お茶とサウナは相性がいいとされ、昨今、いろいろなサウナ施設でお茶を取り入れているが、茨城県古河市にある「SAUNA NAYA(サウナ ナヤ)」は、お茶農家が監修しているサウナ。そのこだわりぶりを堪能すべく、「SAUNA NAYA」に行ってきた。
1839年創業の吉田茶園が監修したサウナ
吉田茶園は煎茶や和紅茶を生産から販売まで一貫して行うお茶農家。肥料や農薬を極力使わず、一番茶のいい芽だけを使った高品質なお茶作りを行っている。各種茶葉はさまざまなコンテストなどで賞を受賞する実績を持つ。
一方で、「遊べる茶園」を掲げていて、茶畑見学や蔵・工場見学、テイスティング体験などができる茶園ツアーや、5、6月限定の茶摘み体験など、お茶をより身近に楽しめるプログラムを用意している。そんな吉田茶園の新たな取り組みが「SAUNA NAYA」だ。
「SAUNA NAYA」は本格的な薪サウナで、1日3部制、各回最大8名で利用できる。貸切利用と相席利用があり、貸切は文字通り、サウナ施設をすべて貸切にできるプランで利用人数によって料金が変わる(4名以下は固定料金)。今回は一般的に利用が多い相席利用で体験した。
相席利用は、定員は8名だが、文字通りほかの人と一緒に利用すること。「SAUNA NAYA」は、水着着用で男女一緒にサウナ、水風呂、外気浴を楽しむ施設のため、どんな人たちと一緒になるかは当日までわからない。今回は男性6名、女性2名での利用だった。
自然の中にある「SAUNA NAYA」。すぐ近くに電車の線路があり、時折、電車が走る音や踏切の音が聞こえる。都心から60分ほどのエリアというが、小旅行気分になる。古民家を改装した施設で、この雰囲気だけで「ようこそ」とお出迎えを受けたような気がしてホッとしてしまう。
受付で予約した旨を伝える。料金に含まれるタオルを貸し出してくれるのと、別料金でポンチョや追加タオルのレンタルもできる。利用時間は第1部が10時~13時、第2部が13時半~16時半、第3部が17時~20時となっている。自然の中のサウナなので時間帯によって風景が変わる。今回は第1部、第2部がすでに満席だったので、第3部で体験。最初に施設内を回って説明を受ける。薪の香りと音と薄暗い空間にとろける。
薪の香りと音と薄暗い空間にとろける
まず、トイレは1階にあるので先に済ませ、建物2階にある男女それぞれの更衣室で水着に着替える。ここには荷物を置く棚とドライヤー、スキンケアなどが置いてあるドレッサーがある。ドライヤーは無料、化粧水と乳液はあるので最小限のスキンケアはできるが、愛用品を持参するのもおすすめ。
1階にはシャワー室とサウナ室、屋外にシャワー、水風呂、外気浴スペースがある。サウナの途中で更衣室への行き来は避けたいので、タオルはあらかじめサウナ室前の椅子などに置いておくことをおすすめしたい。同じ場所に置かれた水分補給用の常温の水と温かいほうじ茶は飲み放題。マーキング用のバンドとコップが置かれているので、自分用の目印をつけて利用する。冷たい飲み物がお好みという人は持参しよう。
サウナ室はお茶室をイメージしているため、入口が低くなっている。中腰で中に入ると、中は広々としていて、定員の8名が全員入ってもゆったりした空間。実際はそれぞれのタイミングでサウナ室に入るため、全員がそろうことはあまりない。
お茶ロウリュでサウナ室に香りが広がる
サウナ室には薪ストーブが置かれていて、中に入った瞬間、薪の燃える香りに包まれる。一般的に薪の熱は柔らかく、実際の温度は高くても痛いような熱さはないと言われる。実際、ここのサウナ室も過ごしやすい。サウナ室がゆったりしているので座る場所によって温度の感じ方が変わる。上段が熱く、下段のほうが温度は低めなのは変わらないので、自分に合った場所を見つけるところから始めよう。
このサウナ室の一番の特徴はセルフロウリュ。サウナ利用者が自分でロウリュができるというのは、今となってはそれほど珍しくなくなったが、ここはお茶農園監修のサウナ。ということで、ロウリュはアロマ水などではなく、お茶、ともう1つ。ロウリュ用のバケツが2つあり、1つはほうじ茶、もう1つは地下水になっている。
ここがお茶の専門家のこだわり。実はロウリュでお茶を使用するサウナ施設はないわけではない。ただ、お茶をそのままサウナストーンにかけると、サウナストーンの熱さでお茶が焦げて香りが変わってしまうという。そのため、ここでは、先に地下水をかけ、サウナストーンの表面の温度を少し下げてからお茶をかけることを推奨している。こうすることで、お茶本来の香りがサウナ室内に広がる。お茶の香りに薪が燃える音や匂い、声にならない声が出る感じ。癒やされ、ただただ、ボーッとできる。
水風呂の気持ちよさに目覚める
サウナを出るタイミングは自分で決める。サウナを出たら、外に出てシャワーで汗を流す。目の前に2つの水風呂が待ち受ける。まずは、小さいワイン樽を使った水風呂へ。おひとり様サイズのこちら、意外と深いので背の低い人にはちょっと入りにくいが、思い切って中へ。地下水を使用しているため年間を通して約16度になっていて、しっかり温まった体にはしみる。これからの季節は外気温も高くなるので、普通に過ごしていても暑さを感じるし、汗もかく。このちょっと特別なシチュエーションも手伝って、苦手という人も水風呂デビューといきたいところ。
水風呂に入る時間も自分次第。秒で出るのでもいいので、地下水の気持ちよさを味わってほしい。どうしても無理という場合はシャワーで汗を流したあとは、そのまま“ととのい椅子”で外気浴。こころゆくまでゆっくり過ごす。目の前にはただ空が広がっていて、時間も日常も忘れてしまう。
ゆっくり休憩したら再びサウナ室へ。スタッフの方が途中で薪をくべに来て、サウナ室の温度もしっかり管理されている。ストーブの中で薪が燃える様子を見るだけでもリラックスできる気がする。いつまでも見ていられそうだが、熱くなってきたら退室。
シャワーで汗を流し、今度は大きな味噌樽を使った水風呂へ。直径約150センチのこの樽、実際に味噌を作る際に使われていたものというのから驚く。深さも155センチあり、とにかくデカい。身長を上回る水深で、潜りもOK。頭の上から足の先まで全身を地下水に浸ける感じ。これがかなり気持ちいい。ワイン樽の水風呂と違い、こちらは樽の壁面に足場があり、ゆっくり入ることができるので、とりあえず挑戦してほしい。
そんなこんなで、サウナ→水風呂→外気浴は数セット繰り返す。合間には用意されたほうじ茶と常温水で水分補給。入浴の前後以上にサウナのときはこまめな水分補給が大切。特に夏場はサウナの前から汗をかいていることも多いので、意識して摂るようにしよう。持ち込みもOKなので、好みのドリンクでさらに気分を上げるのもいい。
サウナ後にお茶をたしなむ時間も
サウナの予約時間は3時間だが、これには着替えの時間までが含まれているので、髪を乾かしたり、化粧をしたり、必要に応じて逆算する必要がある。同じ枠を予約した人はだいたい同じ時間にサウナを終える可能性があるので、混雑も頭に入れておきたい。ただ、今回は男性が多い回だったので、シャワーも更衣室も混雑はしなかった。男性は身支度の時間が短めなので、ギリギリまでサウナに入っていることが多いからだ。
レンタルしておいたポンチョは外気浴でも使うが、シャワー後にも使う。シャワーが1階で更衣室が2階にあるので、女性はポンチョのレンタルはぜひものでおすすめしておきたい。
着替えまですべて終了したら、受付にタオルを返却して終了。3時間あるのでゆっくりすごせるが、居心地のよさから気がついたらあっという間に時間がすぎていたという感覚。今回は第3部だったので、併設の古民家茶寮HANAREは営業を終了していたが、第1部、第2部の場合はサウナ後に茶寮を利用するのがおすすめ。
サウナとセットで事前予約しておくと安心。席だけの予約もできるが、要予約で1日15食限定の「季節の昼膳」(2200円)をサ飯にするのもいい。煎茶や和紅茶でサウナ後にゆっくり過ごしたり、お茶と一緒に「あんみつ」(1100円)や「季節の羊羹」(800円)と一緒に和のティータイムを楽しんだりできるのも、ここならでは。サウナ中もサウナ後もお茶の魅力を堪能できる「SAUNA NAYA」。サウナを通して新たなお茶の魅力に触れることができる、ほかにはない施設なので、ぜひ、時間を忘れて堪能したい。
取材・文=岡部礼子
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