お笑いコンビ・バッドボーイズのボケ担当でおなじみの清人さん。コロナ禍、そしてお父様の大病をきっかけに、地元・福岡の海沿いの町で過ごした幼少期のこと、家族のことをテーマにした漫画「おばあちゃんこ」を描き始めた。かなり特殊な家庭環境にあり、さらに身体に障碍を抱えながら、幼い清人さんを育てる哲子ばあちゃんがこの物語の主人公。
連載第1回の今回は、幼少時の清人さん=きよっぴと哲子ばあちゃんの、よくある(?)日常の一コマが描かれている。作者であるおおみぞきよとさんにこの漫画を描き始めたきっかけや、当時の家族構成などを聞いてみた。
目の見えないばあちゃんが両親代わり
――きよとさんの当時の家族についてを教えてもらえますか?
物心ついたときに母親はもういなかったんですよ。最初は亡くなったと聞かされていたんですが、後になって僕が8カ月くらいのときに蒸発したと知りました。で、ばあちゃんの哲子が母親代わりで、そこにおじちゃん3人、ばあちゃんの息子たちですね、長男のマサおっちゃん、次男のかーぼ、三男ののり兄ちゃん、それに僕の5人で生活していたんです。
――ちなみにお父さんは?
複雑なんです(笑)。小学校3、4年の頃までは、父親のことも聞かされてませんでした。
――それまでは、おばあちゃんは父親代わりでもあったんですね。
そうなんですよね。僕のことを躾けたり叱ったりする存在もばあちゃんだけだったんです。ずっとばあちゃんと一緒にいたから、めっちゃムカつくことが多かったというのもあったんでしょうけど。だから本当に両親代わりですよね。
――そんなおばあちゃんを中心とした家族の物語を、漫画として描こう、作品として残そうと考えた理由はなんですか。
ばあちゃんが亡くなって、マサおっちゃんも亡くなって、で、のり兄ちゃんはいま現在絶賛行方不明中で(笑)。かーぼはコロナ期間中に体を患って老人の施設に入って記憶がおぼろげになっていくなか、家族のことを語れるのはもう僕しかいなくなってしまったんですよね。そんな時、ばあちゃんや家族たちの「生きてたよ」というのを残したいという思いが強くなったんです。名もなく貧しかった大溝家の代表として彼らと生きた家族の物語を描きたいと考えたんです。
――そんな第1話ですが、家に友達が遊びに来た時のお話です。家がちょっとオンボロだったり複雑な家庭環境だったり、友達を招くのはちょっと躊躇する部分もありそうですよね。
めちゃくちゃ恥ずかしかったです。だから家が近所で交流があって、僕の家の複雑な構図を知っている友達だけ。
――おばあちゃんは、人が来るのは嫌だな、って感じだったんですか。
そんなことはないんですけど、常に人目は気にしてました。口に何かついていないかとか、ちゃんとした自分でいたいというのは横に居て感じました。不自由を抱えながらも明るくあっけらかんと。弱っている時も時々ありましたけど、気丈に振舞っていました。
――さっそく友達のタカオくんが被害に遭いましたが、おばあちゃんは気は短い人だったんですか?
僕が悪い部分もあるんでしょうけど、すぐ怒る(笑)。100怒ってるのかどうかまでは分からなかったですけど、まあ怒ってました。
――よき母であろう、よきおばあちゃんであろう、という感じではなかったんですね。
もっとむき出しな人だったんですよ。だから目が見えないというのを忘れることも多かったです。周りの健康なおばあちゃんたちとほとんど変わらないから、僕もむきになって応戦したりするんですが、すると「目が不自由なおばあちゃんにそんなかわいそうなことを……」って近所のおじちゃんおばちゃんに言われて。僕からすると、「いや普通のばあちゃんと変わらんし」って(笑)。大変な生活でしたけど、悲壮さを出さない人でしたね、ばあちゃんは。
さっそくやらかした哲子ばあちゃんだけど、普通の家族じゃないからこそ、身を寄せ合い支え合う温かさやその大切さが、今後描かれていく……はず!?きよっぴと哲子ばあちゃんのドタバタな日常はもちろん、今後、複雑怪奇な一家の謎が解き明かされていくのも楽しみだ。