「国を越えて気持ちは伝わる」 日本・ラオス初合作映画で

関西ウォーカー

7月15日(土)映画「ラオス 竜の奇跡」の舞台挨拶が大阪・九条にある映画館シネ・ヌーヴォで行われた。主演の井上雄太さん、そして本作のプロデューサーの森卓さんが登壇した。

この作品は、日本とラオスの初の合作映画。物語は現代の都市開発が進められるラオスに住む少女「ノイ」が偶然森の中で、1960年の内戦中のラオスに迷い込む。そこでダム建設の調査の為、日本からラオスに渡っていた川井と出会い、2人は近隣の村人に「橋がかかるまで村を出ることはできない」と言われ、渋々村人との共同生活を始める。温かで暢気な村人たちと過ごすうちに次第に2人も感化されていくが、戦火は村まで近づいてきて平和な日々が失われていくというもの。主人公の川井役には井上雄太さん、ヒロインのノイ役にはモデル出身のティダー・シティサイさん、監督は2011年阿部寛主演の「天国のエール」でデビューした熊沢誓人さん。また、プロデューサーの森卓さんは仕出し屋、調理師を経てアジアを8カ月旅行した後に2001年よりラオスに移住。現地で通訳、広告代理店、制作会社を経験して2004年にラオス初の日本語フリーペーパー「テイスト・オブ・ラオス」を創刊された人物。

上映後、主演の井上雄太さんと森卓さんが登壇。井上さんは今作で映画初主演ながらも実際に1960年代にラオスに渡っていた日本人技師をモデルにした青年を熱演。劇中ではほとんどラオス語の台詞しかないため「今、僕が日本語喋っていることのほうが逆に皆さん驚かれているのでは」と話す井上さん。そんな井上さんと初めて会った時のことを森さんが振り返ると「映画のテーマが『人との絆』で、イケメンでもキザな人はふさわしくないと思っていた。そんな中、実際に井上君と会ってみると癒される、何か人を引き寄せる力を感じて、これは彼にしか出せないものだと思った」と絶賛。主人公がラオスの子供たちに日本のことを色々教えるシーンに触れ、井上さんは「子供たちが素直で僕がわからない言葉について聞くと、みんな集まって教えてくれる。子供だけでなくラオスの人々は温かくて、撮影していないところでも『ご飯を食べたか』とか色々気にかけてくれることが多くて1人になることがなかった」と振り返った。

完成した映画を改めて見てみると井上さんは「初めて脚本を読んだときに感じた『人の温かさは、国を越えて伝わる』という印象がそのまま映画にも感じられた。映画を見てくれた方にはその温かさを感じて、何か明日につなげるものを見つけてくれたら」と呼びかけた。また、森さんは「映画の原題は『サーイ・ナームライ』と言って『川の流れ』っていう意味です。これがこの作品のもう1つのテーマになっています。15年ぶりに日本に帰ってみると、どんどん複雑な社会になっているように感じた。そんなとき、ふと立ち止まって川の流れのように自分のペースで生きるということを見つめ直すきっかけになれば」と語った。

 また井上さんと森さんにお話を伺ってみたところ、森さんは「向こうの国で試写会と上映会をしたとき、試写会に来ていた記者の方が目を潤ませていたことがあったりとても絶賛していただいた。そんな中、うれしいことにも川井に感情移入してくれる方が多かった」と振り返る。その話を聞いて井上さんは素直に喜びを見せて「ラオスの方に日本人の目を通して、日本の人にもラオスの方の目を通して見る、物語はそういう風に違った視点から見てみること素晴らしいものだと思う。僕の役をそういう風に見ていただけたっていうことは本当にうれしい」と語った。

【関西ウォーカー編集部/ライター桜井賢太郎】

桜井賢太郎

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