互いに不倫をし“ウソ”を重ねながらも、愛を再確認する夫婦の姿を描いた江國香織の恋愛小説を映画化した「スイートリトルライズ」。夫・聡との生活にどこか孤独を感じるヒロインの瑠璃子を演じた中谷美紀に、理想の夫婦像や恋愛観などを聞いてみた。
─周囲からは理想の夫婦に見えながらも、実は外に恋人がいる聡と瑠璃子。この2人について、最初はどう思いましたか?
「なかなかめずらしい夫婦だけど、潜在的に意外と多いのかもしれないと思いましたね」
─瑠璃子という女性も“不倫”をしているとなると、ちょっと“悪女”のような印象を抱いてしまいがちですが…。
「私も最初は夫以外の男性と恋に落ちる瑠璃子に嫌悪感を抱いて、理解できないと思ったんですが、彼女にはそういった不潔な感じがないんです。演じる時も、ちょっとしたサジ加減で、いやらしくも見えてしまうので、そうならないように気をつけましたね。夫のために朝食を準備する手先や、後ろ姿からも夫への愛がにじみ出るようにしました」
─瑠璃子は心のどこかに孤独を抱えていますが、中谷さんご自身は“孤独”を感じることはありますか?
「朝から晩までずっと誰かと一緒にいると、息苦しくなってしまうので“孤独”は嫌いじゃないんですよね。例えば旅に出ても、そこで出会った人と別れる瞬間が好きなんです(笑)。撮影現場でも同じで、自分のやるべきことをやって共演者やスタッフとお別れをするのがいいんですよ。もちろん、一瞬、名残惜しいと思うこともあります。瑠璃子も孤独をどこかで愛しながらも、人恋しくなって誰かを求める“ないものねだり”みたいなものですよね。人間って、欲深い生き物だなぁと思います」
─本作のテーマは男女間の“甘いウソ”ですが、中谷さんご自身はそういったウソはどう思われますか?
「私自身“ウソ”を“真実”に見せる女優を仕事としているので、抵抗がないんです(笑)。それに“うそも方便”というように、人との関係を円滑にするためのウソもあると思いますし。ただ、自分にだけはウソをつきたくないですね」
─本作を通じて、ご自身の恋愛観に変化はありましたか?
「人は生まれた時から愛を請う生き物で、理解し、されたいというエゴを持っているけれど、なかなかわかり合えるものじゃないと思うんです。だから男女の関係って、永遠の平行線なんじゃないかな。そういった人間が生きていく上で避けられないテーマを描いた作品になったと思います」
【取材・文=リワークス】