の起業を支援してきた今井孝さんに、「自分の好きなことで稼げる人」とそうでない人の違いはどこにあるのかを教えてもらった。

株式会社キャリッジウェイ・コンサルティング代表取締役の今井孝さん【撮影=藤巻祐介】


ふつうの人が「自分の好きなことで稼げる人」に変貌

「自分の力や好きなことで稼げたらいいな」と考えながらも、その一歩を踏み出すことがなかなかできない人は多いものです。そんな人に共通しているのは、「自分にはお金にできるような取り柄がない」と決めつけていること。ところが、ちょっとしたことがきっかけで「自分の力や好きなことで稼げる人」に変わった人もたくさんいます。

私がこれまでにかかわってきた人のなかだと、UさんというSEもそのひとりでした。Uさんもやはり「自分には取り柄がない」といっていましたが、副業でITサポートの仕事を始めたところ、本業をはるかに超える月に100万円という収入を得るようになり、今では独立して稼いでいます。

また、副業で英語コーチをしているNさんは、数十万円のコーチング契約を次々にとっています。NさんもUさん同様に、「自分には英語を教える資格なんてない」と、もともと自分を低評価している人でした。でも、英語コーチとして稼げるようになったことで自信を持ち、現在は副業で英語コーチをしながら、本職のほうでは転職して外資系企業の正社員としても活躍しています。

それから、主婦から片づけコンサルタントに転身したIさんは、なんと年商が3000万円を超えています。私が会った当初は、自分で「ごくふつうの主婦です」といっており、実際、片づけに関する資格をひとつ持っていただけ。そこから、毎年数百人もの生徒たちに片づけを教えるようになりました。

これらの例をあげると、「彼ら彼女らの能力が素晴らしいものだったのだろう」と思う人も多いのではないしょうか。もちろん、今ではお金を稼げているのですから、その能力は一定の水準には達していたと見ることができます。しかし、その業界のなかで特別に優れていたというわけではなかった。SEとしては「ふつう」、英語コーチとしては「ふつう」、片づけコンサルタントとしては「ふつう」の力を持っていたに過ぎないのです。

【写真】「ちょっとしたことがきっかけで『自分の力や好きなことで稼げる人』に変わった人もたくさんいる」と今井さん【撮影=藤巻祐介】

自分で稼げない人が持つ「お金を受け取れない」という思い込み

では、「自分の力や好きなことで稼げる人」とそうでない人の違いはどこにあるのでしょう?実は、自分の力や好きなことで稼ぐための一歩を踏み出せない人には、ひとつの共通点があります。それは、「お金を受け取れない」という思い込みを持っていることです。

例えば、あなたの知識やスキルを生かしたなんらかのサービスに100万円を支払ってくれるという人がいたらどうですか?喜んで100万円をもらえばいいだけですよね?

ところが、100万円をもらえるといううれしさと同時に、恐怖心を感じる人もいるのではないでしょうか。「こんなことで100万円ももらっていいの?」「本当に満足してもらえるだろうか?」「クレームを入れられたらどうしようか?」といったネガティブな思いがよぎり、お金を受け取ることに恐怖を感じてしまうのです。

そして、こういった恐怖心を生んでお金を受け取れなくさせているのは、多くの人がサラリーマンとして「給料でしかお金をもらう経験をしていない」ことに原因があると私は考えています。

今、賃上げの問題が話題となっていますが、日本の平均年収はもう何十年も横ばい状態です。仕事をサボっても、逆にどんなに頑張って働いても給料はほとんど変わりません。ですから、企業に勤めている人の多くが、「自分は本当に役に立てているのだろうか?」「自分の仕事で喜んでもらえているのだろうか?」という疑問を持ち、自分に価値を感じられません。その結果、「自分にはお金になるような取り柄がない」「だからお金を受け取れない」と思い込んでしまうのです。

自分で稼げない人には「お金を受け取れない」という思い込みがある【撮影=藤巻祐介】

「感謝の感情」に着目し、起業のヒントを得る

では、現時点で給料でしかお金をもらっていない人が、「お金を受け取れる人」「自分の力や好きなことで稼げる人」になるにはどうするべきでしょう。

そのためにはまず、「お金の正体」を知ることが最優先事項です。私がいうお金の正体とは、「感情」です。価値とは感情で決まるのです。

私たちは、なぜ旅行に行きたいのでしょうか。それは、旅先で満たしたい感情があるからです。「ピラミッドを見たい」のなら「知的好奇心を満たしたい」という感情、「リゾートでくつろぎたい」のなら「安らぎを感じたい」という感情、「美しい中世の街並みを見たい」のなら「感動したい」という感情といったふうに、なんらかの感情を満たすためにお金を払って旅行に行くわけです。

このことは、あらゆる商品やサービスにあてはまる「お金の真理」といっていいでしょう。映画を観る人は「ドキドキしたい」「笑いたい」「泣きたい」といった感情を持っていますし、仲間と居酒屋に行く人なら「楽しい気分を味わいたい」「おいしいお酒を飲みたい」といった感情を持っています。

そこでまずは、自分自身がお金を使っているシチュエーションではどんな感情を持っているかを考えてみるのです。すると、「自分には大した取り柄やスキルがない」と思っていた人であっても、「自分の持つ取り柄やスキルでも誰かの感情を動かすことができるかもしれない」というふうに徐々に思考が変化していくはずです。

そして、特に「ありがとう」という感謝の感情に着目することをおすすめします。「すべての仕事は誰かの困りごとを解決することで成立している」ともいわれます。社内外問わず、あるいはプライベートでも、これまでに誰かから「ありがとう」といわれたときのことを思い出してみてください。

「自分には取り柄なんてない」「お金になるスキルなんて持っていない」と思っている人でも、これまで何度も「ありがとう」といわれてきたはずです。そこに、自分の持つ力でビジネスを始めるためのヒントが隠れています。

「ありがとう」という感謝の感情に着目することを勧める今井さん【撮影=藤巻祐介】


この記事のひときわ#やくにたつ
・お金の正体とは「感情」。価値とは感情で決まるもの<br />・自分自身がお金を使うシチュエーションではどんな感情を持っているかを考えてみる<br />・「ありがとう」という感謝の感情に着目する

構成=岩川悟(合同会社スリップストリーム)、取材・文=清家茂樹、写真=藤巻祐介

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