名匠ジョン・ウー監督の最新作「サイレントナイト」を鑑賞。全編セリフなしの壮絶な復讐劇にハラハラドキドキが止まらない!

東京ウォーカー(全国版)

2025年4月11日より全国公開された「サイレントナイト」。「男たちの挽歌」(1986年)や「フェイス/オフ」(1997年)などで知られるジョン・ウー監督が、主演にジョエル・キナマンを迎え、新たなアクション映画に挑んだ本作。公開前に試写で観た本作の感想を紹介(以下、ネタバレを含みます)。

映画「サイレントナイト」の場面写真(C)2023 Silent Night Productions, Inc. All Rights Reserved


【ストーリー】
幸せな一日になるはずだったクリスマス・イブ。ギャング同士の銃撃戦に巻き込まれたせいで、ブライアン(ジョエル・キナマン)は目の前で愛する我が子の命を奪われる。

自らも重症を負ったブライアンは、なんとか一命をとりとめたものの声帯を損傷し、絶望を叫ぶ声すらも失ってしまう。

ブライアンの悲しみはやがて憎悪へと変わり、悪党どもへの復讐を決意するのであった。

次の12月24日をギャング壊滅の日と決めたブライアンの壮絶な復讐劇が幕を開ける…。

(C)2023 Silent Night Productions, Inc. All Rights Reserved


ジョン・ウー監督が「ジョン・ウィック」シリーズの製作陣らとタッグを組んで挑んだ本格アクション

空前の大ヒットとなった「男たちの挽歌」、テロリストとFBI捜査官の闘いを描いた「フェイス/オフ」(1997年)、ミッションインポッシブルシリーズの第2作目「M:I-2」(2000年)、三国志を題材に、有名な“赤壁の戦い”を2部構成で映画化した「レッドクリフ」(2008年、2009年)、福山雅治が出演したことで話題となった「マンハント」(2018年)など、ヒット作を次々と世に送り出してきたジョン・ウー監督。

今回、「ジョン・ウィック」シリーズの製作陣らとタッグを組み、全編セリフなしの壮絶なる復讐劇に挑んだ。

主演を務めたのは、リーアム・ニーソンと親子役で共演した「ラン・オールナイト」(2015年)、トム・ロブ・スミスのミステリー小説を映画化した「チャイルド44 森に消えた子供たち」(2015年)、ドラマ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」などに出演しているスウェーデン・ストックホルム出身の俳優ジョエル・キナマン。

「バットマン」や「スーパーマン」を生んだDCコミックスに登場する悪役たちがチームを組んで戦う姿を描いた「スーサイド・スクワッド」(2016年)で彼を知った人も多いだろう。

ちなみにニコラス・ケイジと共演した「シンパシー・フォー・ザ・デビル」も2025年2月28日に公開されたばかりのキナマン。本作では、目の前で愛する息子を殺され、復讐に燃える主人公ブライアンを演じている。

肉体を鍛え上げたジョエル・キナマンが復讐に燃える男を熱演!

映画冒頭、欧米ではクリスマスの定番になっている“アグリーセーター(クリスマスにちなんだデザインを用いたダサかわいいセーター)”を着て登場するブライアンにまず心を持っていかれた。クールな見た目なのに家族とクリスマスを全力でお祝いするブライアンがかわいすぎる。

そんな姿にほっこりしていると、ブライアンの住む街でギャング同士の抗争が勃発して不穏な展開に。ブライアンは自宅の庭で息子と楽しそうに遊んでいたが、そこに現れたギャングの撃った流れ弾が息子にあたり、目の前で亡くなってしまう…。

この映画のすごいところ…というかキナマンのすごいところは、声をなくしてからのブライアンのセリフが一切なくても表情や仕草から感情が伝わり、観る者の胸が締め付けられるところである。

また、復讐のために筋トレを始めたブライアンの鍛え上げられた肉体も、説得力があって美しいのでチェックしてもらいたい。

キナマンはセリフなしの芝居について「多くの人は、セリフがない映画はラクだと思っているかもしれない。確かに、セリフを覚える必要がないのはラクだけど、実際にはそれ以上に要求されることが多い。撮影前の準備は格段に増えるし、カメラの動き、目の演技、ボディランゲージなど、すべての要素がより重要になる。言葉がないことで、他のすべての表現方法に集中しなければならない」と語っている。

もちろんキナマンの演技だけではなく、映像でしっかりと見せていくジョン・ウー監督の手腕によって飽きさせない展開となっているのも大きい。

監督は「セリフのない映画を作るのはとても難しい。考えなければいけないことが普通の映画よりも多いし、何よりも視覚的な表現で物語を伝えなければならないから新しい撮影スタイルを模索する必要があった。音と映像を駆使し、言葉ではなく映像で語るんだ。これは決して簡単な作業ではない」と語り、「セリフなしで映画を作ることは、自分自身の中に新たなスタイルや“言語”を見つける挑戦を課すということ」と、本作で新たな試みをしたことを明かしている。

(C)2023 Silent Night Productions, Inc. All Rights Reserved


有名ラッパーのキッド・カディが“俳優スコット・メスカディ”として刑事役に挑む

ギャングのリーダー・プラヤを演じるのはメキシコ出身の俳優ハロルド・トレス。“この顔…なんか見覚えがある”と思っていたらリーアム・ニーソン主演の「MEMORY メモリー」(2022)でメキシコ連邦警察の刑事役を演じていた人だと気づいてビックリ!“刑事だったのにどうしてギャングになってしまったの?”としばらく混乱してしまった(笑)。

ちなみにリーアムがアルツハイマー病で記憶を失っていくベテラン殺し屋を演じた「MEMORY メモリー」もおもしろい作品なのでおすすめ。

(C)2023 Silent Night Productions, Inc. All Rights Reserved


そしてブライアンの息子の事件を捜査するデニス・ヴァッセル刑事を演じるのは、ラッパーや音楽プロデューサーとして活動するキッド・カディで、本作にはスコット・メスカディ名義で出演している。

実は彼、これまでにアダム・マッケイ監督の「ドント・ルック・アップ」(2021)やA24製作のホラー映画「X エックス」(2022年)、M・ナイト・シャマラン監督の「トラップ」(2024年)などに俳優として出演しており、自身が脚本とプロデュース、声優を務めたNetflixアニメーション「Entergalactic」を製作するなど多彩な人物である。

そんなスコット演じるデニス刑事が、本作でどんな活躍を見せるのか期待してほしい。(ジョン・ウー監督作品お約束の二丁拳銃もぶっ放します笑)

(C)2023 Silent Night Productions, Inc. All Rights Reserved


息子を殺され復讐スイッチが入ったブライアンは、筋トレを始め、ナイフと銃の扱い方をトレーニングしてスキルアップさせていく。

そのうえオンボロの車を購入し、無茶な運転の仕方まで習得するブライアンの狂気に満ちた目はゾクゾクするほどかっこいい。

クリスマス・イブにギャングを撲滅させるため、ストイックに準備をするブライアンを応援せずにはいられないのである。

そしていよいよクリスマス・イブになり、ギャングのアジトのような場所へ一人で乗り込んでいくブライアン。その姿は、麻薬王が支配する高層マンションで敵と死闘を繰り広げた映画「ザ・レイド」(2011)の主人公とも重なる。

果たしてブライアンは息子を殺めたプラヤを倒すことができるのか!? ぜひその結末を劇場で確かめてもらいたい。

映画「サイレントナイト」のメイン画像(C)2023 Silent Night Productions, Inc. All Rights Reserved


文=奥村百恵

(C)2023 Silent Night Productions, Inc. All Rights Reserved

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