ここ数年、昭和レトロが広い世代で支持されている。大人世代には懐かしく、若い世代には新鮮に感じる古きよき時代。そんな昭和を町全体で体験できる「昭和の町」が大分県・豊後高田市にある。その昭和の町を、3月後半から4月にかけて菜の花が咲き誇る岬・長崎鼻と合わせて巡ってみた。
海を見渡せる広大な敷地が黄色く色づく菜の花畑は圧巻!「長崎鼻リゾートキャンプ場」
大分空港から車で約1時間。国東半島沿いに車を走らせると「長崎鼻リゾートキャンプ場」に着く。キャンプサイトがある施設だが、入園料が無料で景色を楽しみに来る人も多いという。2025年3月1日~4月13日(日)までは菜の花フェスタが行われ、黄色い花に埋め尽くされる風景を求めて多くの人が訪れる。土日祝のみ駐車料金1台500円が必要になる。
敷地内にはキャンプ場、菜の花畑、展望スポットなどがあり、全身で自然を感じられる。今の季節は菜の花が見頃を迎え、4月上旬が最盛期となる。見学ももちろん無料で、一面に広がる菜の花畑は天然のフォトスポットとしても人気だ。
期間中の土日には、無料で参加できるクイズラリーを実施。1グループ1枚の用紙をもらい、施設内を散策しながらキーワードを完成させると、ガチャポンを回すことができ、キャンプサイトの宿泊券やレストランの食事、オリジナルグッズなどが当たる。
敷地内は絶好の散策コースになっていて、天候のいい日には遠く四国まで見渡せる展望スポットや、パワースポットといわれる場所などもあり、時間を忘れてのんびりできる。また、実はアートスポットでもあり、敷地内のあちこちに屋外アートが展示されていて、触ったり、写真を撮ったりできる。
中でも注目はオノ・ヨーコさんが監修した「見えないベンチ」。国東石というこの地域で採れる石を使ったベンチで、実際には見えるし、座ることもできるが、ここに座って五感を研ぎ澄まし、音や風や匂いなど見えない何かを感じてほしいという思いから作られたそうだ。
そしてカップルにおすすめなのが、「見えないベンチ」のすぐ隣にある「恋結ぶ鐘」。豊後高田昭和の町から長崎鼻を結ぶ国道213号が「恋叶(こいかな)ロード」と呼ばれるドライブルートになっていて、その終着点となる。「恋叶ロード」には、縁結びの神様「粟嶋社」などもあり、プロポーズにふさわしいロマンティックなスポットとして「恋人の聖地」に選定されている。
敷地内を巡っておなかが空いてきたら、レストラン「花キッチンfiore」へ。ここでは地元の食材と、敷地内で育てている菜の花を使った料理や、工房で作った菜種油やひまわり油などの販売を行っている。さっそく、菜の花フェスタ期間中の限定メニューをいただいた。
「菜の花明太クリームパスタ」(1200円)は、もちもちの生パスタにたっぷりの明太子クリームを絡め、菜の花をトッピングした見た目も春らしいメニュー。明太子の量が多くて驚くが、程よい塩味とクリーミーさでかなりおいしい。菜の花のほのかな苦みがアクセントになっていて、春を感じられる。
デザートには地元産のいちごを使った「プレミアム苺パフェ」(1480円)をチョイス。甘酸っぱいフレッシュいちご、いちごのチュイール、いちごのアイスと、まさにいちご尽くし。間の生クリームやスポンジ、シリアルなどを合わせると、食後でもあっという間に食べられてしまう。
飲食は店内はもちろん、天気のいい日にはテラス席が断然おすすめ。春風を感じ、海を眺めながら食事やスイーツが楽しめるなんて、なかなかの贅沢。写真撮影用にスマホは手元に置いておきたいが、できればデジタルデトックスの時間にしたい。
さらに店内では、敷地内に咲く春の菜の花や夏のひまわりの種から作られた食用油脂を販売している。油やフレーバーオイル、ドレッシングなど、たくさんの種類があるのでお好みを見つけよう。キャンプ場を利用しなくても自然や季節を感じられ、旬のグルメも楽しめるので、気軽に立ち寄りたい。
空気感まで昭和!?「豊後高田昭和の町」で感じる懐かしさ
長崎鼻キャンプ場から車で約30分のところに「豊後高田昭和の町」がある。ここは2003年、町おこしとして「豊後高田昭和の町」を掲げ、昔から残る街並みを活かして観光地となった場所。昔からの建物が残っていたり、普通に営業している店舗に懐かしい商品が展示されていたりと、実際に昭和の町を歩いている気分になれる。
無料で過ごせる「昭和の町展示館」は、造形作家の南條亮さんが制作したジオラマの見学ができる。昭和の暮らしをリアルに表現したドキュメントジオラマは、細部までこだわり抜いた作者の思いが伝わるものばかりで見応えがある。2025年4月28日(月)までは改装のため閉館になり、4月29日(祝)13時からリニューアルオープンとなる。
次に向かったのは「昭和ロマン蔵」。「昭和の夢三丁目館」「駄菓子屋の夢博物館」「チームラボギャラリー」の3館からなる。3館まとめて入れるお得なチケットもあるので、せっかくなら全部を見学するのがおすすめ。入口には買い物もできる駄菓子屋さんがあり、いきなり足止めを食らう。所せましと陳列された駄菓子を見ると、それだけでテンションが上がる。スーパーやコンビニでも買える駄菓子もあるが、昔ながらのこのお店の雰囲気がたまらない。
「駄菓子屋の夢博物館」には懐かしのおもちゃや昭和の時代に流行ったであろうアイドルや歌謡曲のレコードやおもちゃなどがズラリと並んでいる。これだけのアイテムが一堂に会しているのも圧巻で、とにかくその数の多さに驚く。断然盛り上がるのは当時をリアルに知っている世代。一つひとつに思い出があると、じっくり見て回るのでなかなか進めない。歌謡曲のレコードは、若い世代でも昨今の昭和歌謡ブームで曲は知っているかもしれない。リアル世代はジャケットを見ただけで曲が浮かび、当時のエピソードまで思い出すはず。親子で訪れると親のほうが夢中になりそうだ。
お隣の「昭和の夢三丁目館」では昭和30年代の生活を感じられる展示が。トイレは和式で、キッチンというより台所や炊事場と言いたくなるような流し台。テーブルはちゃぶ台だし、もちろん、部屋は畳で黒電話や足つきのブラウン管テレビがある。知っているものもあれば、知らないものもあるし、これだけすべてがそろった生活感のある空間に入れるのもひとつの体験。
40代後半以降の人は実際に使っていたものがあったり、おばあちゃんの家で見たことがあるものだったり、懐かしさを感じるかもしれない。今どきの昭和ブームやレトロブームを通じてこの時代を知っているという若い世代にとっては、何をするものかわからないというものもあれば、知識として知ってはいるが初めて見るというものも。それぞれの世代ごとに違った楽しみができるのも楽しい。
昭和の時代は必ずしもいいことばかりではないかもしれないが、駄菓子やおもちゃ、レコードなどにワクワクしていた気持ちを思い出すと、何とも言えない懐かしさとほっこりした気持ちになる。平成・令和世代にとっても、どこかでこのノスタルジックを感じられるのではないかと思う。
昭和ロマン蔵を出て、駅通り商店街を歩く。時が止まっているかのような昔ながらの街並み。古い建物を保存して昭和の町を維持している。電気屋さんには昔の家電が置かれていたり、当時のことが書かれたボードが置かれていたり、じっくり見て回るのも楽しい。
町巡りの休憩には、昭和の給食が食べられるカフェ「ブルヴァール」へ。やっぱり給食で人気といえば揚げパン。コッペパンを揚げて砂糖をまぶしたもので、昭和の給食ではスター的な存在だ。給食で揚げパンが出る日は、子どもたちが朝からソワソワしたとか、しなかったとか。休んだ児童がいるクラスでは残った揚げパンを巡って、じゃんけん合戦が繰り広げられたほどの人気メニュー。
ほかにも、ソフト麺と呼ばれる、文字通り柔らかめの麺でミートソースやカレーなどと一緒に提供された、これまた子ども人気抜群のメニューや、クジラ肉に下味を付けて油で揚げたクジラの竜田揚げなど、昭和を感じるメニューがいろいろ楽しめる。年代が少し違っても出ていたメニューが変わったり、給食室のある学校と給食センターから配布される学校でも違いがあったり、給食は奥が深い。
お店の方いわく、「給食は地域によって違いがあって、自分が子どものころはこんなのを食べていた、こんなのが好きだったなど、お客さんから話を聞いて知ることも多いんです」。いずれにしても、保育園、幼稚園から小学校、中学校の間にほとんどの人が給食を食べているので、給食の話題になると盛り上がり、お店でも楽しく食事ができる。
ブルヴァールでは、人気の揚げパンのテイクアウトも行っていて、町歩きのお供として購入することもできる。ちなみに、この揚げパン、ふわふわ、もちもちで昭和の給食の揚げパンよりも断然おいしいと思う。食事をした後でもこの揚げパンはぜひ食べてほしい食べ歩きグルメだ。
そしてもう一つ、食べ歩きグルメでおすすめなのが、「肉のかなおか」のコロッケ。昭和26年創業の精肉店で、食べ歩きにぴったりの揚げ物も豊富。コロッケだけでも9種類もある。メンチカツやチキンカツなどご飯のおかずにぴったりの惣菜もあり、近所にあったらうれしいお肉屋さんだ。店舗の向かいにベンチがあり、ここで食べるのもOK。給食を食べた後に買い食いなんて、まさに昭和の子どものようだ。
本当に時空を超えてタイムスリップをしたかのような街並みに、時間を忘れてほっこり。イメージして作られた昭和の世界観もいいが、当時のものが残っていたり、昔のものを大切に今に残している「豊後高田昭和の町」で、ノスタルジックな空気をぜひ体験しよう。
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