お笑いコンビ・バッドボーイズのボケ担当でおなじみの清人さん。地元・福岡の海沿いの町で過ごした幼少期のこと、家族のことをテーマにした漫画「おばあちゃんこ」を描き始めた。かなり特殊な家庭環境にあって、さらに身体に障碍を抱えながら、幼い清人さんを育てる哲子ばあちゃんがこの物語の主人公。
連載第9回の今回は、遊びたい盛りのきよっぴと、無邪気にそれを妨げてしまうおばあちゃんの攻防の話。結局遊びに行けないきよっぴの無念と互いを思い合う二人の心の裏側を作者のおおみぞきよとさんに振り返ってもらいました。
頭に来ても口に出さず、態度に出さず、あきらめるしかない
――きよとさんが小学3年生の頃って、どんな遊びが流行っていたんですか?
まずはファミコンですね。あと、漫画の『キャプテン翼』の影響でサッカーも流行っていましたし、あとゾイドっていう今でも人気のあるおもちゃが流行ってましたね。
――きよとさんの家にそういうものは……?
一個もないですね。なので人の家に行くしかなかったです。夏場は僕の家にクーラーがないからクーラーの効いている家に遊びに行くのが楽しみだったんですよね。なかでもファミコンが狂おしいほど欲しかったんですが、中学生になった頃に親戚のおばさんが買ってくれました。
――当時のきよとさんの「友達と遊びたい」という気持ちは痛いほどわかるんですが、おばあちゃんからしたら、きよとさんと一緒にお出かけするのは唯一の楽しみだったんですよね?
だから、めちゃくちゃ嫌がってました。僕が一人で行こうとするのを。うまくタイミングがハマると、「じゃあひとりで行ってきて」ってなるんですけど、二度三度と続くと「私も一緒に行く!」って。まあ、僕はがっかりなんですけどね。
――小さいきよとさんが一人で出かけることが心配だったという気持ちもあったんじゃないですか?
それも間違いなくありました。僕、小さい頃は外に出してもらえなかったんです。なぜならばあちゃんの目が不自由だから。もし僕が交通事故とかに遭ったとして、ばあちゃんの目だとちゃんと対応できないという心配があったみたいです。だからずっと家で落書きして過ごしてたんです。
――おばあちゃんが買い忘れが多いのは、本気でなんですか?それとも毎日きよとさんと外出する理由を作るための、いわば口実だったんですか?
いや、わざとではないです。僕にとっては友達と遊ぶ時間を捻出するのが切実だったのでそういうミスをいかに減らすかが勝負だったんですけど、ばあちゃんはそんなこと知ったこっちゃない。だから、ふわっと買い物してたんですよね。
――いろいろとおばあちゃんの気持ちを理解したうえで、でも腹は立ちますよね。
心の中ではかなり。でもばあちゃん、空気なのか何なのか察するんですよね、僕の気持ちを。とはいえ「ごめんね」なんて謝ってくることはなくて(笑)、むしろ逆ギレしてくるんです、「もういい!」って。こうなるとばあちゃん長くて、機嫌が直るまでずーっと無視なんです。それがしんどくて……。だから、頭に来ても口に出さず、態度に出さず、あきらめるしかない。
――小学生なのに達観してますね(笑)。
あと、夕方の『暴れん坊将軍』とか『大岡越前』の再放送の実況中継というか解説をばあちゃんにしてあげるという日課もありましたから。子どもの僕からすると、あんまりおもしろくなくてしんどかったんですけど。でも夏休みとかになるともっと大変なんですよ。昼ドラの解説も加わるから。……あの頃は本当は遊びに行きたい年頃でしたけど、やっぱり言えなかったですね。買い物もテレビも、ばあちゃんの数少ない楽しみだったから。
遊びたい気持ちをぐっとこらえ、寄り添おうとするきよっぴの優しさを、おばあちゃんもきっと気づいていましたよね。次回は、日本一忙しい小学生と化すきよっぴの月末の様子をお届けします。お楽しみに!
■おおみぞきよと
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