ここは地獄か!?夏でも凍える“寒の地獄”と灼熱の“暖の地獄”のパワーがスゴい【九州の日帰り温泉vol.5】

東京ウォーカー(全国版)

「寒の地獄温泉」という名を耳にしたことはあるだろうか?字面からしておどろおどろしい雰囲気を醸し出している温泉名であるが、“寒の地獄”という名の通り、体の芯からブルブルと震えあがってしまう温泉が九州にあるという。暑い夏にも関わらず、寒くて震えが止まらなくなる“寒の地獄”とは一体…?

“震え”が始まるまで入浴!?全国でも珍しいと言われる冷泉を持つ「寒の地獄旅館」の魅力

その温泉は、大分県の山深き場所にあった。標高1100メートル、九重の表玄関である三俣山・星生山の美しい裾野の北側に位置し、人気のドライブロードである「やまなみハイウェイ」沿いに「寒の地獄」と書かれた看板がある。そこから緩やかな坂道を下った先に「霊泉 寒の地獄旅館」は一軒ポツンと佇んでいた。江戸末期に開湯した秘湯で、創業は昭和3年という歴史ある温泉宿だ。

【写真で見る】全国的にも珍しい冷泉を持つ寒の地獄旅館画像提供:寒の地獄旅館


寒の地獄旅館で日帰り利用できるのは、「冷泉」と温かい温泉「互久楽湯」の2つである。冷泉棟には男女別の更衣室と男女混浴の冷泉の浴槽が2つあり、そのすぐそばに「暖の地獄サウナ」と「ととのえ暖房室」が備わる。冷泉は混浴のため、男女ともに水着(男性はトランクス可・女性はTシャツに短パン可)などを着用して入浴するスタイルだ。水着やTシャツは販売もしているが、数に限りがあるので持参した方が無難である。「寒の地獄」「暖の地獄」それぞれどのようにして入浴するのだろうか?気になる入浴方法を、寒の地獄旅館のご主人・武石さんに聞いてみた。

冷泉棟には飲泉スペースもある画像提供:寒の地獄旅館


――地獄のように冷たい冷泉ですが、入浴についてアドバイスをお願いします。

入浴して最初の1、2分間は実際の泉温より冷たく感じ、皮膚に刺激を感じると思いますが、これは含有薬分の関係ですから3分くらい経ちますと刺激を感じなくなって体も楽になります。それからは各自の体力と忍耐で入浴時間はまちまちですが、ある程度の時間が経ちますと震えが始まりますので、それを合図に浴槽からあがってください。

浴槽には砂利や石が敷き詰められ、そのすぐ下から美しい冷泉が湧き出る画像提供:寒の地獄旅館


――冷泉からあがったあとは、灼熱の“暖の地獄”へ向かうのでしょうか?

はい。このとき、体を拭かないでそのまま行ってください。別室の「暖の地獄サウナ」で十分に全身をあぶり込み(※体についた水滴を拭かずに成分を体の中へ浸透させるように乾かす)してください。入浴時間の倍の時間は暖を取ってください。皮膚疾患の方は直接の火熱は避けたほうがよいですが、ほかの疾患は火熱であぶり込むほど効果があります。これは医学的にも大変効果のある療養法だといわれております。

薪ストーブのある「暖の地獄」。温泉成分をあぶり込むためにも、体は拭かずに直行しよう画像提供:寒の地獄旅館


――「暖の地獄サウナ」は2023年にオープンなんですよね。このサウナの登場によって冷泉のおすすめの季節に変化はありましたか?

薪ストーブが備わる「暖の地獄サウナ」が仲間入りしたことで、それまで夏季限定だった冷泉が一年中入れるようになりましたので、どの季節と言わず通年おすすめです。いろいろな季節の冷泉をお楽しみください。

――「互久楽湯」という温かい温泉もあるんですよね?

はい。冷泉を薪で沸かし、源泉をかけ流しで提供している温泉があります。冷泉サウナ利用の方は1時間無料で入浴できますよ。

互久楽湯には切石タイプと桧タイプの大浴場があり、男女日替わりとなっている画像提供:寒の地獄旅館


――近年続くサウナブームや「サウナシュラン2023」に選出されたことなどで、客層に変化はありましたか?

はい。日帰り入浴のお客様に“サウナー”の方が増えました。

屋外には「ととのえデッキ」も完備画像提供:寒の地獄旅館

通常のサウナの楽しみ方は、サウナで汗だくになるまで温まってから冷水につかるという順番がセオリーだが、「寒の地獄旅館」はその真逆。冷泉で震えが始まるまで冷やしたあとに、灼熱のサウナであぶり込むというもの。「サウナシュラン2023」でも審査委員から高評価を得ており、サウナーたちもこの珍しいスタイルを目当てに全国から訪れている。2023年から通年楽しめるようになった冷泉だが、まだ経験したことがない初心者には暑い夏の入浴を個人的にはおすすめしたい。筆者も“寒の地獄”を初めて経験したのは夏だった。周りの熟練者(猛者)たちに舌を巻きながらブルブル震え、早々に冷泉から離脱し暖房室へ逃げ込んだ忍耐力のなさが思い出されるが、興味を持った人はこの夏ぜひ挑戦してみて!温泉ファン・サウナファンにとってここは、地獄ではなく極楽といえよう。

【霊泉 寒の地獄旅館】
大分県玖珠郡九重町大字田野257/0973-79-2124
〈冷泉(サウナ付き)〉
■入浴料(2時間):高校生以上2500円、中学生1000円、小学生以下500円
■営業時間:9時~18時(最終受付16時)
※木曜日は11:00から営業開始
※火曜日は最終受付14:00、16:00で営業終了の場合あり
■大浴場の種類:内湯混浴1
■泉質:単純硫黄冷鉱泉
■湯の効能:皮膚疾患、慢性関節リウマチ、胃腸病、糖尿病、婦人病疾患、喘息など
〈温泉(温かい湯)のみ〉
■入浴料(1時間):中学生以上700円、小学生以下500円
■営業時間:10時~15時(最終受付14時)
■大浴場の種類:内湯男1女1
■泉質:単純硫黄冷鉱泉
■湯の効能:皮膚疾患、慢性関節リウマチ、胃腸病、糖尿病、婦人病疾患、喘息など

湯上がりは囲炉裏でホッとひと息画像提供:寒の地獄旅館

取材・文=大庭かおり

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