黒い背景をベースにスクロールしながら読み進める「縦読み漫画」が怖い。始まりは「ある音源を使用すると、そのサイトや動画が次々に消える」という噂の検証だった。音源を入手し、実際に聞いてみると…?今回は、R@B級森メタル(@zombie666_R)さんが描く『仮ロケ(訳有品)シリーズ』のなかから『あるフリー音源の噂』を紹介するとともに話を聞いた。
人間が制作したものだからこそ、意図が分からずに怖い…!
「間の取り方が絶妙…!」「読み進めるほどにじわじわ怖かった」などのコメントが届く『あるフリー音源の噂』。オカルト検証ライターがとある噂を検証していた。それは、ある素材サイトに投稿されていた楽曲で配信で使ったり、インディーズゲームで使うと動画が凍結されるという。
噂を検証するためサイトを追っていると、「音源を送りましょうか?」というDMが届く。現物をメールで送ってもらい直接聞いてみると民謡のような、呪文のような声がする。もっと詳しく知りたくて、音楽に詳しい友人を呼んだ。すると、「お経のような電子メロディーの音の奥で何かしゃべっている声がする」という。音源データを各パートに分割してあるデータはないか?とDMをくれた人に連絡をとると、各パートに分かれたデータを送ってくれた。
4つのファイルをそれぞれ聞いていくと、ひとつのデータに「市営住宅屋上からの転落死」「飲酒運転の乗用車衝突による轢死」「自宅マンション火災により窒息死」など名前と死因を読み上げるものがあった。18名の名前が読み上げられた後、DMをくれたアカウントは消えていた。
「どういうつもりでこれを作ったのか?作者は何者なのか?」答えがわからない不気味さが残る
――ホラー漫画を多く描かれていますが、どのようなきっかけでホラー漫画を描くようになったのでしょうか?
子どもの頃から怖がりのホラー好きで、そういった漫画や映画をよく見ては怯えてました。一方で漫画を描くのも好きで、いろんなジャンルに挑戦していたなか、大学の卒業制作でホラー漫画を描いた際に話作りや絵柄など自分に一番あっているなと感じて、そこからホラー漫画を描くようになりました。余談ですが、その漫画で研究室賞をいただけたのもホラー路線を選ぶきっかけになりました。
――『あるフリー音源の噂』『アーカイブ*ホラー』などはデジタル要素のあるホラー展開ですが、題材として取り入れたきっかけはありますか?
こちらも子どもの頃の話なのですが、当時 ちょうどインターネットの個人サイトやアングラコンテンツが盛んな時期で、好奇心からよく調べてたんです。最近、それらをふと思い出して、今どうなっているのか?あれはなんだったのか調べることがあり、そのなかで「こうだったら嫌だなぁ」というホラー妄想癖が働いた結果、作品のような話ができました。
――描くうえでこだわったところがあれば教えてください。
上記2作はなるべく「日常の延長であること」と、「人の手で作られているけど、意図がわからないもの」であることにこだわってます。謎の真相が霊的な仕業だとそれでなんとなく納得してしまいそうですが、人の仕業だと「どういうつもりでこれを作ったのか?作者は何者なのか?」という疑問が残るので、その不気味さや余白を想像したりして楽しんでいただけたらと思ってます。
――『霊媒解体師』は、またほかの作品とは違うホラーですが、こちらはどのようなコンセプトで描かれていますか?
恥ずかしながらこちらを描いた当時は、ホラーは好きなのにホラーに対する反骨精神のようなものが強くて…。幽霊対人間の物語となると、どうしても特性上人間が一方的に追い詰められて幽霊には干渉できない演出が多いんですが、それに対してのアンサーというか。幽霊モノはその理不尽さが恐怖としておもしろいのですが、当時はなんだか卑怯な気がして、怨念の一方的なパワーに生きた人間の筋の通ったパワーで反撃したかったんです。
――今後の展開があれば教えてください。
『アーカイブ*ホラー』を代表とする『仮ロケ(訳有品)シリーズ』を中心に、怖いけど好奇心をくすぐるようなホラー漫画を描いていけたらなと思ってます。ホラーが苦手な方も読めるような過激な描写を控えた作りを目指してますので、よろしければ読んでみてください!
本作をスクロールしながら読むと、じわじわと背筋が寒くなる。幽霊などの怖い絵がないのも特長。気になる人は、ぜひpixivで読んで欲しい。
取材協力:R@B級森メタル(@zombie666_R)
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