2025年9月5日に全国公開された『ヒックとドラゴン』は、バイキングの少年ヒックとドラゴンのトゥースの友情と大冒険を描いたドラゴンライド・アドベンチャー。公開前に試写で観た本作の感想を紹介(以下、ネタバレを含みます)。
【ストーリー】
舞台は、何世代にも渡り人間とドラゴンの戦いが続くバーク島。バイキング一族の首長ストイック(ジェラルド・バトラー)を父に持つ少年ヒック(メイソン・テムズ)は、ある日、自作の投石器で伝説のドラゴンと呼ばれるナイト・フューリーの襲撃に成功する。そのあと、ヒックはナイト・フューリーを見つけるが、傷付いたドラゴンにとどめを刺せずに逃してしまう。
ある日、再びナイト・フューリーを見つけたヒックはトゥースと名付けて距離を縮めていく。周りに内緒で少しずつトゥースとの友情を育んでいたヒックは、人間とドラゴンが共生できる道を模索するが、ある古代の脅威が世界を危機に陥れようとしていた…。
若手の注目俳優&ベテラン俳優ジェラルド・バトラーが演じる親子の物語が胸を熱くする
ドリームワークス・アニメーションの大ヒットアニメーション映画『ヒックとドラゴン』(2010年)は、もともと世界的ベストセラーの児童文学を映画化したもので、全世界興行収入約5億ドルの大ヒットを記録した。そのあと『ヒックとドラゴン2』(2014年)、『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』(2019年)と計3作が制作された。
今回、初の実写映画化となる本作の監督を務めたのは、アニメーション3部作を手掛けたディーン・デュボア監督。アニメ版のファンである筆者にとって、実写版もディーン・デュボア監督が作ると知ったときは飛び上がるほどうれしかった。
数多くの候補者の中から主人公ヒック役を射止めたのは、サイコ・スリラー映画『ブラック・フォン』(2021年)で注目を集めた若手俳優のメイソン・テムズ。『ブラック・フォン』では、イーサン・ホーク演じる連続誘拐犯“ザ・グラバー”に連れ去られ、地下室に監禁される少年フィニーを演じていた。
ザ・グラバーを恐れながらも、なんとか地下室を脱出しようと奮闘するフィニーの姿は、『ブラック・フォン』を観終わったあともしばらく脳裏に焼きついていたし、周りの映画ファンたちもメイソンの演技を絶賛していたのを覚えている。
そのあと彼は、Netflixのオリジナル映画『フレッシュ?! イン・ハイスクール』(2024年)やメル・ギブソン主演の映画『Monster Summer(原題)』(2024年/日本未公開)などに出演し、『ブラック・フォン』の続編『Black Phone 2(原題)』(日本での公開は未定)では再びフィニーを演じた。今後のメイソンの活躍にも注目したい。
バイキング一族の首長でヒックの父親ストイックを演じたのは、『オペラ座の怪人』(2004年)や『300 〈スリーハンドレッド〉』(2007年)で主演を務めたベテラン俳優ジェラルド・バトラー。
ジェラルドはアニメーション3部作でも声優としてストイックを演じていたが、実写版ではストイックがリーダシップを発揮する姿や、ひ弱な息子ヒックへの不器用な愛情などをアニメ版よりもさらに深みのある芝居で見せていたのがとてもよかった。
ヒックは最初、父ストイックの期待に応えられず悩んでしまうが、トゥースと交流を深めるうちにドラゴンの命を奪いたくないという自分の優しさが欠点ではないことに気づいていく。そんな息子の姿を見たストイックは失望するが、物語が進むうちにヒックが成長を見せ、親子の関係性も少しずつ変わっていくという展開に胸が熱くなり、自然と涙が出てしまった。
ヒックの親友で優秀な戦士アスティを演じたのは、『ダンボ』(2019年)や『ブリジット・ジョーンズの日記 サイテー最高な私の今』(2025年)に出演するニコ・パーカー。
個人的にはドラマ『THE LAST OF US』シーズン1でジョエルの娘サラを演じていた彼女の芝居が強く印象に残っている。サラは1話だけの登場だったが、凶暴化した感染者たちを見て恐怖の表情を浮かべながらも父親と必死に逃げ、その途中で突然未来を奪われたサラの姿に涙が止まらなかった。
本作では、どんなドラゴンを前にしても怯まずに勇敢に立ち向かう少女アスティを、ニコは生き生きと演じていた。正反対の性格のヒックとアスティが、友情を育んでいく姿も本作の見どころとなっている。
最新のIMAXカメラで撮影されたドラゴンライドのシーンは迫力満点!
以前、アニメ版のプロモーションで来日したディーン・デュボア監督にインタビューした際に、トゥースはサラマンダー(大トカゲ)と猫、そして監督の愛犬であるフレンチブルドッグをキャラクターに反映したと語っていた。実写版のトゥースはアニメ版以上に動きがキュートで、愛嬌もあってとってもかわいいのでアニメファンの方もきっと満足するはずだ。
また、本作の最大の見せ場といえるドラゴンライドのシーン(ヒックがトゥースの背中に乗って空を飛んでいる場面)は、最新のIMAXカメラで撮影されており、臨場感あふれる迫力満点の映像が楽しめる。
最高のドラゴンライド・アドベンチャーを、ぜひ劇場の大きなスクリーンで堪能してもらいたい。
文=奥村百恵
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