“みなかみの森”から始まる、スターバックスの新たな挑戦とは?

東京ウォーカー(全国版)

スターバックスと群馬県みなかみ町が2025年4月21日、「利根川源流から始める豊かな森林と人を育む連携協定」を締結した。森林資源や自然環境を活かした持続可能な社会の実現を目指し、社会的課題解決に貢献するために協働するという。なぜ、森林環境保全の取り組みが必要とされるのか、スターバックスが何を目指すのか、締結式の模様と共に紹介する。

“みなかみの森”から始まる、スターバックスの新たな挑戦とは?


森林資源を町で守る、みなかみ町

日本の国土の約70%を占める森林は、国土の保全、水源の涵養(かんよう)、地球温暖化の防止、生物多様性の保全、木材や食料の生産など、私たちに多面的な恵みをもたらしている。その恵みを持続可能なものにするため、樹木の一部を伐採する「間伐」により森林環境が整えられる。林内の光環境がよくなり豊かな植生が育まれ、表土の流出を防いだり、多様な動植物が生育したりできるのだ。しかし、適切な管理が行われない「放置林」となると、本来の森の力を発揮することはできない。今、日本では、放置林の増加が、大きな社会課題となっている。

一方、みなかみ町は、町の面積の約90%を山林が占める、豊かな森林資源を持つ町。谷川岳などを有する三国山脈からの雪解け水は、関東地方の重要な水源である利根川水系に注ぎ、流域約3000万人の暮らしを支えているのだ。

【写真】みなかみ町役場から望む利根川。4月は雪解け水で水位が多くなっていた


その豊かな資源を守るため、みなかみ町では地域住民が主体的に森林・里山を整備する「自伐型林業」を推進し、15グループ100名以上もの人たちが取り組んでいる。また、地域の子どもたちに森林や木とのかかわりを主体的に考えられる豊かな心を育てる「木育」も推進。その先進的な取り組みから、人と自然が共生する持続可能なまちづくりを推進する自治体として「SDGs未来都市」にも認定されている。締結式には、みなかみ町町長の阿部賢一さんが出席し、「次の世代に、当たり前の自然を、子どもたちに引き継ぐことを使命と感じています」と想いを語った。

スターバックスは、こうした町の活動や想いに共鳴し、「利根川源流から始める豊かな森林と人を育む連携協定」を締結。締結式ではスターバックスを代表してマーケティング本部長の行定さんが挨拶。「みなかみ町は先進的な取り組みを、コミュニティレベルでつながって行っています。コミュニティの形成は私たちスターバックスも大切にしてきたこと。コミュニティで森林の環境を保全していることに非常に共鳴し、何かお役に立てる活動を共に行っていきたいと今回の締結に至りました」と語った。

店舗空間を通じて森と人のつながりを育むスターバックスの取り組み

では、どのような取り組みを行うのだろう。
まずは、現流域の森林を整備するために間伐した木々を、店舗で建材などとして多様に活用することから始め、それらを活かした店舗を実現するための準備を進めているという。

スターバックスのマーケティング本部長・行定さん


締結式では行定さんがその詳細を説明。間伐材の活用方法において、ポイントが2つある。

1つめは、“顔を見える木材の活用”を目指し、間伐材のトラッキングをできるようにすること。
「みなかみ町のどこの方が切り出してくださった木材がお店に届いているのかを、わかるようにします。お客様が森を、より身近に感じてイメージしていただくきっかけになる瞬間をつくり、少しでも森や環境に思いをはせていただきたいです」

2つめは、間伐材をできるだけ広く活用すること。
「普段であれば使われないようなサイズの木材、端材なども積極的に活用できるよう、いろいろな使い方を検討していきます。結果として、今はあまり需要がないとみなされている木材にも、十分価値があって活用ができる、新たな市場創造のきっかけになればと考えています」

協定締結をした、みなかみ町町長の阿部賢一さん(右)と、スターバックスの行定さん


「店舗で過ごす時間が、森と人とをつなぐ架け橋となるように、みなかみ町の皆さんと取り組んでいきます」と行定さん。スターバックスの新たな挑戦が始まる。

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