本日は「ヤングケアラー」を題材にした水谷緑さん(@mizutanimidori)の『私だけ年を取っているみたいだ。ヤングケアラーの再生日記』を紹介。本作は、実際にヤングケアラーだった方々の取材に基づき、一人の少女が家族を守るために心を閉ざし、再生するまでの物語を描いている。
8歳で家事全般、母の暴挙と父の無関心…「心を殺した」娘の苦悩
主人公の音田ゆいは、8歳の小学3年生。統合失調症の母親が物心ついたときから、洗濯、買い物、料理、掃除など、家族の世話をすべて担っていた。母親の体調が優れないときは、ゆいにティッシュ箱を投げつけるなどの暴挙に出た。父親は弟の面倒ばかり見て、母親の世話はゆいに任せきりだった。
家庭のすべてを抱えるゆいは、年相応の楽しさを知らなかった。学校で困っていることはないと装い、誰にも相談しなかった。努力しても母親はゆいの姿を見てさらに追い詰められ、「あんた本当の子どもじゃないだろう」と言うこともあった。
ゆいは成長するにつれ、自分の心を殺して生きることを選んだ。母親が暴れずにいてくれるならと、心を無にして生きることが当たり前に。誰にも本当の事を言えず、自分が我慢すればいいと心を閉ざした結果、後遺症として鬱を発症する。
「困っていることに気づかない」ヤングケアラーへのメッセージ
まだ認知度が低いヤングケアラーだが、実際は小学生の15人に1人の割合で存在する。作者の水谷さんは「困っていることに気づかないことが大半だと思うが、若い人でしたら、普段使っているSNSで自分と似たような境遇の人や、支援団体を見つけるといいと思う。力になりたいと思っている人はたくさんいる」と語る。
本作は、主人公「ゆい」が学生生活を経て、就職、結婚、子育てを経験するなかで、心を殺した自分を再生するまでの物語だ。漫画は10代の当事者でも読めるようすべてルビ(ふりがな)つきで、ヤングケアラーの支援団体なども記載されている。
取材協力:水谷緑(@mizutanimidori)
※記事内の価格は特に記載がない場合は税込み表示です。製品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります。