働き方改革が進んだとはいえ、いまだに深夜の打ち合わせはあるし、残業は減らない。そんな職業は存在する。22時からクライアントとの打ち合わせ。土日の仕事が確実となり「何のために頑張っているのだろう」と、むなしさと葛藤を抱えた夜を描く、大町テラス(
@te_rra_ce
)さんの漫画「ご自愛ください」に1.5万のいいねが集まった。
結局は自分が頑張るしかない「自分が受けた理不尽をどう還元するのか?」
本作「ご自愛ください」は2021年に「チャンピオンRED」(秋田書店)に描き下ろした読み切り作品だ。広告制作会社で働いて15年の主人公は、残業に休日返上が当たり前の生活。自分が新人だったころ、頑張ってチケットを取った好きなバンドのライブに行けなかった記憶から、後輩には仕事のせいでプライベートを犠牲にしてほしくないと思う。自分一人で抱え込むことも美徳とはいえず、答えのない葛藤を繰り返し、モヤモヤする夜を描く。
作者の大町テラスさんに、本作を描いたきっかけについて聞くと「産後に開始した『ハラがへっては育児はできぬ』(秋田書店)の連載中に『ごはんとサウナの描写を入れて何か読み切りを描きませんか?』と、ご依頼をいただきました」と教えてくれた。大町さんが本作を描き下ろした2021年はコロナ禍の最中。「閉鎖的なムードのなかでそれでも働く主人公の話にしようと思いました」と話す。
「自分が受けた理不尽をどう還元するのか?」が本作のテーマ、と言う大町さん。「たとえば『パワハラ上司に受けたパワハラを後輩に同じようにするパワハラ上司になるのか?』もしくは『パワハラは自分の世代で断ち切って優しい先輩になるのか?』みたいなことです」とわかりやすく教えてくれた。
本作をX(旧:Twitter)に載せたことでたくさんの方から反応があったそうだ。大町さんは「『パワハラを断ち切るために、頑張る美学』を描いていることに気づいてくださっている読者の方が多くいたことに励まされました。一方で、『主人公の行動が過度に自己犠牲的で不快だ』という批判的なコメントもありました」と反響の大きさを語る。ぜひ読んでみてほしい。
取材協力:大町テラス(@te_rra_ce)
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