クラス替えのあと、友達を作りたくて勇気を出してみたら…。“昭和の子どもあるある”を描くノスタルジック漫画

漫画家・仲曽良ハミさんが描くノスタルジック漫画「しなのんちのいくる」。その単行本の1巻が2022年6月に、続く2巻が2023年6月に発売。さらに12月26日には3巻が発売し、話題を呼んでいる。

物語の時代設定としては昭和後期から平成初期あたり。おバカだけど憎めないヤンチャ少年「いくる」と、その姉で怒ると怖いけど実は弟思いな「しなの」。この姉弟を中心に、「あの頃」の笑いにあふれる日々を描いた漫画だ。

※発売中の書籍の中から一部を抜粋・編集し、仲曽良さんのインタビューとともにお届けする。

本当の友達ができました

これまでシュウをはじめ、いくるの友達としてヤンチャな子が多く登場していたなか、新キャラクターの「アキラ君」が登場した作品。いくるたちとはまた違った、繊細で心優しい性格の人物だ。「自分もアキラ君のような側面があった」と自身の子ども時代を振り返った仲曽良さん。「いくるたちとのギャップで化学反応を楽しめるのではないか」と考えたそう。

「いくるがすごくかっこいいお話なんですけど、やっぱり彼は何も考えてないんですよ(笑)。自分が思ったことを言っただけなんですよね。アキラ君の取り越し苦労というか。そういう二人の違った思考が描けたらと思いました」

ちなみに、アキラ君が手に入れたゲームソフトは、当時一世を風靡した「スーパーマリオブラザーズ」が元となっている。当時高級品だったゲームソフトは年に2、3回ほどしか買ってもらえなかったそう。「その貴重な1回を、アキラ君は友達を呼ぶために使ったんですよね」と仲曽良さん。同世代の読者からはそういった時代感覚に共感を覚えたという声もあったそうだ。

好きで見学してると思うなよ

「この話は、正直ちょっとビビりながら描いていました」と真っ先に語ってくれた仲曽良さん。性に関するテーマは少々触れづらいところがあったようだが、表現を試行錯誤し、読者が不快にならないように気を付けたという。

「保健体育の授業は、男子であるいくるたちには謎が多かったんですね。当時は男女別々で授業を受けていて、女子がどんなことを勉強しているのか理解できないんです。それで、女子が時々体育を休んでいる理由をいくるはわかっていなくて、自分の尺度でしか話せない。そういうことが実際にあったんですよ。ただ、いくるは最後にフウコちゃんにボールぶつけられて制裁を受けるんで、スカッとしてくれたらいいなと(笑)」

さらに、仲曽良さんは「アキラ君とマッチするキャラクターがほしいなと思って、フウコちゃんに登場してもらいました。この話で“レギュラーキャラクターがそろった”という感じがあり、それぞれ個性を生かしたバランスのいいクラスメイトを描けたんじゃないかと思います」と付け足してくれた。

「あるある！」と笑えて、素直な子どもたちの言葉や行動に時折ハッとさせられることもある「しなのんちのいくる」。次回もお楽しみに！

取材・文＝織田繭(にげば企画)