こんにちは。YouTubeチャンネル「聞いてわかる投資本要約チャンネル」を運営している、二児の父でサラリーマン投資家のタザキ(
@tazaki_youtube
)と申します。
学生時代に株の魅力を知って以来、投資本好きが高じて自分の学びをYouTubeで発信したところ、想像以上の反響を呼び、3年間でチャンネル登録者が10万人を超えました。これまでに読んだ投資・マネー系の本は300冊以上。その経験から、ここでは特におすすめの書籍や、コスパの高い書籍を、経験値や投資スタイル別で紹介していきます。
今回は、
「ケン・フィッシャーのPSR株分析」(著:ケン・フィッシャー/パンローリング)
、こちらの本をご紹介していきたいと思います。
本作の著者は、成長株投資理論の巨匠、フィリップ・フィッシャーの息子にして著名投資家でもあるケン・フィッシャーです。
フィリップ・フィッシャーの成長株理論は、ウォーレン・バフェットにも多大な影響与えたと言われております。バフェット自身が自らの投資方法を85%はベンジャミン・グレアムの割安株理論の影響受けているが、残りの15%はフィリップ・フィッシャーの成長株理論からなっていると公言しているほどです。
しかし、フィリップ・フィッシャーの理論は抽象的な部分が多く、それを数値化し具体的に表すことは難しいとも指摘されています。そこで、息子であるケン・フィッシャーは、父親の理論を継承しつつも、それをより定量的な基準で表現しようとしたのが、この「ケン・フィッシャーのPSR株分析」という本です。
そして、
本書の特徴的な一面として、"グリッチ"という考え方が挙げられます。これは、何倍にも価値を増す超成長株が、途中で必ず遭遇するであろう"挫折"を指す言葉です。
グリッチとは何なのか
この
"グリッチ"とは、成長企業がその道程で必ず経験するとされる問題や困難、事業の業績低下や赤字への転落などを指します。
しかし、本書ではこれを失敗とは捉えず、むしろ進化の証と説明しています。また、グリッチが発生するフェーズでは、株価は大幅に下落し、これが優れた企業を割安で購入する絶好の機会となるのです。
グリッチという波乱によって株価が大暴落し、その瞬間に手頃な価格で購入できた企業が、驚異的なリターンをもたらすスーパー株式へと変貌するのです。
「スーパー株式」とは何か
スーパー株式とは何でしょう?本書では「年間20%前後の利益成長を続け、その結果、おおよそ3年で株価が3倍から10倍に跳ね上がる企業」と定義しています。そのような株式でなければ、長期的な保有にはあまり意味がないと主張しています。
「スーパー株式」は、つまり、安価で購入可能な「スーパー企業」の株式を指します。
そして、スーパー企業の株価が割安になる瞬間、それは"グリッチ"、つまり企業が問題に直面している時期を示しています。このスーパー株式をどのように見つけるのかを、見ていきましょう。
バリエーション分析~PSRの使い方~
一般的に、企業の価値を評価する指標としてPER(株価収益率)が頻繁に使用されますが、PERには大きな欠点があります。それは、赤字企業や利益がゼロの企業を評価することができない点です。
赤字企業や利益がゼロの企業も、時折、スーパー株式に躍り出ることがあります。それは、成長の苦悩、いわゆる"グリッチ"に直面している最中のスーパー企業です。若くて成長途上の企業が初期段階で黒字になれていないことは決して珍しくありません。そのような状況では、PERは役に立たないのです。
そこで
著者は、PERという指標をあまり好まず、代わりにPSR(株価売上高倍率)を好むと述べています。彼の最も成功した投資のほとんどは、損失を出していたり、利益がごくわずかで、PERが無意味になったり、表面的にPERが無限大になっているような企業への投資だったと述べています。
PSRがPERより優れている一つの点は、その変動の小ささです。
PSRとPERの計算式を見てみると、これらは株価の割合を示す基準が、利益か売上高かという違いだけであることがわかります。
売上高は利益と比較して安定性があるため、PSRが有利な一面を持つと言えます。利益の変動は大きく、時には赤字になることもあります。そうした場合、PERは役立たなくなります。
スーパー企業の株価が大幅に下落し、最適な購入時期となった場合、その業績が大幅な売り上げ減になっているとは限りません。これが"グリッチ"です。
ただし、誤解しないでいただきたいのは、企業が"グリッチ"に直面している時期には、利益が落ち込んでいる場合がほとんどだということです。大抵の場合、売上高はそれほど変動していない可能性が高いです。しかし、人々は失望感から大量に株を売り払うことが多いため、スーパー企業の株はスーパー株式へと変貌する可能性があります。
理想的なスーパー株式は次の特徴を持つことが期待されます。
1. 自己資金をもとに、今後も長期的におよそ年平均15%~20%の成長が可能である。
2. 今後も長期的に税引き後利益率が平均で5%を超える。
3. 株価売り上げ倍率(PSR)が0.75以下である。
この基準は、基本的な考え方のベースになります。
実際にスーパー株式を売買するときは、以下の3つの鉄則を守る必要があります。
(1) PSRが1.5倍を超えるものを避ける。PSRが3倍を超えるものは何があっても買ってはいけない。
(2) PSRが0.75倍以下のスーパー企業を積極的に探す。常に数社はあると言われる。
(3) PSRが3.0倍から6.0倍に上昇したスーパー企業の株式は売れ。
いわゆる「成長株」とされる銘柄は、初期段階での過度な評価が急速な成長で正当化できることは少ないです。もし企業が大きく、PSRが高い場合、その株価は未来で大きな失望を生むか、悲劇的な破局を招く可能性が高いです。
たとえば、インテルの株を絶対に保有したかったとするなら、1974年のPSRが8.5倍だったときに購入するべきではありませんでした。1974年末または1975年初頭、株価が4ドル未満でPSRが1.1倍だったときに購入することができました。そこから1980年の最高値まで保有し続ければ、あなたの投資は10倍になったはずです。
研究開発はマーケティングに影響される
著者はPSRに加えて、PRR(株価研究費倍率)も一緒に使っています。
PRRという指標は未聞の方も多いかもしれません。私自身も初めて耳にしました。
PRRは、時価総額を一年間の研究開発費で割ったものです。
スーパー株式を探すにあたり、異なる観点からの複数の指標を選定基準とするのがよいという理由から、本書ではPRRを推奨しています。
ただし、PRRを過度に正確に取り扱うことは間違いです。「この指標は大雑把に価値を測定するツールとして使うべきだ」と本書には書かれていますので、肝心なのは「PSRだけで判断しない」ということです。
「PRRが15倍を超えたら買ってはいけない」や「10倍以下なら買え」といった数値的な基準以上に私が納得させられたのは、研究費の成果に対する考え方です。本書では「市場調査が技術調査を左右する」と述べられています。PRRが示すのは単に開発の技術力の高さだけではなく、マーケティングが適切でなければ、その開発は報われないということです。
研究の成功はよいマーケティングの成果に過ぎないということで、研究に過度にこだわるのは無意味だとされています。
これは特に日本人が注意すべき点かもしれません。技術を追求し、よい製品を作れば成功すると信じている企業も存在します。だとしたら、なぜ美しいテレビを追求し続けた企業が失敗したのでしょうか?研究の方向性をマーケティングの段階で間違えたからではないでしょうか?
よって、もし
企業がマーケティングを苦手としているなら、それはその企業がよい株でない証拠です。マーケティングが苦手なハイテク企業は、技術にも長けていない可能性があります。スーパー企業とは、マーケティングに優れている企業を指すのです
(完璧とは限らないにせよ)。
まとめ
フィッシャーの法則を用いて
株式市場でタイミングを掴むための手順
を簡単にすると、以下の2点となります。
(1) ある会社が(十分に)低いPSRで取引されているとき、その株式を購入する。
(2)(十分に)低いPSRで取引されている会社が見つからない場合、購入を見送る。
これが株式市場でタイミングを掴む方法です。これにより、私が知っている情報をあなたも把握することになります。
特に注意すべきは、PSRが示すのは「どの株式を購入すべきか」ではなく、「どの株式を避けるべきか」であるということです。
・高PSRの株式は、どのようなものであっても購入してはいけません
・低PSRの株式からチャンスを探す
まずはスーパー企業を決定するための事業的な側面を評価しましょう。
スーパー株式とは、本当に優れた事業のファンダメンタルズを持つ企業の株式を適切な価格で購入することです。
スーパー株式は、適切な価格で購入されたスーパー企業の株式を指します。平凡な企業の株式を購入して、後に株価が二倍、三倍となる可能性もあります。しかし、その企業が真に素晴らしい企業でなければ、スーパー株式と呼ぶだけの大幅な値上がり(株価が10倍以上)を期待するのは非常に困難です。
スーパー企業とは、自己資金により平均成長率を大きく超える成長を実現し、他社とは一線を画す企業を指します。物価上昇率に応じてスーパー企業の成長率も変化する必要がありますが、それは自社で生み出される成長力によって達成されるべきです。
スーパー企業は、少なくとも物価上昇を調整したあとで、実質的に年間15%以上の成長を達成しなければなりません。
相場の上下にかかわらず、相場全体が下がっても価格が上昇するスーパー銘柄を見つけることが大切です。