“昭和の食べ物”というイメージから大逆転!「魚肉ソーセージ」が再ブレイクを果たしたワケ

東京ウォーカー(全国版)

おつまみやおやつとして大活躍の魚肉ソーセージ。かつては畜肉ソーセージの代替品やタンパク源として重宝されたが、「昭和の食べ物」「懐かしい食べ物」というイメージを持つ人もいるはずだ。

しかし、ここ数年はSNSを中心に「ギョニソ」と親しまれ、料理研究家などによって多くのレシピが紹介されている。その影響は大きく、全国のスーパーマーケットから収集した情報を扱う株式会社KSP-SPのPOS(販売時点情報管理)データによると、2024年3月の魚肉ハム・ソーセージの販売金額はここ3年間で最高値を記録したという。テレビ番組でも特集が組まれるなど、まさに再ブレイク中だ。

なぜ魚肉ソーセージに再び注目が集まっているのだろうか。その理由について、魚肉ソーセージをはじめとした水産加工食品を扱うマルハニチロ株式会社(以下、マルハニチロ) チルド食品事業部の綿引悠太さんに話を聞いた。

近年再ブレイクを果たしている魚肉ソーセージ。その理由とは?


社会問題を乗り越えた魚肉ソーセージ

そもそも魚肉ソーセージは、1935年にマグロでハムを試作したことがきっかけで誕生。その後、ハムの製造技術を応用してソーセージを作るようになり、1952年には食品メーカー各社が製造・販売を始め、市場に出回るようになっていった。

魚肉ソーセージの発展には、1954年に南太平洋ビキニ環礁で行われた水爆実験の影響がある。

「いわゆる『第五福竜丸事件』と言われるこの事件の風評被害を受けて、マグロの需要が落ちて安価になりました。この余ったマグロをソーセージに活用した結果、販売価格が下がり、魚肉ソーセージの市場拡大につながりました」

【画像】ハムやソーセージを参考に、魚のすり身を使って生まれた魚肉ソーセージ


魚肉ソーセージは都市部だけでなく海産物が獲れない山間部などで食べられるようになり、徐々に全国に展開。1960年代になり、魚のすり身の冷凍技術が開発されたことと、マグロが高騰したことで、原料を白身魚に変更した。そこから、畜肉ソーセージの代替品としての人気は続き、1972年に生産量のピークを迎える。

「1972年のピーク以降は少しずつ目減りしていき、2000年以降の売上は横ばい状態です。生産量が減少した要因の一つは、『200海里問題』によって、原料となる白身魚が高騰したことです」

さらに、“食の欧米化”も要因の一つと考えられるそう。それまで魚中心だった食生活が、牛肉や豚肉などの肉中心へと変化し、魚肉ソーセージの需要が落ちたことが挙げられる。そうしたさまざまな要因が重なり、魚肉ソーセージの人気は一旦落ち着きを見せていた。

再ブレイクの理由は“時代の変化”

そんな魚肉ソーセージがここ数年、再ブレイクを果たしている。その理由について、綿引さんは「生活様式や健康志向、防災意識といったものが大きく関わっているのではないか」と推測。

「魚肉ソーセージには魚由来のタンパク質が含まれ、カルシウム、DHA、EPAが配合された商品もあり、そのまま食べても料理に使ってもいいということで、昨今の時代の変化にマッチした食品ではないかと思います。魚肉ソーセージは常温で保存でき、非常時の備蓄食品としても有用で、手が汚れていても衛生的に開けられることもメリットです」

現在は全国のスーパーやドラッグストア、コンビニでも当たり前に販売され、おつまみやちょっとしたおやつにも重宝されている


魚肉ソーセージといえば、オレンジ色のフィルムに包まれているのが特徴。昔はお店の軒先で販売していることが多く、遮光性を高めて中身の劣化を防ぐためにオレンジ色のフィルムが採用された。現在はフィルムの技術も進化して、透明のフィルムでも同様の機能を持っているが、“魚肉ソーセージといえばオレンジのフィルム”という消費者のイメージが強く、マルハニチロだけでなく各社で採用されている色だ。

「見た目ではわかりづらいのですが、このフィルムも進化しているんです。当社では『1秒OPENフィルム』と名付けているのですが、つまんで引っ張るだけで開けられるようにフィルムを改良しています。これは『フィルムが開けづらい』『フィルムに中身がついてしまう』というお客様からの声に応えるために開発したものです」

昔の魚肉ソーセージにあった“開けづらいイメージ”を払拭し、ハサミなどの道具を使わず簡単に開封できるようになっている。そのため、子どもや高齢者でも食べやすく、アウトドアにもうってつけだ。

マルハニチロで採用されている「1秒OPENフィルム」


「現在の魚肉ソーセージの原料にはさまざまな地域の白身魚を使っています。たとえば、アメリカ・アラスカ州をはじめとした寒い地域のスケトウダラ、インドや東南アジアといった温暖な地域のタチウオなどです。同じ魚でも天然ものなので身の弾力が異なります。最終的な商品の品質にブレがないようにいろいろな魚の配合を調整しながら作っています」

パッと見は昔から変わらないオレンジ色のフィルムに包まれた魚肉ソーセージだが、その中身は進化を遂げているようだ。こうした企業努力も再ブレイクにつながっているのかもしれない。

昔ながらのオレンジ色のフィルム

魚肉ソーセージを使えば短時間でひと品増やせるので、SNSではアレンジレシピの投稿も多く見られる。レシピは公式サイトでも公開中だ


「皆さんの健康に貢献できる商品を生み出したい」

魚肉ソーセージのバリエーションも豊富になってきている。マルハニチロが販売する「DHA入りリサーラソーセージ」は、消費者庁から「特定保健用食品」に認可されている魚肉ソーセージ。「DHA入りリサーラソーセージω」は心筋梗塞や脳梗塞といった心血管疾患のリスクを低減する可能性があると、日本で初めて認可を受けた食品だ。

特定保健用食品として認定された「DHA入りリサーラソーセージ」


「心血管疾患の患者数は推定479.7万人とされており、患者数の多い傷病の上位に入っている病気です。リスク低減にはDHAやEPAといった成分が効果的と言われていますが、サプリメントで補うには習慣づけが大変ですし、飲み忘れては意味がありません。しかし、食事であれば毎日のことですから、魚肉ソーセージなら取り入れやすいと思います」

そのほか、皮膚の健康維持をサポートする魚肉ソーセージも開発しており、綿引さんは「水産会社として、魚を使った食品で皆さんの健康に貢献できる商品を生み出し続けていきたいです」と意気込んだ。

n-3系脂肪酸(DHA+EPA)を配合した栄養機能食品「おはだのごちそう D-HADA(ディーハダ)」は、魚肉ソーセージのさらなる可能性に挑戦している


時短料理や健康維持、備蓄用と、実はあらゆるシーンで使い勝手のいい魚肉ソーセージ。自分に合った方法で取り入れてみてはいかがだろうか。

取材・文=織田繭(にげば企画)

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