「毒親」という言葉が浸透した現代において、暴力や経済的な束縛だけでなく、自分の考えを子どもに押し付けてコントロールする親は「支配型」の毒親といわれる。そこには「あなたのためを思って」という言葉が付きまとい、進学先から就職、果ては容姿や交友関係まで干渉が及ぶ。
「うちは何かがおかしい」と友達の親子関係と違うことに初めて違和感を覚えた、漫画家グラハム子さんの自伝「母の支配から自由になりたい」について、本作を書き上げるまでの思いを聞いた。
支配される日常と気づきのきっかけ
グラハム子さんは、父親が単身赴任で不在がちだったこともあり、母親に自分の意見をすべて曲げられて育った。ピンクの服が着たくても「あなたには似合わない」、好きなことをすれば「もっと意味のあることをしなさい」と言われ、母の意に沿った結果を出すと褒められて育ったそうだ。
進学先は希望しないお嬢様校へ。公務員がよいと教員免許を取得し教師になった。中でも強烈なエピソードは、中学卒業のとき、「あなたは一重でかわいそうだから整形しなさい」と二重整形をさせられたことだ。容姿への干渉が続いたそのほか、グラハム子さんは食べたあとに吐いてしまう「摂食障害」に苦しむことになる。
「うちがおかしいのかも」と気付いたきっかけは、進路を決めたときだ。芸能の道に進みたいと言った友達の夢を親が許してくれたのを見て、「うちの母親なら絶対に許してくれない」と感じたことから、違和感を覚えるようになった。
心と向き合う作業と「引退試合」
今回、摂食障害や自分の意思で決められない心理を乗り越えるまでのプロセスを描いた自伝本を発売。制作にあたり、グラハム子さんは自分の中にある「未消化」のものの多さに気づかされたという。書き始める時点では消化できていると思っていたものが、書いているうちに「あれもだ、これもだ」と見つかっていったそうだ。
「わかりやすく」描くことは心がけたというが、自分の中の気づきをつい付け足したくなっても、話の主軸がわかるよう注意を払った。制作前とあとで気持ちの変化があり、「人生におけるステージを一歩進めたというか、今までとは違う種類の悩みになりました」と語る。
大人になって、母親に今まで抱えていた自分の気持ちを伝えるシーンは、「ふいに訪れた引退試合」だったという。悲しさもうれしさも怒りや恐怖も、いろんな感情が同時にあった気がすると振り返る。
グラハム子さんは、親との関係で悩んでいる読者へ向けて「大丈夫、あなただけじゃないよ。同じように苦しんでいる仲間がいるよ」とメッセージを送る。「過去は決して消えないけれど、じゃあどうする?一生過去を恨んで、今のままの心持ちで生きていくの?」と自問したとき、「それはイヤだ」と思えた瞬間、「ハッキリと世界が変わったのを覚えている」と語った。この漫画が、読者の世界を変える手助けとなれたらうれしいと結んだ。
取材協力:グラハム子(@gura_hamuco)
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