鍵の無人受け渡しサービス「KEY STATION」が設置駅を拡大。交渉の苦労を担当者に聞いた

東京ウォーカー(全国版)

いきなりだが、想像してほしい。あなたは高田馬場駅で賃貸物件を探している。インターネットで条件のいい物件を見つけたので不動産屋に問い合わせたところ、この不動産屋は新宿にあるという。不動産屋の担当が同行することなく内見できるとのことだが、鍵の受け渡しのために不動産屋まで出向かなければならない。

営業時間内に不動産屋へ立ち寄れそうな日がしばらくなく、それでもなんとか担当者と受け渡しの日程を擦り合わせ、当日はわざわざ新宿駅で降りて不動産屋まで歩き、担当者から鍵を受け取ったら再び新宿駅まで歩いて電車に乗り、高田馬場に着いたらようやく内見のスタートだ。

め……めんどくさ!!!物件の最寄り駅で鍵を受け取れたらスムーズなのに!

こんなシーンにぴったりなのが、Keeyls株式会社が運営する鍵の無人受け渡しサービス「KEY STATION」だ。2017年にサービスを開始して以来、年々利用数が増え、現在までに累計利用回数が100万回を超えたという。

このほど、東京メトロ3路線5駅(丸ノ内線池袋駅、東西線高田馬場駅・日本橋駅・茅場町駅、南北線溜池山王駅)の構内に、新たな「KEY STATION」が設置された。これにより、全国での設置駅総数は約40に達した。

「KEY STATION」は、鍵を預ける側、預かる側の双方が、無駄な時間と労力を解消できるサービス


「KEY STATION」とは一体どんなサービスなのか。

先に挙げた例で説明しよう。まず不動産屋が「KEY STATION」のアカウント登録を行う。そのうえで、物件の最寄り駅である高田馬場駅構内の「KEY STATION」をオンライン上で選択し、スロットの割り当てとパスワードを発行。そして現地へ行き、物件の鍵をスロットに取り付ける。

内見したい側は、高田馬場駅の「KEY STATION」にパスワードを入力し、預けられた鍵を受け取るだけ。使い終わったらもとのスロットに戻せばよい。不動産屋の営業時間に振り回されることなく、物件最寄り駅で鍵を受け取り最短距離の移動のみで内見できる。

一方の不動産屋側には鍵の取り付け・回収の手間がかかってしまうが、営業時間外の内見希望を断らずに済むうえ、鍵の受け渡しのために店舗に待機する必要もなくなり、機会損失や時間の無駄を防げる。つまり、双方がハッピーなシステムなのである。

鍵の持ち主は、預けた鍵がいつ誰に持ち出され、そして戻されたのか、利用状況を逐一確認できる。大事な鍵を安心して預けられるサービスだ。

設置駅が増えたことで、どんな人がメリットを享受できるのか、マーケティングチームの加藤成さんに詳しいお話をうかがった。

【写真】キーボックスを介して鍵の受け渡しを行う。こちらはスロット型


「不動産関連で言えば、例に挙げたような無人内覧のケースだけでなく、物件の管理会社と仲介会社間の鍵の受け渡しが効率化できます。また、内装などの工事業者との鍵の受け渡しに使うことで、出入りの履歴を残せます。ほかには、家事代行、介護サービス、ペットシッターといった、顧客が不在のご自宅にも出入りするような業種にも有用です。特定のスタッフが鍵を持ち歩きますと、不測の事態が起きた場合に信頼問題に発展するリスクがあるので、使うときだけ鍵を持ち出せるのは双方の安心につながります。また、飲食店やエステサロンといった、スタッフが複数名いる店舗の施錠にもご利用いただいています。急なシフト変更やお休みにも対応できると好評です」

今回新たに設置された5駅のほか、丸の内線東京駅や日比谷線の恵比寿駅と六本木駅、南北線駒込駅など、JRや私鉄の乗り換えや利用者の多い駅にも「KEY STATION」は設置されている。設置駅はどのように選ばれているのだろうか。

「企業様や個人の方々から『この駅に設置してほしい』と強い要望を受け、交渉を重ねて実現にいたっています。とはいえ、駅への設置は容易ではありません。まず、駅は電源が限られていますので、電源確保の問題があります。そのうえで、地下鉄の場合は地上が国道、県道、市道など、管理者により条件が異なり、さらにニーズはあるのか、公共性は適正かといった厳正な審査を受けます」

公共性という観点で言えば、自治体が「KEY STATION」を導入した事例もある。沖縄県那覇市の小学校では、学校施設を地域住民に貸し出す際、教職員が鍵の受け渡し業務を行っていた。「KEY STATION」を導入することで、教職員の時間外勤務を回避し、地域の利用者の利便性も向上した。

「予約システムと連携した社用車の一元管理、ホテルのチェックインシステムを実装した無人チェックイン機など、さまざまな施設に提供しています。あらゆる場面で発生する鍵の受け渡しを、無人かつ安全に解決することは、時間や場所に縛られない働き方の実現につながるはず」

「現在は、企業や自治体だけでなく、個人での利用も増えている状況です。より利便性を高めるべく設置希望を受け付けておりますので、『ここに欲しい!』という声をどんどんお寄せください……!場所が増えるほど世の中のためになるサービスですので、駅に限らず人の集まる場所に設置を進めてまいります」

鍵の出し入れ履歴を、リアルタイムで管理できる


単発利用は400円(税別)から、月額利用は3000円(税別)から。個人単位でも利用しやすい価格帯といえそう。たかが鍵、されど鍵、こうしたサービスがあることを知っているか否かで、時間の使い方も変わる。設置場所のさらなる拡大に期待が高まる。

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