泥湯や砂湯、むし湯…別府温泉のディープな世界!ココは必浴!!メジャー級3選【九州の日帰り温泉vol.2】

東京ウォーカー(全国版)

温泉大国・九州の中でも、日本一の源泉数を誇るのが大分県である。大分県は「おんせん県おおいた」を名乗り、県民たちはマイカーに温泉グッズを常備しているという噂もあるほど温泉愛に満ちている。こと別府においては、町のそこら中に湯けむりが上がり、自宅に温泉が湧いている家庭も少なくない。また、自宅の風呂が温泉でなくても、地元民御用達の「ジモ泉」と呼ばれる共同浴場がそこかしこにあるため、仕事で別府に転勤となった社会人は家のお風呂に入らなくなる、というジンクスも!普通の温泉地とは一線を画し、地元に根づいたディープな湯が湧きまくっているのが別府である。そんな別府を訪れたなら「この湯は押さえておきたい」という初心者必須の3湯を紹介する。初心者向けと言っても、そこは別府!ディープな湯が登場するのでお楽しみに。

【写真で見る】湯けむりが立ち上る別府の日帰り温泉3選!(C)別府画像ライブラリー


全国トップクラスの濃厚な泥湯!異彩を放つビジュアル最強の「別府温泉保養ランド」

真っ白…いや“白”を通り越し、濃いグレーといえるであろう。ドロドロに濁った“透明感ゼロ”の湯が広大な露天を満たしている。ここは別府市・明礬(みょうばん)温泉にある「別府温泉保養ランド」である。別府市は海に面した市であるが、明礬温泉は市街地より少し山手に登った場所に位置し、温泉天国・別府においても特に硫黄の匂いが充満した“白濁湯エリア”である。

すごい濁り湯だ!これぞ透明感ゼロ!!画像提供=別府温泉保養ランド


別府温泉保養ランドでは、世界でも数少ない鉱泥を楽しむことができる。一般的に温泉の湯を表現する際、よく「化粧水のような…」という例えを聞くが、こちらの湯は「クリームに身を浸からせている」という表現がしっくりくるだろう。それほどに濃厚な湯なのである。

ドロドロの温泉は硫黄成分たっぷり!湯上がりに使うタオルは匂いが取れないので、使い捨て覚悟で!


広大な露天は見晴らしがよく、山から吹く風も気持ちいいのでこの季節には特におすすめだ。ただ、混浴という点を少し気がかりに思う人もいるかもしれない。そこで、取材に対応してくれた別府温泉保養ランドの部長である福田悠希さんに混浴の利用状況について話を聞いてみた。

――混浴露天の利用者は意外にも多いと聞きました。入浴しやすい環境なのでしょうか?

露天風呂は混浴と申しましても、男女間に仕切りを設けております。対面でお顔は見えますがお湯に浸かっている部分は濁りで完全に隠れた状態でご入浴いただけます。もちろん脱衣所も別々で、脱衣所から露天風呂の入り口まで、男女別の通路を通って移動していただけるので安心です。

――実際に利用された方々からの声は届いていますか?

実際に来られた方のほとんどから、思っていたより全然入りやすかったというお声をいただいております。

内湯は男女別となっている。こちらは「コロイド湯」画像提供=別府温泉保養ランド

また、別府温泉保養ランドの湯は濃い成分も魅力だ。通常の酸性泉よりもさらに強い酸性の湯で、特に内湯の温泉成分は強い。ゆえに入浴時に注意が必要で、内湯では沈殿している泥を顔に塗ったりする行為は禁止されている。福田さんに湯の効能についても話を聞いてみた。

――男女別の内湯について、特徴や効能を教えてください。

コロイド湯は粒子の大きな硫黄成分が湯と混ざり合っている濁り湯です。ニキビやアトピー、皮膚病などに効果が期待できます。肩凝りや腰痛などの身体の痛みの軽減、関節痛の緩和などにも効果があるといわれています。

――効果が高い分、注意も必要なんですよね?

はい。地下の鉱泥浴場は露天に比べて酸性が強い泥ですので、小学生以下のお子様はご入浴不可となっております。

――「紺屋鉱泥せっけん」が人気だそうですね!特徴や効能など教えてください。

別府温泉保養ランド内にある紺屋地獄から採れた鉱泥をふんだんに使用した石鹸です。ニキビやアトピーの治療はもちろん、水虫の治療に使われる方もいらっしゃいます。

地下の鉱泥浴場。成分が濃いため、小学生以下は入浴不可画像提供=別府温泉保養ランド


「混浴」と聞くだけでは戸惑ってしまう人もいるかもしれないが、よくある混浴とは異なり、男女別の仕切りや壁が設けられていたり、湯に浸かってしまうまでの通路は男女別になっていたり、透明感ゼロの白濁湯が身体を隠してくれるため安心感がある。何よりも全国的にも珍しい鉱泥温泉(泥湯)が楽しめるので、チャレンジしてみる価値ありの一湯だ。
【別府温泉保養ランド】
別府温泉保養ランド/0977-66-2221
〈大浴場〉
■入浴料:大人1500円、中学生1100円、小学生600円、幼児350円
■営業時間:9時~20時(最終受付19時)
■大浴場の種類:内湯(コロイド湯)男1女1、内湯(泥湯)男1女1、露天(泥湯)混浴2
■泉質:単純酸性泉
■湯の特徴・効能:リウマチ、水虫、一般皮膚病、神経痛、糖尿病、自律神経失調症など
〈貸切風呂〉なし

薬草を温泉熱で蒸した天然サウナ「鉄輪むし湯」!温泉蒸気を吸い込んでデトックス

別府温泉の中で特に風情があるのが、鉄輪温泉街である。入り組んだ小路沿いに湯治宿や昔ながらの商店が建ち並び、夕暮れになると石畳の道を浴衣姿でカランコロンと歩く人の姿も。そんな鉄輪温泉街にあるのが「鉄輪(かんなわ)むし湯」である。昨今、サウナが流行しているが、むし湯は日本に古くから伝わる温泉入浴のひとつで、温泉のルーツともいわれている。天然の温泉蒸気で蒸し、鼻や口などの気管から温泉成分を体内に取り入れる。温泉熱によって発汗するため、デトックスの効果にも期待できる。

鉄輪温泉街にある「鉄輪むし湯」(C)別府画像ライブラリー


鉄輪むし湯は、小さな石室の中に薬草がぎっしりと敷き詰められている。まずは受付で浴衣をレンタルし、浴衣を着用したら重い扉を開けて石室内へ。むし湯は男女別となっており、それぞれ同時に4名ほどが入室できる。石室の中で岩盤浴のように横たわること約10分。石室内で静かに寝ているだけで大量の汗が噴き出てくるので驚きだ。その汗は、内湯に移動してすっきり流そう!

定員4名の石室(C)ツーリズムおおいた


ここで少し余談だが、日本一の源泉数を誇る別府市にはなんと「温泉課」が存在する。さすがは「おんせん県」といえる。そして、今回の取材に対応してくれたのは別府市温泉課主任の峯﨑さんである。峯﨑さんに鉄輪むし湯の魅力について教えてもらった。

――鉄輪むし湯とはどういった温泉なのでしょうか?

温泉で熱された8畳ほどの石室に、石菖(せきしょう)が敷き詰められています。石菖は清流沿いにしか群生しない薬草で、敷き詰められた石菖の上に浴衣を着たまま横たわって入浴するのが鉄輪むし湯です。

――鉄輪むし湯の魅力についてひと言コメントお願いします!

石菖はショウブ科ショウブ属に属する多年生植物で、蒸すことで香りを発します。その香りに包まれて香りを楽しみながら、体の芯から温まることができます。

蒸すことで芳醇な香りが漂ってくる(C)別府画像ライブラリー


――無料で利用できるむし湯もあるとか?

はい。敷地内に無料の“足蒸し湯”があります。箱の中に膝より下を入れて足を蒸すことができます。鉄輪むし湯の建物の外にある施設ですが、利用時間は6時30分から20時となっております。時間は変更になる場合もあるので、別府市公式サイトでご確認ください。

誰でも利用できる無料の足むし湯(C)別府画像ライブラリー


石室のむし湯は定員が各4名なので、混雑状況によっては待つ場合も。また、鉄輪むし湯前の駐車場は身障者専用となるので、ご注意を!「熱の湯前駐車場」や「鉄輪温泉地区駐車場」を利用しよう。どちらも有料だが、鉄輪むし湯利用客は2時間無料になるサービスも。
【鉄輪むし湯】
別府市鉄輪上1組/0977-67-3880
〈大浴場〉
■入浴料:700円、小学生以下は入浴不可※レンタル浴衣:220円
■営業時間:6時30分~20時(最終受付19時30分)※変更になる場合あり。別府市公式サイトを要確認
■大浴場の種類:内湯男1女1、むし湯男1女1
■泉質:塩化物泉(内湯)、単純温泉(むし湯・足蒸し湯)
■湯の特徴・効能:きりきず・神経痛・冷え性・皮膚乾燥症など
〈貸切風呂〉なし

別府のシンボル「竹瓦温泉」!名物・“砂かけさん”がかけてくれる砂湯

別府のシンボル的な公衆浴場が「竹瓦温泉」である。別府を訪れたなら、絶対にひと目見ておきたいほど見事な木造建築で、特に若い女性客に人気が高く、昨今は外国の観光客にも好評だとか!何度も改修・再建を重ねられたが、レトロなよさが随所に残っており、浴場にはシャワーはない。これぞ“シンプルイズベスト”な浴場である。湯が熱めなのも別府ならではであろう。

重厚感ある古きよき時代の建物(C)別府画像ライブラリー


竹瓦温泉には泉質の異なる男湯と女湯、そして砂湯がある。前出の別府市温泉課の峯﨑さんが竹瓦温泉についても取材に応じてくれた。

――竹瓦温泉は歴史が古く年季を感じる建物で、別府の財産ですね!

はい。創設は1879年(明治12年)で、現在の建物は1938年(昭和13年)に建設されたものとなります。正面は唐破風造(からはふづくり)の豪華な屋根を持つ温泉となっていて、その外観は別府温泉のシンボル的な存在です。

――竹瓦温泉という名称の由来は?

当初建築されたものは竹屋根葺きの浴場だったんです。その後改築されたものが瓦葺きであったため、そこから竹瓦温泉の名称がついたと伝えられています。

――「砂湯」と聞くと海辺の砂浜にあるイメージですが、館内にあるんですか?

館内にあります。浴衣を着て砂の上に横たわると“砂かけさん”が温泉熱で温められた砂をかけてくれます。

おっと!本当に館内に砂湯があった!!(C)別府画像ライブラリー


砂湯は最大8名まで同時に利用できるが、混雑の状況によっては待つことになる。また、電話やネットからの予約は一切受け付けておらず、その日の混雑状況によっては最終受付時刻が早まることもあるので、ご注意を!
【竹瓦温泉】
別府市元町16番23号/0977-23-1585
〈大浴場・砂湯〉
■入浴料:中学生以上300円、小学生100円、小学生未満無料※砂湯は1500円(5歳以下入浴不可)
■営業時間:6時30分~22時30分※砂湯は8時~22時30分(最終受付21時30分)
■大浴場の種類:内湯男1女1、砂湯
■泉質:塩化物泉(男湯・砂湯)、炭酸水素塩泉(女湯)
■湯の特徴・効能:きりきず・神経痛・冷え性・皮膚乾燥症など
〈貸切風呂〉なし

別府の湯けむりは道路脇からも立ち上る(C)ツーリズムおおいた

濃厚な泥湯に薬草むし湯、砂かけさんによる砂湯…と、普通の温泉とはひと味違ったディープな入浴ができるのも湯の町・別府の魅力である。今回紹介したのはメジャー級の人気温泉だが、穴場のジモ泉や「これは渋い!」と唸るような通好みの湯も山ほどあるのが別府!ハマるとなかなか抜け出せない…別府は“温泉沼”である。

取材・文=大庭かおり

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