自然の中で楽しむアウトドアサウナ。山や川、森林などの非日常の中で味わう開放感は、町なかのサウナとはまったく違った満足感が味わえる。大分県豊後大野市にある「LAMP豊後大野」は、2017年にオープンしたサウナ併設の宿泊施設。大自然の中で「REBUILD SAUNA(リビルド サウナ)」を体験してきた。
何もない贅沢を体感するアウトドアサウナ
「おんせん県」大分県にあって、温泉がないことで知られる豊後大野市は、それを逆手に取った「サウナのまち」を宣言している。九州で唯一「日本ジオパーク」と「ユネスコエコパーク」の両方に認定されているほど豊かな自然に恵まれている豊後大野市には、岩穴をくり抜いて蒸気浴をする蒸し風呂の一種、「石風呂」の文化が古くから根付いていて、大自然を生かしたさまざまなアウトドアサウナが楽しめる。LAMP豊後大野もそうした施設の1つ。
祖母山麓の雄大な自然の中にあるLAMP豊後大野は、50年以上前に廃校になった小学校の建物を利用した宿泊施設。そして、そこに建てられているのがREBUILD SAUNAだ。もともと捨てられるはずの廃材を使用した小屋サウナで、小学校があったころは校庭だったであろう場所に建てられている。
たどり着くまでの道のりもなかなかのもので、車以外の手段はない。「これぞアウトドア」だと思いながら、くねくねと続く山道を進むと森の中に突如、LAMP豊後大野が現れる。昔はここに通う子どもたちがいたのかと思うと驚くぐらい、周囲には何もない。見えるのは木々の緑と空だけだ。
宿泊施設ではあるが、サウナは日帰り利用もOK。ということで、今回は日帰り利用を選んだ。なお、サウナは事前予約制だ。
建物の中は物販やレストランもあり、何もなかった周辺の雰囲気とは違う。建物の中にある受付でタオルを受け取り、脱衣所で水着に着替える。アウトドアサウナは自然の中で体験するため、基本は水着着用となる。水着はレンタルもできるが、着慣れているものを持参するのがおすすめ。タオルセットとサンダルは無料レンタル、まだ肌寒い時期は有料だがポンチョもレンタルしておきたい。
薪の香りと火の揺らぎに癒やされる
水着に着替えたら、タオルを持ってサウナへ。建物からやや傾斜が急な階段を下りていくと、トレーラーサウナ「Valo(ヴァロ)」と小屋サウナ「REBUILD SAUNA」がある。ちなみにvaloはフィンランド語で「光」を意味し、トレーラーサウナに差し込む光を表している。
日帰りサウナで利用できるのは、この2つのサウナと水風呂、そして建物内の浴室。サウナはフィンランド式の薪ストーブサウナだ。まずは、REBUILD SAUNAへ。定員8名で男女共用だが、このときはほかの利用者がいなかったので、貸し切り状態。ほかの利用者に迷惑が掛からない状況なら足を伸ばしたり、横になったりして過ごしてもいいそうだ。
ストーブの中で薪が燃えて火の揺らぎが見える。薪が燃えている様子と香りは薪サウナ独特で何とも言えないリラックス感がある。専用のラドル(柄杓)でサウナストーンに水をかけ、セルフロウリュを自分の好きなタイミングでできるところもいい。ロウリュで立ち上った蒸気がサウナ室内に広がり、全身を包む。湿度もしっかりあるので心地いい。
窓が付いていて外からの光が差し込むサウナ室も、なかなかない。座る場所によって温度の感じ方も変わるので、心地いいと思うところを探して移動する。サウナ室内に時計が付いているが時間は気にせず、出たくなったら出る、が基本。
天然の水風呂に身を任そう
サウナ室を出たら桶シャワーで汗を流す。水の温度はそのときの気温によるので、春から夏にかけてはそれほど冷たくないが、いきなり桶のロープを一気に引くと体への負担もあるので、最初はゆっくりと水を落として体を慣らすようにしよう。
汗を流したら、沢から引いた天然水の水風呂へ。水風呂といってもサイズ感はもはやプール。この中は水が循環しているので潜ったり泳いだりしてもOKというのもうれしい。シンプルに水風呂に入るというより、浮くのがいい。顔を上にして漂うイメージ。この広さだからできる水風呂の楽しみ方だ。空と山の緑を見ながらボーッとする。何とも言えない開放感、そして自然との一体感。
水着着用で入る水風呂はプールに入るような感覚なので、普段、水風呂が苦手な人でも入りやすいように思う。無理は禁物だが、アウトドアサウナの醍醐味でもあるので、ぜひトライしてほしい。ちょっと入って無理だと思ったらすぐ出ればいいので、手だけ、足だけでもぜひ。
水風呂から出たら体を拭いてととのい椅子の上で外気浴。ポンチョをレンタルしたのはこのためだ。まだ、肌寒い時期には外気浴で体が冷えてしまうので、しっかり休憩するためにもポンチョを着て休憩するのがおすすめ。
コンパクトなトレーラーサウナも体験
次にはトレーラーサウナ、Valoへ。こちらは定員3名というコンパクトサイズで、その分しっかり熱が回るので、温まるのも早い。通常、サウナ室は黙浴という施設も多いが、貸し切り状態の場合はサウナ室で会話もOK。カップルや友だち同士でValoを利用して、普段とは違った環境で会話を楽しむのも新鮮な体験だ。
サウナ室は「REBUILD SAUNA」よりも熱く感じるので、無理をしないように外へ。しっかり温まれば桶シャワーも頭から浴びることができる。そのあとの水風呂の気持ちよさも格別だ。外気浴もさらに心地いい。
そんなこんなで3時間という限られた時間内にREBUILD SAUNAとValoをそれぞれ2セットずつ満喫し、すっかり骨抜きにされてサウナタイムは終了。最後は建物内の浴室でお風呂に入ってさっぱり。
サ飯は事前予約制の「ラム麻婆」
サウナの後はお待ちかねのサ飯。LAMP豊後大野ではサウナを予約する際、サ飯付きプランかサ飯なしプランが選べる。サ飯はラム挽き肉を使った麻婆をご飯にかけたLAMPの人気メニュー「ラム麻婆」。花山椒が効いたクセになる味で、サウナの後にはこの刺激がたまらない。
ドリンクはその場でオーダーOK。せっかくの大分県ということもあり、県の特産品であるカボスを使った「カボソ」(カボスソーダ)をチョイス。ラム麻婆のスパイシーさとカボスのさわやかさがマッチして、なかなかいい組み合わせだ。しっかり食べておなかもいっぱいになって、大満足。
受付エリアにはオリジナルグッズもたくさんあって、せっかくここまで来たので記念にTシャツやタオルなどを購入するのもいい。自分用はもちろん、サウナ好きの友人、知人へのお土産にもぜひともおすすめしたい。
今回は日帰りで立ち寄ったが、宿泊してサウナを楽しむこともできる。キャンプ場にテントを持ち込んで泊まることもできるし、車中泊も可能。建物内の2階には男女混合ドミトリー、貸し切りドミトリー、大人数で止まれる和室、3階には個室もあり、1人でもカップル、グループでも楽しめる。宿泊者限定でサウナを利用できる時間帯もあり、天気のいい日の夜は「星空×サウナ」が楽しめるそう。ぜひ山の中で本当の自然とアウトドアサウナを味わおう。
取材・文=岡部礼子
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