お笑いコンビ・バッドボーイズのボケ担当でおなじみの清人さん。地元・福岡の海沿いの町で過ごした幼少期の日常と家族のことをテーマにした漫画「おばあちゃんこ」を描き始めた。かなり特殊な家庭環境にあって、さらに身体に障碍を抱えながら、幼い清人さんを育てる哲子ばあちゃんがこの物語の主人公。
連載第14回の今回は、おばあちゃんと出かけた外食のお話。キラキラしたものではないけれど、楽しさも悲しさも含んだ一生忘れられない、そんな思い出を作者のおおみぞきよとさんに語ってもらいました。
たまに行く外食がばあちゃんにはものすごく楽しかった
――外食にはそう頻繁に行けるわけではなかった?
とてもじゃないけどしょっちゅうは行けなくて、月一どころか下手すれば半年に一度とか……。
――そんな生活の中で、きよとさんにとってもおばあちゃんにとっても、ご馳走と言えば「ちどり食堂」だったんですね。
そうですね。ばあちゃんは「ちどり」に出かけるのも出前をとるのも好きでした。飲み屋さんが昼にランチをやっているみたいな感じじゃなくて、いろんな定食がそろっている街の定食屋さんでした。
――おばあちゃんはカレーがお気に入りだったんですか?
ちゃんぽんが多かったですね。「ちどり」の名物だったというのと、ちゃんぽんはある意味初めから麵と具が混ざっているというか、目が見えなくても食べやすかったんですよ。カレーってばあちゃんにとっては面倒なところがあって、やっぱりセパレートしているソースとご飯をバランスよく混ぜて食べないといけないから、ハードルが高かったんだと思います。
――麺類なら具だけ先に食べてもスープと麺で全然いけますけど、カレーは食べ終わる瞬間までバランスが必要ですもんね。
目が不自由がゆえに、食べ方が汚くなって周りから奇異な目で見られることに過敏でした。ばあちゃんがまだ目が見えていた頃に見てきた目の不自由な人って、少し濁っていたり視点が合ってなかったりという記憶があったみたいで、自分もそうなんじゃないかっていうひけめみたいなものがあったのかもしれないですね。やっぱり目のことをよくばあちゃんから聞かれましたもん、「目がきれいか?」って。「きれいよ」って答えると安心してましたね。
――最後におばあちゃんと「ちどり」に行ったのはいつなんですか?
中学に上がった頃には、出前になってましたね。
――じゃあ、それ以降はほとんどおばあちゃんとの外食の思い出はないんですか。
「888」って喫茶店が家のすぐそばにあったんです。「ちどり」より敷居が高くて、子どもの頃にはめったに行けなかったんです。でも高校生になってバイトで稼ぎができたので「おごってあげる」ってばあちゃんを連れて行きました。もう、めちゃくちゃばあちゃん喜んで。
――お金がないからなかなか行けないけれど、もともとは外食とか好きだったんでしょうね。
家では本当に煮豆とご飯を食べているところしか見たことがなかったんです。僕らがコロッケを食べていても、ばあちゃんは煮豆。それくらい節約しないとやっていけなかった。だからこそ、たまに行く外食がばあちゃんにはものすごく楽しかったんだと思います。
何十年経っても、肉親と出かけた記憶は忘れないし、より思い出の深みが増していくものなんでしょうね…。次回もお楽しみに!
■おおみぞきよと
X(旧Twitter):https://twitter.com/kiyotomanga