5歳の女の子・由美子が幼稚園で描いた絵は、箱から手が出ていて不気味だった。先生が「冷蔵庫かな?」と聞くと、「パパだよ!」という。友達に「由美子ちゃんのパパ、変なの!」と言われるけれど、パパはごはんもトイレも由美子を撫でるときも箱の中からだった。 今回は、白泉社「kodomoe(コドモエ) web」で連載中の都会さん著「箱の男」を紹介するとともに、制作について話を聞く。
由美子のパパは、優しいけれどずっと箱の中にいる…!?
由美子のパパは、箱の中に住んでいる。穴から手を出して、ごはんを受け取り、トイレをビニール袋に入れて差し出す。由美子にも長いこと顔を見せていない。けれど、由美子の話を聞いてくれて、頭を撫でてくれる優しいパパだった。
第2話で由美子は5歳から7歳へ成長。学校の友達にお土産をもらった由美子は、家族で一度も出かけたことがないことに気づかされる。帰宅後、「パパが箱の中にいるから、どこにも行けないの?」と癇癪を起した。
「うちに友達を連れてきてはいけない」というルールもある。もちろん、パパを見られてはいけないからだ。しかし、成長していくにつれ、“うちの家族は少しおかしい!?”と気づいていく由美子。そして、この少しおかしい家族を必死に隠そうとする母親の姿が静かに描かれていく。
時折見える“家族の闇”「お母さんの表情が意味深で不安になる」などの反響を呼ぶ
――「箱の男」はどのような経緯で制作することになったのでしょうか?
もともとは、Instagramで個人連載していた作品でした。当初は「一人暮らしの女性の家に、箱に入った男が宅急便で届く」という設定で描いていたのですが、途中で頓挫してしまい、現在はInstagramからも削除しています。
それでも定期的に、「箱の話はどうなったの?」「最後まで描いてほしい」といったメッセージを、さまざまな方からいただいていて、いつか形にしたいという思いはずっとありました。そんな折、kodomoeの編集さんとお話をしていた際にその話題になり、「やりましょう!」と盛り上がって。そこから一から設定を練り直し、本格的に制作がスタートしました。
――kodomoe という親子向けのWebですが、どのような反響がありましたか?
「怖いけれど先が気になる」「お母さんの表情が意味深で不安になる」など、読者の方から多くの感想をいただいています。物語が進むにつれてアクセス数も順調に伸びているそうで、とてもうれしく思っています。
――都会さんが、描くうえでこだわっているところがあれば教えてください。
1話ごとに年齢が進む構成なので、主人公と箱との関係性がどう変化していくかを丁寧に描きたいと思っています。幼いころは「優しいパパが入ってる場所」だと信じていた箱が、成長するにつれて少しずつ違和感や疑問を抱かせる存在になっていく。そのグラデーションを大事にしていきたいです。
――連載中ですが、今後の展開または読者メッセージをお願いいたします。
連載はまだ序盤ですが、ここから先、箱や家族にまつわる「見えていなかった真実」が少しずつ明らかになっていきます。読む人によって受け取り方が変わるような、そんな余白のある物語を目指しています。「これってどういうことなんだろう?」と、楽しく想像しながら読み進め、最後まで見届けていただけたら幸いです。
取材協力:都会(@okameid)