2023年9月26日、元アメリカ大統領夫人ミシェル・オバマの最新刊『心に、光を。不確実な時代を生き抜く』が発売された。既に世界20カ国で出版され、北米では275万部に達するベストセラー。世界中の人々を惹きつけてやまないミシェルの魅力とは。
「いまだかつてこんなにフレンドリーなファーストレディーはいなかった。みんなの姉貴、頼れる姉貴、最高の姉貴、である。」
村井理子(翻訳家・エッセイスト「フォーサイト」より)
「読んでいると、彼女が私たちと同じテーブルに座っているような気分になる。人間なら誰しも直面するさまざまな問題をどう乗り越えるか、一緒に考えてくれているようだ。」
西村宏堂(アーティスト/僧侶)
ミシェル・オバマ。弁護士にして元米国ファーストレディ。キャリアや家族にも恵まれ、時にはファッションアイコンとしても注目を浴び、メディアで報じられるたび、誰もが「完璧な女性」という印象を彼女に抱いてきました。しかし、最新刊『心に、光を。不確実な時代を生き抜く』に綴られる彼女の生い立ち、逆境や困難に、その印象は意外にも覆されてしまいます。
「58年、わたしは不安を抱えて生きてきた。場ちがいだ、ここにいるべきじゃない、誰もわたしを気にとめていない。まわりから浮いている」
黒人かつ女性という二重のマイノリティ性を背負い、労働階級で育ったミシェルは、物心ついた頃から「周りとちがう」「浮いている」と感じ、子育てや友人作りの壁にぶつかり、明日の仕事がうまくいくのかと不安に襲われる、私たちと変わらない一人の女性でした。
「自分にやさしく一日をはじめる」
ミシェルがいかに、不安や孤独と向き合い、前へ進む光を見つけてきたのか。長年の試行錯誤から導き出された答え、それは私たちが明日からでもはじめられるヒントに満ちていました。例えば―
朝起きた時、洗面台の鏡に向かって「ヘーイ、相棒!」と声に出して自分に挨拶すること
この言葉自体は大それたものではなく、愉快な挨拶にすぎません。しかし、あたたかい調子で口にすることで、心を落ち着かせ、思いやりをもって自分を承認し、やさしく一日をはじめる効き目があると、ミシェルは説きます。新しい一日は、厳しい自己評価や自己嫌悪からではなく、フレンドリーなメッセージで自分を安心させ、ありのままの自分を認めることからはじめる。それは前向きに生きていく習慣となります。
小さなことには力がある
無力感、絶望感に襲われたとき、「小さなものをあえてそばに置くことで、大きなことへ対処しやすくなることがある」とミシェルは言います。パンデミックなど自分では制御できないほどの大きなことが起き、自分には何もできないと無力感で心がかき乱されたとき、シンプルなこと、自分でやり遂げられることを手元に置き、小さな達成感を重ねることが、少しずつ安心を取り戻していくことに役立ちます。コロナ禍で世界中が不安と恐怖に包まれたとき、ミシェルにとっての「小さなもの」とは、ソファに座り、自らの指を動かし編み物をすることでした。
『心に、光を。不確実な時代を生き抜く』に収録されたエピソードの数々は、ミシェルも、困難な世界に生き、不安や孤独感の中で抗う私たちの一人であることを気づかせてくれます。そして、「わたしはわたしのままで大丈夫」ということを教えてくれます。
自分らしく生きるために、いかにして向き合い、克服してきたのか、包み隠さず綴られたミシェルのメッセージは、私たちの心にやさしく響きます。