50人を超えるスタッフが、息をこらして凝視する。
「シャーープ、アップ!」
食い入るように見つめる先から、明るい声が弾けた。引き締まった空気を打ち破るかのようにセリフがオフィスに響くと、一層力強くなった視線が再び一点に集中する。
「OKです!」
男性スタッフが声を張り上げると、ようやく張り詰めた緊張感が解ける。そして、すぐさま温かい拍手が鳴り響いた。早朝から続いた撮影が、ようやく終わった瞬間だった。
視線が集中し、続いて拍手を送られている先で、1人の女性がはにかみながら頭を下げている。
「縮こまってしまった自分をCMで見て落ち込むよりも、撮影のときに変な汗をかいても、思いっきりやった方がいいなって」と、笑って撮影の様子を振り返る。7月11日(火)から放送されている、集中サポート飲料「リアルゴールド シャープアップ」のテレビCMに出演する、広瀬アリス、その人である。
「リアルゴールド」として20年ぶりとなるCMシリーズ。「彼女の元気なキャラクターは、『仕事をやり遂げる人たちを応援する』というリアルゴールドのキャラクターとしてふさわしい」というのが、コカ・コーラの起用理由だ。
実際に撮影現場も、活力を与える適度な緊張感にこそ包まれても、ピリピリとした重苦しい雰囲気は流れない。「リハーサルやカメラテストのギリギリまでは、かなりリラックスしています。何も考えないように感情を無にして、本番で一気に感情をガッと入れるようにしていますね」という通り、彼女のキャラクターに引っ張られるかのように、テンポよく、そして朗らかに撮影は進んでいった。
「きちんと自身のビジョンやアイデアがある方で、セッションしながら撮影を進めることができました」とは、今回のCMで監督を務めた、「株式会社 電通クリエーティブX(クロス)」の穴井創平による広瀬評だ。
5月から放送された「リアゴエール」篇では、チアリーダー姿でビジネスマンを応援する内容が話題となった。今回はブルーとゴールドという「シャープアップ」カラーのユニフォームで、再びオフィスを舞台に全力応援を見せている。
「僕が演技指導しているなかでもアイデアを出していただいて、『監督、こっちのほうがチアっぽくて可愛くないですか?』など、前回の経験を踏まえてのアドバイスを下さり、とても助かりました。結果、チアらしい元気な画をとることができて感謝しています」と、穴井が撮影現場でのやりとりを明かす。
テレビを見ていると何気なく流れてくるCMだが、今回も構想から完成まで半年以上の月日が費やされるなど、多くの人々の情熱や労力が詰まっている。画面には映らないものの、撮影の前後にある出演者と監督とのディスカッションもそのひとつ。1本のCMが生まれるまでの舞台裏は、広大に広がっている。
完成までの過程を考えれば、一つひとつの演技にスタッフが熱い視線を送るのも頷ける。「やはり、自分だけの力でCMがつくられているわけではないですし、『みなさんがいるからこそ』という思いがあります」という言葉からも責任感は伝わり、実際にひとたびカメラが回れば堂々とした振る舞いである。
とはいえ、プレッシャーは感じないものなのか――。
思わず聞いてみると、「プレッシャーを感じるのはすごく苦手なんです」と笑う。「私すごく緊張しやすいんですが、リアルゴールドの撮影はいつも楽しく、やりやすい環境でやらせて頂いています」という言葉からは、どこか素顔も感じさせる。
騒がしいオフィスで集中力の切れたビジネスマンに、製品を手渡して仕事を全力で応援する、インパクトもあり、どこかコミカルさもあるCM。わずか15秒間のみの映像にも、「私自身、“まじめにふざけること”が大好きなので」という、22歳の自然体を感じさせるエッセンスが滲み出ている。
コタニ