5000人、2000人。この数字が何を意味するか? ずばりH&M銀座店、原宿店のオープン時にできた行列の数である。スウェーデン発のアパレルブランド「H&M」。現在世界30か国で約1600店を展開し、衣料品の売り上げは世界3位を誇るほどの人気。
新しいもの好き、熱しやすく冷めやすい日本人。こと若者に関してはその傾向が強くはなるが、低価格をひとつの売りにしているブランドひとつにこの騒ぎとは。誤解を恐れずに言えば、ファッションに敏感な若者たちにとってユニクロやGAPなどの大量生産型の低価格アパレルブランドは、アンダーウェアや部屋着レベルだったはず。ではなぜ、ここまで注目をされたのか? スタイリストの柏木作夢氏(スパークル)に聞いてみた。
「H&Mには、単なるバリューショップという概念がないからだと思います。デザイン性の高さやクオリティの高さが海外で人気だったので、一流ブランドが上陸したのと同じ感覚。だけど価格帯は驚くほど安いから誰もが注目することになったんだと思います」
確かにあの人の集まり方は、トップブランドのセールやバーゲン時と似ている。しかし、いくらデザイン性が高いとは言え、他人と同じものを着るということに抵抗を感じないのだろうか?
「H&Mは確かに大量生産ですが、商品の回転率が早いので他人とカブることが多々あるわけではないと思います。ユニクロやGAPなどはどちらかというとベーシックなアイテムがほとんどですが、H&Mに関してはデザインに遊び心のあるものが多いのでそのへんが大きな違いと思われます」
なるほど。カジュアルファッション業界的に棲み分けはできていると。では、数年前におしゃれ好きな若者に大人気となった、セレクトショップの現状はいったいどうなっているのだろうか?
「ここ最近のセレクトショップの商品のラインナップはどんどん本格的になっていて、価格帯も上がっています。海外からのセレクトも積極的に取り入れてどちらかというと、本当に好きな人にしか手の出せないものも多々あります。規模の大きいセレクトショップは、やはり今も昔も年齢層問わず人気は健在です」
果たしてこの人気が定着するのかは、しばらく様子を見る必要はあるが、来秋にはH&M渋谷店、H&M新宿店が立て続けにオープンする。息をつかせぬ間に店舗数を拡大していく戦略だ。低価格、デザイン性、回転率といった今までの日本にないシステムを武器にしばらくは日本を騒がし続けていくだろう。【東京ウォーカー/町田拓郎】