子どもは親を選べない。自分の親がよその親と違うと気づくのはいつだろうか?朝起きたら母親はいない。保育園児なのに友達の家へ朝ごはんを食べに行く。そんな「放置子」のような子ども時代を過ごしてきた漫画家・魚田コットンさん(@33kossan33)の自伝漫画『家族やめてもいいですか?』を紹介し、本書に込めた思いを聞いた。
「うちの親が毒親か?」作者が抱く複雑な感情
魚田さんの母親は、まだ保育園児の娘を置いていなくなることが多かった。朝起きると母親がいないため、一人で帰宅を待つ日々。ある日、また母親がいないことに気づき、同じ保育園の子の家へ。友達の家で朝ごはんを食べさせてもらい、保育園まで連れて行ってもらう、そんな日常だった。父親はあまり家に帰らず、母親は特定の男性と会うことも。魚田さんの記憶では、周囲の大人は「冷たい人と優しい人」に二極化していたという。純粋だった魚田さんは、それが「うちの当たり前」だと思っていた。
本作を描くきっかけは、ブログで描いていた「母の再婚相手がいろいろとアウトだった話」を担当さんが見つけたことだった。その後、ブログ連載した「うちの家族ってもしかしてオカシイですか?」が書籍化を目指すことになったという。
「うちの親が毒親か?と言われると今でも『毒親なのかな…?』と微妙な気持ちになる」と語る魚田さん。「毒だ」と思わずとも、「少し母と距離を取ろう」と思えるようになったのは、結婚して自分の家族ができてしばらく経ってからだったという。
初めての書籍制作で、漫画制作そのものも初めてのコマ割りだったため、「この描き方で正解かな?」と常に戸惑っていたと明かす。
「私ってけっこう酷い生活してたんだな」と気づけた
また、自身の半生を描いたため、同時期に別の雑誌で連載していた『母の再婚相手を殺したかった。性的虐待を受けた10年間の記録』との差別化を心がけたという。「私の半生を描いたものなのでどうしても被るところはあるが、それぞれのテーマは違うつもりで書いている」と説明した。
制作前と後で気持ちの変化はあったか尋ねると、「自分の半生をさらに振り返ることになったので『私ってけっこう酷い生活してたんだな』と気づけた」と語る。ブログで描いていた段階では、家庭環境はそこまで酷いとは思っていなかったそうで、「改めて気づけたのはよかった。冷静に自分のことを俯瞰して見ることができたおかげか、人に対しても少し寛容になれた気がする。以前は、もっと自分にも他人にも厳しかった」と、制作を通じての変化を述べた。
魚田さんが小学生の時に両親は離婚。母親の再婚後、新しい父から性的虐待を受け男性不信となる。何度も家族を辞めたいと思った魚田さんの渾身の一冊だ。
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取材協力:魚田コットン(@33kossan33)
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