多くのミステリーファンを魅了する沼田まほかるの同名小説を映画化。ある家で見つかった”ユリゴコロ”と題された一冊のノート。そこには人殺しを重ねてきた女性・美紗子の半生がつづられていた。彼女の告白を軸に過去と現代が交錯し、禁断の真実が明らかになる。5年ぶりの映画主演作となる吉高由里子が、初の殺人者を演じることでも話題に。”人の死”を拠り所に生きる難役の美紗子を見事に演じきった吉高に本作の魅力を聞いた。
―物語が過去と現在の2つの時間軸で展開していきますが、実際に完成した作品をご覧になられてどのような感想を持たれましたか。
「脚本でしか現代パートの流れがわからなかったので、過去と現在が一つの作品として交われるのか?という不安がありました。でも完成した作品を見て、過去と現在がうまく混ざり合いながらストーリーが進んでいき、ほっとしました。でも自分の出演シーンは、まだその時の状況や現場のことを思い出してしまって、客観的には見られなかったですね」
―初の殺人者役ですが、オファーを受けた時はいかがでしたか?
「すごく好奇心に駆られて、『やってみたい!』と思いました。殺人者は、フィクションだからこそ演じることのできる役柄ですし、普通のラブストーリーではなくどこか障がいのある恋愛にも魅力を感じました。美紗子は私と全く違うベクトルを持っていて、等身大のキャラクターよりも客観視することができたので、表現のイメージを作りやすかったです」
―撮影は精神的にも体力的にも過酷だったそうですが。
「過去パートのクライマックスとなるダムのシーンが、一番心を削られました。後半の撮影だったんですが、そこにたどり着くまでに泣きそうになったり、くじけそうになる瞬間がたくさんありました。体力的には川に入るシーンですね。台風で予定日内に撮影ができなくて、10月に撮ることになって。もうすごく寒くて凍えながら頑張りました(笑)。でも今では自分の中に傷跡が残るくらい深くこの作品に携われることができて本当によかったと思います」
―心の傷を抱えながら生きる洋介役の松山ケンイチさんや、美紗子と友人関係となるみつ子役の佐津川愛美さんらとの撮影現場はどのような雰囲気でしたか?
「松山さんとさっつん(佐津川)は、熊澤監督から『痩せろ』と言われていました(笑)。洋介たちは生きていることに後ろめたさを感じているので、目がキラキラしていたり、太っていたらおかしいだろうと。食事制限をしている2人の前では食べられなかった思い出があります(笑)」
―美紗子は”人の死”に拠り所を感じていますが、吉高さんの拠り所なんですか?
「1人の時間です。自宅でぼーっとしている時は、心が潤うような気がします。でもそれはお仕事で忙しい時間をいただけているからこそ、満喫できるのかなと。あとはおいしいものを食べている時も幸せですね」
―過去と現在、二つの時間軸で展開していく本作の魅力を教えてください。
「見終わったあとに話し合いをしたくなるような作品だと思います。愛の形やその表現は人それぞれ異なるので、見る人によって誰の涙に共感するのかも変わってくると思います。撮影はすごくつらかったけどいい作品に仕上がったのでぜひ見ていただけるとうれしいです」
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