映画『We Live in Time この時を生きて』を鑑賞。“限りある時間”を自分らしく生きた女性と、彼女を愛し抜いた男性の物語を描いた感動作

東京ウォーカー(全国版)

2025年6月6日に全国公開された『We Live in Time この時を生きて』で夫婦役に挑んだフローレンス・ピューとアンドリュー・ガーフィールド。公開前に試写で観た本作の感想を紹介(以下、ネタバレを含みます)。

映画『We Live in Time この時を生きて』のメイン写真(C)2024 STUDIOCANAL SAS – CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION


【ストーリー】
新進気鋭の一流シェフであるアルムート(フローレンス・ピュー)と、離婚して失意のどん底にいたトビアス(アンドリュー・ガーフィールド)。何の接点もなかった二人は、あり得ない出会いを果たして恋に落ちる。自由奔放なアルムートと慎重派のトビアスは何度も危機を迎えながらも、一緒に暮らし娘が生まれ家族になる。

そんな中、アルムートの余命がわずかだと知った二人が選んだ型破りな挑戦とは…。

【写真】夫婦役で共演を果たしたフローレンス・ピューとアンドリュー・ガーフィールド(C)2024 STUDIOCANAL SAS – CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION


アメコミヒーロー&ヴィランを演じた人気俳優二人の熱演が心を震わす

本作のメガホンをとったのは、『ブルックリン』(2015年)が、アカデミー賞で作品賞を含む3部門、英国アカデミー賞で6部門にノミネートされ、英国アカデミー賞英国作品賞に輝いたジョン・クローリー監督。

『ブルックリン』は、1950年代を舞台に、故郷のアイルランドを離れて新天地NYで暮らし始めた若きヒロインをシアーシャ・ローナンが魅力的に演じて高い評価を得た作品。

そんなクローリー監督が今回タッグを組んだのは、フローレンス・ピューとアンドリュー・ガーフィールドという、アメコミ映画などの大作映画でメインキャストを務めてきた人気俳優二人。

フローレンス・ピューはアリ・アスター監督の『ミッドサマー』(2020年)で世界中の映画ファンから注目される存在に。そのあとすぐに公開されたグレタ・ガーウィグ監督の『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(2020年)ではアカデミー賞助演女優賞にノミネートされ、若手人気俳優の仲間入りを果たした。

近年ではマーベルシリーズの『ブラック・ウィドウ』(2021年)やクリストファー・ノーラン監督の『オッペンハイマー』(2023年)、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『デューン 砂の惑星PART2』(2024年)といった大作映画に出演し、『サンダーボルツ*』(2025年)では『ブラック・ウィドウ』で演じた暗殺者エレーナを再び演じた。

本作では、新進気鋭の一流シェフだったが病によって余命わずかと医者から宣告されてしまうアルムートを演じている。病と戦いながらも、娘と夫を愛し、料理を愛し、自分らしく生きる女性を見事に体現している。

(C)2024 STUDIOCANAL SAS – CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION


アンドリュー・ガーフィールドは『アメイジング・スパイダーマン』(2012年)の主役に抜擢され人気を博し、世界中に知られる存在に。

そのあとメル・ギブソン監督の『ハクソー・リッジ』(2016年)でアカデミー賞主演男優賞とゴールデングローブ賞最優秀主演男優賞にノミネートされ、『tick, tick...BOOM! チック、チック…ブーン!』(2021年)ではアカデミー賞主演男優賞にノミネート&ゴールデングローブ賞最優秀主演男優賞を受賞し、演技派俳優として高く評価された。

そのほかのおもな出演作に『沈黙 -サイレンス-』(2016年)、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021年)などがある。

本作では、シリアル会社に勤めながら、重い病を抱える妻を支え、寄り添う優しい夫のトビアスを演じている。

さまざまな役柄に挑戦してきた人気俳優二人が、最高の人生を送るために支え合い、愛し合いながら生きる夫婦を演じる姿に心が震えた。

(C)2024 STUDIOCANAL SAS – CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION


時間の流れをバラバラにした構成が斬新、切なさが増す展開に引き込まれる

物語は、アルムートとトビアスが恋に落ち、子どもが生まれるという幸せな日々から始まる。ところが、数年前に寛解したアルムートの癌が再発するという悲しい現実に突き落とされてしまう。

アルムートは「苦しい治療に耐えるだけの1年間より、最高に楽しくて前向きな半年間を過ごしたい」とトビアスに語り、世界最高峰の料理コンクール“ボキューズ・ドール”に出ないかという元上司からの連絡に、思わず前向きな返事を返す。

(C)2024 STUDIOCANAL SAS – CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION


そして場面は変わり、二人が知り合ったころの話へ。実はこの二人、交通事故の被害者と加害者で、アルムートが運転する車にトビアスが轢かれたのが出会いのきっかけだったのだ。

事故のお詫びにアルムートが自分のレストランにトビアスを招待し、そこから二人の仲は深まっていく。

(C)2024 STUDIOCANAL SAS – CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION


そしてまた場面は変わり、3歳になった娘にアルムートとトビアスが病気のことを話すシーンへ続いていき…といった感じで時間の流れが前後して進んでいくため、回想シーンのような雑さや妙なエモさがなく、物語にスッと入っていけるように感じた。

また、娘が生まれていることがわかっている状態から出会ってまもないころの二人を見ると、“子どもを持つこと”に対する考え方に違いがあったのかと驚かされ、そのあとに娘の出産シーンも描かれるため、いろいろな意味でグッときてしまった。

こんな風に時間軸をバラバラにして描かれているからこそ、後半の展開がより切なく感じられたように思う。

(C)2024 STUDIOCANAL SAS – CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION


フローレンス・ピューとアンドリュー・ガーフィールドの魅力が詰まった作品

アルムートとトビアスを演じたフローレンス・ピューとアンドリュー・ガーフィールドの話に戻ると、二人は個人的に大好きな俳優である。

フローレンス・ピューのことは普段「ピューちゃん」と勝手に呼んでいるのだが、ピューちゃんが以前Instagramのストーリーズにアップしていた料理動画を見ていたため、今回のシェフ役はまさにハマり役ではないかと最初に思った。

ピューちゃんが料理する姿はとても豪快で、一流シェフという感じではなかったけれど(笑)、どの料理もおいしそうで“この人は本当に料理が好きなんだなぁ”なんて思ったのをこの作品を観て思い出した。

ピューちゃんのインタビュー映像やテレビ番組に出演する姿を見ると、天真爛漫で茶目っ気がありつつ、どこか真面目な部分もあって、人とコミュニケーションを取る能力に長けた人という印象を受ける。

どこかアルムートとも似た雰囲気があり、ほかの作品とはまた違ったピューちゃんの魅力あふれたお芝居を本作で見ることができた。

(C)2024 STUDIOCANAL SAS – CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION


アンドリュー・ガーフィールドのことは勝手に「ガーくん」と呼んでいて、彼が『アメイジング・スパイダーマン』で演じたピーター・パーカー(とスパイダーマン)が大好きだったし、そのあとに『アンダー・ザ・シルバーレイク』(2019年)や『メインストリーム』(2021年)といった小規模でユニークな作品に出演しているところがおもしろくてずっと追いかけている。

本作でトビアスがアルムートを見つめる目がとっても優しくて、ガーくんがこの役を演じてくれてよかったとキャスティングに感謝した。

物語の話に戻ると、後半にアルムートがトビアスに内緒で“ボキューズ・ドール”への挑戦をするシーンがあるのだが、アルムートが病気の回復よりも料理に熱中してしまう理由が明かされた瞬間に再び涙腺崩壊。

自分らしく最期まで生きようとするアルムートを応援しながら鑑賞し、観終わったあとは“やりたいことがあるなら後悔しないように取り組まなければ…”と思わされた本作。ぜひ劇場での鑑賞をおすすめしたい。

(C)2024 STUDIOCANAL SAS – CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION


文=奥村百恵

(C)2024 STUDIOCANAL SAS – CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION

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