コーヒーで旅する日本/九州編|自分にとってなにが一番豊かなのか。考え、悩みたどり着いたありのまま。「nageia coffee」

東京ウォーカー(全国版)

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便利さよりも、豊かさを大切に

スリーシダーズコーヒーで2年ほど働き、志賀さんは奥さんの小由実さんとも相談し、生家がある久住町にUターンすることを決めた。

ハンドドリップで淹れたコーヒー(600円〜)。ミルク系ビバレッジはエアロプレスで濃く抽出

「コーヒーの店をやるなら昔から住み慣れた久住町を拠点にしたいと考えました。市街に暮らすことは、便利ではあるのですがどこか息が詰まると感じていて。自分にとって何が一番心地よくて、豊かな暮らしができるかを考えてみると、やっぱり心が休まる環境で大切な人と暮らすことが一番大切だと感じたんです。私のように久住町や竹田市で暮らすことを選ばれた方々にとって、当店のコーヒーがほんの少しでも豊かさの一助になれたら。そんな気持ちで竹田市に『nageia coffee』を開きました」

空き地の店舗も、1回目の移転の古民家も、現店舗もすべて竹田の城下町にて

オープンしたのは2020年10月。まだまだ世間はコロナ禍にあったこと、実店舗を持つには準備が足りなかったこともあり、ポップアップ的な屋台店舗からスタート。現在店がある同じ竹田城下町エリアの空き地で店を開いた。背伸びをしない、自分たちのサイズ感での開業。この無理のないスタートを切ったのが、本来の志賀さんらしさだと感じた。天候にも左右される屋外という環境は時に難しくもあるが、その厳しさ、不便ささえ楽しみ、慈しむ。志賀さんが市街地ではなく、竹田市という山間の小さな町に店を開いたのはそんな理由もあってのことだと感じる。

飾らず、背伸びせず、自然体で

空き地での屋台営業を経て、同じ竹田市の古民家に移転。そして2023年3月、現在の店舗となった。屋外から古民家、そして現地と、店舗は少しずつ広くなり、環境は整ってきたが、今の店舗には小さなイスとテーブル、そしてピアノ以外、余計なものはほとんど置かれていない。

【写真】外のベンチに腰掛けてコーヒーを飲むのも気持ちいい

「装飾はできるだけせず、空間としての余白や隙間は大事にしたい」と志賀さん。
その独特な感覚はコーヒーのラインナップにも見てとれる。生産国は中南米やアフリカが中心。プロセスはウォッシュトやナチュラルといったトラディショナルなものがほとんどなのは、日常的に飲める味わいで、暮らしに溶け込むコーヒーでありたいからというのが理由。この素朴な考え方も、自然体を大切にする志賀さんらしい。

オレクトロニカが手掛けた店舗の完成イメージ模型。「近い将来焙煎機も据えたい」と志賀さん

店があるのはJR豊後竹田駅の目と鼻の先のFORESTという複合施設で、もともと農機具等を扱う店舗をフルリノベーションしている。同じ施設内にギャラリーを構えるオレクトロニカという2人組の美術ユニットが「nageia coffee」の店舗デザインをしており、シンプルながらところどころにアーティスティックな要素が垣間見える。

奥さんは古賀小由実名義でアーティストとして活動。店で流れる楽曲を収録したアルバム「nagi」は店頭でも販売

そしてそんなステキな空間に流れる、小由実さんが手掛けたインストゥルメンタル。「nagi」というアルバムで、すべて小由実さんの祖父母の家にあった古いピアノを使って録音されたそうだ。

奥さんのInstagram( @sayumin530 )にはこう綴られていた。

「夫のお店nageia coffeeの店内に、こんな音があったらいいなあ。と想像して。
コーヒーの香り、雨の音、おしゃべりの声、季節の匂い
聴く人の日常のふとした間(ま)に柔らかく漂うような、音のインテリアのような。
そんなイメージで1年半、録音を重ねました」

心癒やされるコーヒー体験

このピアノの調べがまた「nageia coffee」にとてもしっくりくる。心を落ち着かせ、穏やかな気持ちにさせてくれるBGM、空間、そしてコーヒー。
なにも考えず、ただただ“ありたいようにあれる”時間が「nageia coffee」には流れている。

志賀さんレコメンドのコーヒーショップは「SAFARI COFFEE ROASTER」

「大分県大分市にある『SAFARI COFFEE ROASTER』さんは、大分にスペシャルティコーヒーを広めてきた一店です。オーナーロースターの秋吉さんは熱い人で、どのコーヒーを飲んでもこだわりや情熱を感じられると思います」(志賀さん)

【nageia coffeeのコーヒーデータ】
●焙煎機/PROBAT UG22(シェアロースト)
●抽出/ハンドドリップ(ハリオV60)、エアロプレス
●焙煎度合い/浅煎り〜中煎り
●テイクアウト/あり
●豆の販売/200グラム2100円〜


取材・文=諫山力(knot)
撮影=坂元俊満(To.Do:Photo)

※記事内の価格は特に記載がない場合は税込み表示です。商品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります。

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