「FIA世界ツーリングカー選手権」(WTCC)の第8戦「RACE OF JAPAN」の予選および決勝(オープニングレース、メインレース)が2017年10月29日、栃木県・ツインリンクもてぎで行われ、ホンダ・シビックWTCCを駆るノルベルト・ミケリスが大活躍!メインレースの優勝を飾った。
喧嘩レースの異名を持つ世界選手権
WTCCは、F1やWEC(世界耐久選手権)、WRC(世界ラリー選手権)と並ぶ、FIA(世界自動車連盟)が管轄する世界選手権の一つで、ツーリングカー(改造市販車)の世界一決定戦。世界10か国を転戦しながら、マニュファクチャラータイトルとドライバータイトルが争われている。ほかのレースに比べて激しいぶつかり合いが許容されており、「喧嘩レース」「自動車レースの格闘技」の異名を持つ。
今年は、「ホンダ」(CIVIC)と「ボルボ」(S60)の2大ワークスがしのぎを削る展開。各陣営とも3台体制で選手権に参戦している。
特に「ホンダ」はドライバーに経験抱負なティアゴ・モンテイロ、若き実力者ノベルト・ミケリス、そして今年から日本国内レースで活躍してきたベテランの道上龍を初のフル参戦させるなど、充実したラインアップで悲願のタイトル獲得に挑んでいる。第8戦のもてぎラウンドは、「ホンダ」のホームコースで行われる重要な戦いだ。
大雨の中、予選と決勝が同日開催。予選は「ホンダ」ミケルスがトップタイム
2017年10月23日に上陸した超大型の台風21号の影響により、レース車両や資材の搬入が遅延。そのため28日に行う予定であった予選が、翌29日の午前中に順延。予選と決勝レースが同日開催となった。
台風22号の影響により大粒の雨が降り、コースの各所に川が流れるようなヘビーウェットコンディションの中、朝9時30分から公式予選がスタート。タイヤから巻き上がる水煙で視界が悪い中、ノルベルト・ミケリスが唯一2分8秒台に入る速さでほかを圧倒。2位と3位にボルボ勢が続き、その後ろをホンダ勢が並ぶ。期待の道上龍も5番手に入り、今シーズン最高グリッドを獲得した。
WTCC特有の「チームタイムトライアル」で「ホンダ」勝利!
予選終了後には、今年から始まったWTCCで始まったMAC3が開始。「マニュファクチャラー・アゲンスト・ザ・クロック」の略であるMAC3は、各マニュファクチャラーから3台が選抜され、給油とニュータイヤを装着し、一斉にスタート。2周の合計タイムを競い、上位からマニュファクチャラーポイントが加算されるというものだ。自転車レースのチームタイムトライアルをイメージするとわかりやすいだろう。エントリーするのは、「ホンダ」と「ボルボ」。
まずはホンダ勢からタイムアタック開始。予選トップ通過のノルベルト・ミケリスを先頭に、2番目には今回ティアゴ・モンテイロの代役として「ホンダ」入りしたエステバン・グエリエリ、3番手には道上龍が続く隊列だ。ハイペースで飛ばすミケリスに、グエリエリは好ペースで食らいついていくものの、道上はウォータースクリーンを避けてか、グエリエリから少し遅れて走行。出したタイムは4分25秒354。
続くボルボ勢は、予選で2番時計を叩き出したニッキー・キャッツバーグを先頭に、ストール・ジロラミ、テッド・ビョークが続く。
キャッツバーグは飛ばしていくものの、ジロラミはこれについていくことができず1周目を終えた段階で、ホンダ勢からは1.5秒のビハインド。この遅れは詰まることなく、「ボルボ」は「ホンダ」に対し2秒536遅れでフィニッシュ。午前中のセッションは、「ホンダ」の活躍が光った。
ドリフト世界一が魅せた!
決勝レースが始まるまでの間、コース上では今年初開催されたFIA公認ドリフト世界一決定戦の優勝者である川畑真人と、そのチームメイトで国内最高峰のドリフト大会「D1グランプリ」に出場する末永正雄が、メインストレート上でドリフトパフォーマンスを披露。雨で滑りやすい路面コンディションであるにも関わらず、川畑は得意の「ケツ侵入」やロングドリフトで会場を沸かした。末永も川畑より角度の深いドリフトで対抗。最後には1000馬力を優に超える2台のR35 GT-Rがドーナツターンをして、ドリフトの魅力を伝えた。
メインスタンドの裏手では、「ホンダ」がこの夏から発売したばかりの新型シビックTYPE Rを展示したほか、歴代のCIVICのツーリングカーを並べて訴求。
中でも1987年に全日本ツーリングカー選手権で、排気量が倍以上違うBMWやスカイラインRSターボを相手に6戦全勝したワンダーシビックに、多くのモータースポーツファンが懐かしそうに見ている姿が印象的だった。
WTCCらしさが堪能できたオープニングレース
14時15分から行われたオープニングレース(11周)は、WTCCの魅力が満載の一戦であった。午前中に行われた予選Q2の結果からリバースグリッドで並び、朝から降り続く雨が一旦小康状態となりレースがスタートした。
ポールポジションスタートのケビン・グリーソン(ラーダ)は1コーナーでコースオフし大きく順位を下げる一方、2番手スタートのトム・チルトン(シトロエン)が好スタートを見せて首位に躍り出る。エンジン交換のペナルティにより、最後尾グリッドからのスタートとなった道上龍は大きく順位を上げ、1周めで10番手まで浮上。
3周目からは、WTCC名物「喧嘩バトル」が各所で勃発。まず上龍のリヤにニッキー・キャッツバーグが接触。道上のリヤは大きく流れてハーフスピンをし順位を2つ落とす。そして予選トップのノルベルト・ミケリスがネストール・ジロラミのオーバーテイクを試みるも、ブロックするジロラミと接触し、ミケリスが最終コーナーでスピン。6周目には、道上がロブ・ハフ(シトロエン)を攻めるもターン5で接触。道上はコントロールを失い、オーバーランして順位を落としてしまう。
2位争いもアーチャー、ビョーク、グエリエリの3台が絡む激しいバトル。9周目、2番手のアーチャーにビョークが仕掛けるも、その隙をグエリエリが突き、一気に2台を抜く。直後ビョークは反撃。グエリエリとビョークが、マシンをコーナーというコーナーでぶつけ合いながらのバトルをする、その間にアーチャーが2番手を取り戻し、グエリエリはビョークを下して3番手にアップ。
その中で我関せずの独走がトップのトム・チルトン。後続に対して13秒以上の大差をつけて、オープニングレースを制した。道上は10位でチェッカーを受け貴重な1ポイントを獲得した。
豪雨の中でのメインレースは赤旗により中断終了
15時30分、雨は一段と強まる中、セーフティーカー先導で13周のメインレースがスタート。2周目にセーフティーカーがピットに入ると、ポールポジションのミケリスを先頭に、キャツバーグ、ネストール・ジロラミと続く。
4番手はグエリエリ、そして5番手をランキング首位のテッド・ビョークと、自己最高位スタートの道上が争う展開。3周目、道上はV字コーナーで止まりきれずオーバーラン。グラベルにつかまり戦線離脱する。マーシャルの手を借り脱出するものの、そのままピットに戻りリタイアした。
雨はより一層強く降り出し、7周目にセーフティーカーがコースイン。セーフティーカーラン中でも2台が道上同様、V字コーナーのグラベルにつかまるなど、もはやレース続行は不可能な状況となった。これにより9周終了時点でレース中断を示す赤旗が降られ、メインレースはそのまま終了。ミケリスがポールトゥウインを飾り、ボルボ勢が2位3位を占める結果となった。
WTCC次戦は、2017年11月18日(土)・19日(日)の2日間、マカオで行われる。またツインリンクもてぎでは、2017年12月3日(日)にホンダのファン感謝祭を開催予定。入場料が無料になるほか、今年世界3大自動車レースの一つ「インディ500」を日本人で初めて優勝した佐藤琢磨が、その優勝マシンでデモンストレーション走行をする予定とのこと。ぜひ足を運んでみてはいかが。【横浜ウォーカー】
横浜ウォーカー編集部