「役者がいるところが舞台だ!」と、レストランやギャラリーをはじめ、さまざまな場所を舞台に演劇を披露する東京のパフォーマンスユニット「円盤ライダー」が、この秋名古屋にやってきた。そんな彼らの魅力を演劇ファンのライター・河野がご紹介!
どんな会場も舞台に!彼らの演劇を見てきた!!
今秋「2017秋 星が丘フリンジ 演劇祭」で上演された円盤ライダーの「66」。この演劇は、円盤ライダーの役者3人に加え、名古屋を拠点に活動する役者・憲俊などをキャスティングした作品ということでワクワクしながら会場へ向かった。
この演劇祭の会場となったのは、これから演劇が行われるとは思えない、至って普通のボウリング場。思わず場所を間違えたのでは!?と戸惑いを感じながら、先に進むと辿りついたのは倉庫のような場所。観客席だけが用意されたシンプルな空間だった。「こんな場所でどんな芝居が見られるのだろう…。」と期待が高まる。
上演時間が近づくにつれて人がどんどん増えていき、開演前には満席に。仕事帰りのサラリーマンや、若い女性など客層の幅広さを感じた。
そして前説が終わり、会場の照明が落とされる。一般的な劇なら、シーンとした静かな“間”ができるが、ボウリング場の倉庫が会場なだけに、外からガヤガヤと雑音が聞こえる。その雑音が、心地よい音となって臨場感と新鮮さを感じた。
この演劇祭で行われた作品は、痛快起業コメディ。ストーリーは夢や友情だけでなく、離婚、親権問題などがコミカルに盛り込まれた内容だった。
上演中は役者たちのとにかく熱く、滑稽な演技に笑いが止まらない!気づくと私の表情は彼らにコントロールされ、ほかの観客も彼らの芝居に夢中になっていく様子が感じられた。
彼らの演劇の注目すべきところは観客との距離だ。劇場で見る舞台以上に臨場感がある。近いからこそ感じる、彼らの息づかいや汗。まるで役者とコミュニケーションが取れているような不思議な感覚が味わえる。
円盤ライダーにインタビュー
彼らの舞台で完全に心を奪われた私は、舞台終了後、突撃インタビューを敢行!円盤ライダーの代表・渡部将之氏が快く受けてくれ、「初めて見る人に『演劇ってこんな、劇場じゃなくても見られるんだ』とか、そういう表現の幅広さを感じて欲しい。あと、やっぱり“生のライブ”だからこそ伝えられるアツいエネルギーを感じて欲しいですね」と円盤ライダーのコンセプト・演劇スタイルについて語ってくれた。
そんな円盤ライダーの演劇について、今回共演した憲俊にも話を聞いてみると「彼らの演劇は、これからの日本がとても大事にするべき演劇だと思っています」と即答!いつも観客が利用する場所を使うことで受け入れやすく、音響や照明もないので、役者にとって“手が出しやすい演劇スタイル”とのこと。彼らの話を聞いて、このスタイルが広まれば、演劇はもっと身近な存在になっていくだろうと感じた。
今年初開催となった「円盤ライダー」主催の「星が丘フリンジ」は、来年の開催も決定しているという。演劇が好きな人はもちろん、舞台を見に行くことがあまりないというビギナーの人もきっと楽しめる「円盤ライダー」の舞台。今後の彼らの活動に注目だ。【東海ウォーカー編集部】
河野琴美