ジャム業界のトップシェアメーカーとして名高いアヲハタ。その旗艦商品である低糖度ジャムの「アヲハタ 55」が2025年に誕生55周年を迎え、2月にリニューアルを果たした。一番の大きな変化はイチゴジャムが春夏・秋冬と季節によって異なる味わいの商品を用意するようになったこと。これはアヲハタにとって初めての試みであり、ジャム業界の中でも異例のことだという。リニューアルの意図と狙いがどこにあるのか。アヲハタ株式会社取締役藤原かおりさんに話を聞いた。
「トップメーカーとしての責務」100周年を見据えて全面リニューアルを実施!
そもそも「アヲハタ 55」はどんなジャムなのだろうか?
「1970年に『アヲハタ 55 オレンジママレード』が日本初の低糖度ジャムとして発売されたのが始まりです。当時のジャムは糖度65度以上のものが主流でしたが、55度という低い糖度で仕上げることで、フルーツの風味を味わえるジャムだと支持を集めました。現在はさらに低い45度前後になっています。フレーバーも豊富で、定番のイチゴ、オレンジママレード、ワイルドブルーベリー以外にもイチジク、レモンママレード、白桃&グァバなど多彩なラインナップをそろえています」
健康志向の高まりも追い風となり、「アヲハタ 55」は会社を代表する商品へと成長。55周年を迎えるにいたったが、順風満帆だとは考えていないという。
「ジャム市場は400億円程度。2020年のコロナ禍で内食化が進んだことで盛り上がりを見せましたが、ここ数年は微減が続いていました。昨年、アヲハタでは春にポップアップカフェを実施したり、音楽フェスティバルでのサンプリングを行ったりしたことでSNSでも情報拡散が見られ、ジャム事業については前年比105%というところで着地をすることができました。とはいえ、安泰とはいえません。100周年という未来を見据えたときに、今までどおりで大丈夫か?という思いがありました。また、アヲハタは市場の約30%のシェアをもらっており、ジャムのトップメーカーであります。トップメーカーであることの責務として、自分たちの利益だけのことを考えるのではなく、市場全体を牽引していく、そういう考え方が必要だと思っています」
そこで今回のリニューアルでは味作りから見直していったという。
「人は季節によって求める味が変わると言われています。『アヲハタ 55』の中でも一番人気であるイチゴについては、季節に合わせた味わいを作り出すために、春夏と秋冬で原料のブレンドと製法を変えました。春夏限定の『さわやかブレンド』は、従来品よりも少し先に風味が立ち上がり、早く消えるためすっきりとした味わいを感じる設計になっています。秋冬限定の『濃厚ブレンド』はイチゴの甘さに余韻が残る、濃厚で芳醇な深みのあるものに仕上げています」
アヲハタでは“農産加工品の7割は原料で決まる”というモットーがあり、原料調達には強いこだわりがあるという。
「現在、原料調達先は世界各地に広まっており、毎年現地の農家と共に畑の状態を確かめながら、よい原料の確保・調達を行ってきました。イチゴに関しては、これまでは中国山東省のイチゴをメインに使用してきましたが、今回チリのイチゴを採用し、より原料の持続的な安定調達が可能になりました。チリのイチゴは香りがさわやかで華やか。いきいきとした赤色で果肉の中まで赤みがあり、果肉もしっかりとしているということで、ジャムにするのに最適なんです。といっても、単体の品種でバランスのよい完璧なイチゴというのは極めて稀です。味のいいイチゴ、食感がいいイチゴ、香りのイチゴ…とそれぞれの特徴をもった品種を組み合わせることで、ベストなジャムを作り出しています」
8月21日(木)には秋冬限定の「濃厚ブレンド」の出荷がスタート。商品の切り替えが行われる8月下旬は両方の味わいが楽しめるチャンス!2つのイチゴジャム味わいの違いを楽しんでみてはどうだろうか。
食パンの最強お供でありつつ、新たなオケージョンを提案
季節に合わせた展開はイチゴジャムのみだが、シリーズの全フレーバーに対し、食パンとの相性の追求も行った。
「朝食の食べ物はパンが最も多く、35%を占めると言われています。これからもパンの最高の相棒として召し上がっていただくために、食パンと合わせたときのフルーツの濃さをより強く感じる設計にし、食パンとの相性をアップさせました。新しいキャッチコピーは『厚く白いパンのために生まれた made for sliced white』です」
一番ジャムが使われるシーンにおいて、さらにジャムを食べたくなるような味設計にしつつ、新しいオケージョンの開発も必要だと考えている。
「ジャムは朝食で食べることが多いですが、ここをほかのオケージョンで取り入れてもらえることで市場を拡大していくことができると考えています。たとえば、簡単なところだと、ジャムをロールサンドの具材にしておやつに食べてもらったり、炭酸水で割ってスカッシュにする、というようにいろいろなシーンでジャムを使うことができるという認知拡大を図っていきたいですね。公式サイトでは、アヲハタの商品を活用したレシピを公開していますので、チェックしていただけたらと思います」
オケージョンへの拡大に向けて、リニューアルと合わせて個食タイプの販売もスタートした。13グラムのスティックが4本入ったもので、イチゴ、オレンジママレード、ワイルドブルーベリーの3アイテムをラインナップしている。「アヲハタ 55」は、開栓前は12カ月の賞味期間があるが、開栓後は空気中のカビの胞子が紛れ込むことがあるため、開栓後は冷蔵庫(10度以下)で保存し、2週間程度で食べ切ることが推奨されている。瓶詰めタイプだと一番小さいサイズが150グラムなので、2週間で食べ切るのが難しい、という人にぴったり。スティック状なので絞り出せるのも便利だ。
アヲハタでは2028年ビジョンとして「フルーツで世界の人を幸せにする」を掲げている。ビジョン達成に向けてジャムという大きな屋台骨を強化していく取り組みに今後も注目だ。
取材・文=西連寺くらら
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