倒産と破産の違いってなに?決算書や会計のポイントが、眺めるだけで頭に入ると大反響の〝超そぎ落とし〟図解

東京ウォーカー(全国版)

決算書や会計の知識を図解で学べる、なぎ( @cpa_nagi )さんのアカウントが「わかりやすい」と反響を呼んでいる。その人気の秘密を探ってみた。

コカ・コーラはどっち?


例えば、財務三表のひとつ、賃借対照表(B/S)。2つのB/Sのうち、コカ・コーラはどちらか?という図がそれだ。Aは資産のうち固定資産の比率が高め(流動資産が低め)、Bは逆に固定資産の比率が低め(流動資産が高め)になっている。ちなみにもう片方は伊藤園。

「ちょっと難しいんですが、街中でどっちの自動販売機の方が多そうか?で考えるといいかもしれません」となぎさん。答えは、Aになる。

このような、直感的に理解しやすい図解が特徴だ。

漢字や数字を減らし、直感的に理解しやすく

図解のテーマはさまざまだ。例えば、損益計算書(P/L)の仕組みを示した図は、売上を誰に配分するのかという視点で見ると覚えやすくなるという一枚。

損益計算書の意味


P/Lの仕組みは、まず売上から原価を引くと粗利、粗利から販管費を引くと営業利益…となるが、専門用語が並んでちょっとややこしい。それを「誰に配分するか」で考えてみると、売上から「仕入れ先の取り分」を引くと粗利になり、粗利から「社員や取引先の取り分」を引くと営業利益になる…という風になり、イメージが湧きやすくなる。

「損益計算書ってそれぞれいろんな利益がありますが、それぞれが誰にとって大事なんだっけ?と考えることは少ないと思います。稼いだお金を誰に配っているかを考えるとそれが見えてくることをわかりやすく伝えられたかなと思っています」となぎさん。最後に、「残る純利益は誰の取り分?」という問いが出されるが、その回答は「株主」となる。

ユニークなのは、何よりもわかりやすくするために、情報をうまくそぎ落としている点。専門用語や数字が苦手でも、直感的にポイントがつかみやすくなっている。「(フォロワーから)『今まで〝なんとなく〟の理解だったものが、この図解ですべてつながった。今までの勉強はなんだったのか?』と言ってもらえたときは、読みながら自然と笑顔になってしまいました」

二択が多いことも興味を引く理由の1つだろう。「簿記でいう取引に当たるのは『本が盗まれた』『本を発注した』どちら?」「金利の儲けの割合が多い銀行と少ない銀行、セブン銀行はどちら?」などの答えを考えてみることで、ざっくりと理解できるようになっている。

銀行の稼ぎ方の違い

簿記での「取引」とはなにか?


倒産と破産の違いについても、破産が倒産の中の一種であることをツリー状の図解で示しており、一目瞭然だ。

倒産と破産


会計の勉強を途中で離脱してしまわないように

なぎさんは大学在学中、20歳で公認会計士試験に合格し、その後大手監査法人へ就職。現在はベンチャー企業の上場準備や会計周りのコンサルティングを行う事業に携わっている。

投稿を始めたきっかけは、簿記や会計知識を学ぶにあたって、専門用語が多かったり、漢字が多かったりで、途中で離脱してしまう人が多いのを見てきたためという。「『誰もが知っている会社』で『図解』にすれば、親近感も湧き、身近に捉えやすいかと思いました。僕は公認会計士の中ではかなり〝レベルの低い方〟だと思っています。だからこそ、会計に触れたことない方や苦手意識がある方と同じ目線で伝えることができると思いました」

そのための工夫を欠かさない。「例えばカフェでコーヒーを買うような身近なことを会計に例えてみたり、決算書を人のカラダで表現してみたり、『何かうまい言い換えができないかな?』と常に考えています」。それでも、どうしてもこの言葉は入れないと説明が成り立たない…というときはかなり悩むそうだ。

BSとPLの関係性も分かりやすく


今後については、「図解で表すことを前提に、例えば、その人の人生であったり、普段の何気ない行動であったり、決算に関係のないニュースを決算書で表してみたいと思っています。また、例えば日本の縄文時代~現代まで、それぞれの時代の活動を会計に表してみるとどうなるか?などもやってみたいです」。さらに発信力を高めながら、簿記や会計を使う人のキャリアアップに役立つ事業や、普段の仕事や株をやるために役立つコンテンツ発信も行いたいとか。これからの活動についても楽しみだ。

取材・文=折笠隆

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