自宅でゆっくり過ごす休日に最適なのは、読者の想像を超える傑作漫画だ。今回は、SNSで「想定外」「予測不能」なショートホラー漫画を発表している漫画家、誰でもないさん(@daredemonaidare)の『フューチャーブルーム』を紹介。作品の背後にある創作の意図や、アイデアが生まれる源泉について、作者の言葉を交えて掘り下げる。
ひび割れたスマホからの着信が繋ぐ未来と恐怖
物語は、26歳の独身OL、戸塚美菜がスマホを落とした出来事から始まる。画面がひび割れたそのスマホに、見知らぬ番号から電話がかかってくる。雑音の中から聞こえるのは「お母…さん…」「喫茶店…ブルーム…行…」という謎の声。この「ブルーム」は美菜の行きつけの喫茶店だったが、この奇妙な出来事以来、足が遠のいてしまう。
そんななか、美菜は喫茶店ブルームのマスターと偶然出会う。店に来なくなった理由を話すと、マスターは「未来の娘さんからじゃないですか?」と意外な解釈を示す。このロマンチックな言葉に心惹かれた美菜は、やがてマスターと結婚し、妊娠。女の子とわかり「咲(さき)」と名付けることを決めた幸せの絶頂期に、再びひび割れたスマホが鳴る。美菜が「もしもし?咲?」と電話に出ると、彼女から意外なメッセージが。
ハッピーエンドに見えた展開が一転、読者を不安にさせるラストに、SNS上では「母の為にパラレルワールドから着信?」「ブルームには行くなってことだったのか…?」といったさまざまな考察が飛び交った。予測不能な結末と多様な解釈を許容する物語は、誰でもないさんの得意とするところだ。
SNSでの反響が創作の原動力に
漫画をSNSに投稿するようになったきっかけについて、誰でもないさんは「知り合いの漫画家の方が、ある日Twitterに4ページの漫画をアップしたら、次の日にはフォロワーが1000人から5万人近くまで膨れ上がったんです。それを見て、自分も『描くしかない!』と思ったのがきっかけです」と語る。
最初に投稿した作品は、ある漫画のパロディ4コマだったと振り返り、「恐ろしいくらいウケなかったものの、描いていて楽しかった」と述べる。現在は「怖さが含まれるものを主軸に、いろんな題材を描いている」そうだ。
全エピソードが想定外の結末で話題となった単行本『リリースレッド 怪異の起こる街』について、誰でもないさんは「できるだけワンパターンにならないようにと意識しました。スピード重視なので絵のクオリティは“そこそこ”ですが、“そこそこ”なりに成り立つバランスには描いているつもりです」と、その創作姿勢を明かしている。
取材協力:誰でもない(@daredemonaidare)
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