お互いの素性は知らなくても、一緒に遊ぶ友人はかけがえのない存在。オンラインゲーム仲間の訃報が届いたあと、彼の父を名乗る人物が友人のアカウントでログインしてきて――。
不二丘いつきさん
(@fujioka2020)
の創作漫画『死んだネトゲのフレの父』は、X(旧Twitter)上に投稿され2.7万件を超えるいいねを集めたオリジナル作品。
サービス終了を控えるオンラインゲームで、一緒に遊んでいた顔も本名も知らない友人を亡くした主人公は、ある日もう動くはずのない友人のキャラクター“コーラル”を使い、「亡くなった息子の事を知りたくて」と彼の父親がログインしてくる。“シャド”というキャラクターに扮する主人公は本当に父なのかを疑いつつも、友人の足跡を辿るようにゲーム世界の案内を始め…というストーリーだ。読者からは「滅茶苦茶泣けるすてきな話」と反響を呼んだ同作の舞台裏を、作者の不二丘いつきさんに聞いた。
「本物コーラル」と「お父さんコーラル」。動かし方の違いで生まれる「別人」の感覚
父がプレイする“コーラル”の表情がどこかプレイヤーとつながっていないような印象を受けるからこそ、友人と父の違いが鮮明に映るように感じられた点について、不二丘さんは以下のように語った。
「ゲームのキャラメイクですと、どうしてもバリエーションに限界があるので『同じ顔』のキャラと何度も出会うのはオンラインゲームあるあるなのですが、それでも人によって動かし方が違ってくると『別人』に見えていくという感覚があります。序盤に誰も中に入ってない無表情のNPCコーラルを出すことで、本物コーラル、お父さんコーラル、との差別化をよりはっきりさせようとしました」
本作の舞台となる架空のオンラインゲーム「神獣オンライン」の世界観は、東南アジアをイメージしてデザインされている。オリジナルのMMO世界を描くうえで特にお気に入りの場面は、「先に上げてくださったサガリバナのシーンです。博物館で資料を見てその美しさと儚さに静かに感動し、いつか漫画で描いてみたいと思っていました。本物をみる機会もできたらよいのですが」と、実体験に基づく美しい光景を挙げた。
「思い出が次の喜びを作っていく」作者自身のネトゲ体験がテーマに
「サービスが終了する」「プレイヤーが亡くなる」という二つの喪失を経ても、新たな友人を迎え、新たな世界で旅をするという結末に救いを感じる。ストーリーの着想については、自身のオンラインゲーム体験が反映されている。
不二丘さんは、「自分もオンラインゲームをプレイしているのですが、長く遊んでいるとデータを残したままログインしなくなるフレンドが増えていきました。ですが、ゲームをきっかけにSNSでもつながった人たちは、ログインをやめても新しい楽しみを共有してくれたりしています」」と述懐。そこからたとえ大切なものをなくしてもそれは無駄ではないし、思い出が次の喜びを作っていく、そんな話が描けると思ったのだそう。
「児童漫画と少年漫画の間くらいの作品を描いています」と標榜する不二丘さんは、本作のテーマについて、「今回はオンラインゲームを題材に、普段つながることがそうないであろう年齢・職業・住所がばらばらの人たちが交流していく楽しさ、そんな人たちみんなが抱える悲しみに力を合わせて向き合っていく強さを描こうとしました」と説明。
「お父さんを疑う主人公の心の変化が重要と考え、いつもより心情描写を多めに盛り込みましたが、沢山の人に楽しんでもらえたようでよかったです。子どもも大人も明日に希望をもてるような漫画を目指して、これからもコツコツ描いていきます」と、今後の制作への意欲を語った。
取材協力:不二丘いつき(@fujioka2020)
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