閑古鳥が鳴いていた地方の土産物店に、若者がどっと押し寄せる…。そんな“奇跡”を起こし、地方自治体から熱い視線を集めている携帯ゲームがある。その名も「コロニーな生活☆PLUS」通称“コロプラ”。なにしろ日光の土産物店にはこのゲームのプレーヤーが1か月で800人(!)訪れ、1人で2万円分も和菓子を買うなど、ともすれば“社会現象”とも言えるフィーバーを生み出しているのだ。
“コロプラ”の内容は実にシンプルで“移動してお金を稼ぐ”ことがすべてだ。携帯電話の位置情報機能を利用して、実際に移動した距離を計算し、その距離に応じてゲーム内で使える「仮想通貨」をゲットする。そのお金で“自分のコロニー(街)”を育てていき、他のユーザーとの交流を楽しむというものだ。
携帯電話を使った“位置登録”を使い、20〜30代の若者に受けている同ゲームだが、なぜ“地域の活性化”を後押ししているのだろうか――。
ゲームを運営する「コロプラ」代表・馬場さんの答えはいたってシンプル。「ゲームを使って若者にリアルに“お出かけ”を喚起できないかと思ったのが誕生のきっかけなんです」と話す。
例えば、「指定の店舗で商品を買わないと、ゲーム内でのレア土産も手に入らない」というサービスも、若者を“リアル世界”に引き出すひとつの方策だ。同社が提携した日光の土産物店で和菓子を買うことで、ゲーム中の“レア土産”をゲットできる。逆に言えば、リアルに観光地に出向かなければ、ゲームでも進展がないわけだ。しかも、提携店については、事前にその“品質”をしっかり審査した一流店が多いため、実際に訪れたユーザーの満足度が高い、と言う点も大きい。それらが相まって、ちょっとしたフィーバーを巻き起こしているのだ。
また、それをさらに推し進めた形として、2009年8〜9月には、福岡・長崎・佐賀をめぐる1泊2日のバスツアーを2度実施。一般的な観光だけでなく、コロカ提携店である有田焼の「しん窯(がま)」(佐賀県有田町)で工房見学できるとあり、合計約120人のユーザーが参加したが、発売から1週間弱で予約が埋まったという。
この取り組みを通して、「このゲームを運営して、地域経済の厳しさを肌で感じました」と馬場さんは言う。「今まで何をやっても大きな集客につながらなかった、という地域の店舗の方から、毎日のように驚きの声やお礼をいただきます。『地域を元気にしたい』という当社の理念が現実に向かっているようで、うれしいですね」と、予想以上の成果に笑顔が隠せない様子だ。
「移動にエンターテイメント性を持たせたい」という思いからスタートした「コロニーな生活☆PLUS」は、今や会員73万人以上(12/25現在)。そのほとんどが首都圏の20〜30代の会社員ということもあり、彼らがこぞって各地で買い物をするとなれば、その経済効果は相当なものになるだろう。
ユーザーからも「お出かけが楽しくなった」「土日が充実した」と反応は上々。実際に、コロカ目当てに出かけ、ついでに観光を楽しむユーザーも多く、旅による“新しい発見”にも成功している。最近では、JR九州と提携し「コロプラ★乗り放題きっぷ」も販売。九州各地の50駅をめぐるゲーム内企画「九州一周塗りつぶし位置ゲーの旅」と合わせ、こちらも多くのユーザーの心をとらえているようだ。
「この方法で、全国の活性化に悩んでいる地域を少しでも元気にしたい」「いずれコロプラの提携店がその土地の観光情報局にしてきたい」など、今後の展望も語る馬場さん。ITを活用し、“地域活性化”に見事成功した「コロプラ」。“次の一手”が楽しみなところだ。 【東京ウォーカー】