トップバッター・ナイツの高得点に始まり、笑い飯の漫才“鳥人”ネタに島田紳助が出した史上初の“100点”、そしてダークホースとも言えるパンクブーブーの初優勝など、終始ドラマチックな盛り上がりを見せた「オートバックス M-1グランプリ2009」会場。それとは別に、準決勝で敗れた59組の芸人が決勝のたった1枠をかけて争う“敗者復活戦”でもし烈な戦いがあった。
暖かなスタジオで戦う決勝組とは異なり、敗者復活の地は極寒の大井競馬場。オンエアで見れば分かる通り、昨年の覇者NON STYLEが見事に勝ち上がったが、テレビでは見ることのできないドラマが大井では起こっていた。
12月20日、午後12時から行われた敗者復活戦に登場した59組は、M-1常連組と呼ばれる千鳥やキングコング、ダイアンのほか、近年頭角を現し始めた我が家、ジャルジャル、Wエンジンなど、まさに群雄割拠の様相。ここ2年ほど天気に恵まれなかった敗者復活戦だが、今年は見事に晴れ、青空の下での漫才となった。
前半ブロックで、大きく笑いをとったのはロシアンモンキー。桃太郎を題材にしたネタで、拍手を巻き起こした。続くジャルジャルは独特の視点を生かしたヤンキーのネタ、千鳥は“蒸しあなご”を繰り返す千鳥らしい中毒性のある漫才で、会場を大きく盛り上げた。
M-1常連組のPOISON GIRL BANDは、前年とイメージを大きく変えてきたコンビの1つ。発想力豊かなモノマネのネタを、従来の独特のテンポはそのままに、テンション高くやりきった。会場では、楽しそうにボケまくった阿部にハマる人が続出、涙を流して笑う人の姿も。MCのはりけ〜んずに「阿部、ウケてたで!」と言われ、存在感を示した。
一方で、大事な敗者復活で大失態をおかしたのはハイキングウォーキングのQちゃん。ニコニコしたままネタを飛ばし、相方から「お前の番だよ!」とツッコまれるひと幕も。
磁石や流れ星らが安定感のある漫才で笑いをとったほか、栃木愛を全面に押し出した漫才で昨年の決勝に進出したU字工事は、やや毒のある栃木漫才を披露し、昨年との違いを見せた。オリエンタルラジオは合コンのネタ、ラストイヤーのキングコングは肝だめしのネタで勝負をかけた。
5000人が入った会場では、場所によって笑いの感じ方が異なったようだが、記者の席からは特に飛びぬけて大爆笑をさらったコンビはいないように思う。個人的には、JAYWALKと安室奈美恵歌の歌詞をリンクさせた歌ネタを披露した囲碁将棋が素晴らしかった。緊張の続く中、我が家がトリを務める形で、59組のネタは終了した。
気温がぐんぐんと下がり、すっかり日が暮れた大井で、スーツの上にダウンを羽織った出演者が全員集合、結果が発表された。はりけ〜んずや藤井隆らが見守る中、M-1決勝戦の司会を務めた今田耕司の声が「NON STYLE!」と響いた時、歓声と拍手、そしてたくさんの手が、昨年王者をステージの前に押し出した。
決勝出場経験があり、さらに結成10年目で今年が最後の挑戦だったキングコング西野は、ブログで「自分のエントリーナンバーが呼ばれなかった瞬間、お客さんや、スタッフさんや、一緒に番組をやっているメンバーの顔が次々に浮かんできてこみ上げるものがあった」と、この時の心境を吐露。また、うつむき加減で会場を後にしたPOISON GIRL BANDの吉田も、ブログで「悔しいです!」と、ストレートにM-1にかけた思いを語っている。
ラストイヤーを迎え、M-1を去っていくコンビがいるのと同様に、新しい力を持つコンビたちも登場している。初の決勝戦で独自のスタイルを見せつけたハライチのほか、敗者復活戦にもゆったり感や囲碁将棋、銀シャリなどの若手の実力派が続々。来年、決勝に残るのは誰か。M-1グランプリ2010に向けた戦いは、始まったばかりだ。【東京ウォーカー】