メイクスポンジやブラシなど、メイクアップツールを展開するブランド「ロージーローザ」。ほとんどの商品が1500円以下と手に取りやすい価格ながら、口コミサイトでは「使いやすい」「想像以上にきれいに仕上がる」「本当にこの価格でいいんですか?」といった高評価が並ぶ。同ブランドを運営する株式会社シャンティでロージーローザを担当する企画課長代理の山下未花子さんに、このほど発売された「マルチユースブラシ」をはじめとする商品の企画や、価格のこだわりについて話を聞いた。
プロも初心者も使いやすい商品設計
――2023年8月に発売された新商品「マルチユースブラシ」について教えてください。
【山下未花子】メイク用のブラシで、用途別に「フェイス」と「ポイント」の2種類があります。「フェイス」はフェイスパウダーやチーク、シェーディング、ハイライトに、「ポイント」はアイシャドウや涙袋のハイライト、リップなど、それぞれさまざまな使い方ができるので「マルチユース」と名づけました。もうひとつ、両者に共通しているのが「持ちやすい・描きやすい・使いやすい」の3拍子です。
――「持ちやすい・描きやすい・使いやすい」を実現するためにどのような工夫をされているのでしょうか?
【山下未花子】メイク初心者の方にも、プロの方にも使いやすいブラシを作るために、今回はロングハンドルにしました。ただ、柄が長いと持つ位置によって軸がぶれてしまうので、力のかけ具合が難しかったりするんです。そこで、人差し指を置く位置が自然に定まる形状のハンドルを採用することで、軸がぶれず自然と安定する「誰もが使いやすい」現在の形になりました。
【山下未花子】デザイン面では、指紋などの汚れが目立たないマットな質感にしました。また、最近ではメイクをする男性も増えているので、年齢性別を問わず手に取っていただけるよう少し高級感のあるデザインを意識。価格面では、これからメイクを始める方にお試しいただきやすいように、という点にこだわって調整を重ねました。
――企画・開発するうえで苦労した点は?
【山下未花子】ブラシの穂先の形状を決定するまで、2品とも苦労の連続でした。でも、製造工場と細部にいたるまで綿密にやり取りを重ね、かなりの時間をかけて納得のいく形状を完成させました。「フェイス」は頬など顔の凹凸にきちんとフィットするよう“穂先の前後で長さが違う形”に、「ポイント」は涙袋の幅や、目のキワの締め色、リップラインが絶妙に描きやすい“先細”になるよう、こだわり抜いています。
「使ってみよう」と思える価格設定でメイクの楽しさ伝える
――品質にこだわり、時間をかけて開発した商品を、手頃な価格で販売する理由は何でしょうか?
【山下未花子】まずは手に取っていただかないことには、使ったときの驚きや使い心地、ワクワク感をお伝えすることはできません。「フェイス」は1100円(税込)、「ポイント」は638円(税込)。「試しに使ってみようかな」と思える価格設定は、ロージーローザのほかの商品でも心がけています。
――こうした価格を実現するために、どのようなことを行っているのでしょうか?
【山下未花子】たとえば過剰な包装などを減らし、パッケージをシンプルにしています。印刷色は基本的に赤、黒、白の3色。色を増やしたり、キラキラさせたり、シールを貼ったりすると、コストが増えてしまいます。パッケージのデザインは、お客様にとってはそれほど重要ではないと考え、なるべくシンプルにして商品自体がより目立つように工夫しています。
――ここ数年で売り上げの動向に変化などがあれば教えてください。
【山下未花子】コロナ禍でもアイブロウブラシやアイシャドウブラシ、コンシーラーブラシなどは人気がありました。反対に、ベースメイクに関するアイテムは伸び悩むことも。コロナ明けの今はありがたいことに、SNSなどでツールに興味を持ってくださる方が多くいらっしゃって、うれしく思っています。
――近年はSNSなどでメイク動画がたくさん出ているので、メイクツールの使い方がより広まっていますよね。
【山下未花子】そうですね。水を含ませて使うタイプのスポンジは、少し前までは難しい、面倒だというイメージがあり、使うのに抵抗がある方も多かったように思います。でも今は「使って当たり前」になりつつあると感じています。
――とはいえ、メイクツールを使うのは「難しい」というイメージもあるかと思います。
【山下未花子】メイクが苦手な人ほど、ツールに頼ってみていただきたいです。ツールを使うことで、メイクの厚塗り感がなくなったり、眉の形が決まったり、より化粧崩れしにくくなったり。同じ化粧品でも、いろいろな表情を作り出すことができます。あとは、ファンデーションが合わないという方も、一度ツールを変えて試していただけたら。仕上がりの満足度が変わります。まずはぜひ手に取っていただいて、仕上がったときの驚きや、メイクの楽しさを感じてほしいです。
企画のポイントは「自分が商品を楽しめるかどうか」
――高反射によって本来の肌色を映す「リアルックミラー」や、水を含ませても、そのままでも使える「3Dスポンジ<WET&DRY>」など便利な商品が多いですね。アイデアはどのように生まれているのでしょうか?
【山下未花子】私自身、面倒くさがりな部分があるので「忙しい朝に楽にメイクをするにはどうしたらいいのだろう」といつも考えています。「3Dスポンジ
【山下未花子】そんなふうにお客様の目線に立って、まずは自分がその商品を楽しめるかどうか、試作品を使ってみたときに驚くかどうかを大切にしています。私がそう感じないと、お客様にメイクを楽しんで、ハッピーな気持ちになっていただくことはできないと思っています。
――ほかにも大切にしていることはありますか?
【山下未花子】商品名がわかりやすいかどうかは意識しています。たとえば、使い方がいろいろあるから「マルチユースブラシ」、どんなファンデーションでも対応できるから「マルチファンデブラシ」などです。ロージーローザの企画担当は私ひとりなので、周囲にもよく相談に乗ってもらっています。「3Dスポンジ
――ひとりで商品を企画するのは大変では?
【山下未花子】私は大変だとは思っていなくて、商品を考えて、商品化して、実際に店頭に並んで、みなさまのお手元に届いて、何年か経ってブラッシュアップしたり……。商品のすべてに関わることができて、非常にやりがいを感じています。もちろんデザインやキャッチコピーなど悩むことはありますが、社内には品質や表記を見てくれる品質保証部門、意匠や商標をチェックしてくれる知財部門、PRの担当者など、サポートしてくれる人がたくさんいます。自分が考えたものがお客様のメイクに役立っている、毎日のメイクに寄り添えているのが、すごくうれしいですね。
――今年でブランド誕生から25周年。30周年に向けての目標を教えてください。
【山下未花子】ロージーローザというブランドを、世代や性別を問わずに知っていただき、ぜひ多くの方に使っていただきたいと思っています。目指すはアジアNo.1メイクツールブランド。それを目標に商品企画を続けて、毎日のメイクをサポートするアイテムで、よりみなさまに楽しみや驚きを伝えられるように頑張りたいです。
この記事のひときわ
#やくにたつ
・価格も使い心地もユーザーの目線に立つ
・商品を最初に使う企画者自身の気持ちにも目を向ける
・「面倒くさい」「難しい」は企画のタネ