「借金を取り戻すには、ギャンブルで勝てばいい」。そんな矛盾した思考に囚われ、適度なところでやめられなくなるのがギャンブル依存症だ。昨今ではスマホで手軽にアクセスできるオンラインカジノの普及により、若年層の依存も深刻化している。
漫画家・三森みさ(@mimorimisa)が描く『だらしない夫じゃなくて依存症でした』は、アルコールや薬物、そしてギャンブルといった「依存症」の正体を鮮明に描き出す。依存症は個人の性格や自制心の問題ではなく、脳の機能不全であることを、三森氏へのインタビューから紐解く。
本能と理性の区別がつかなくなる、脳の「バグ」
ギャンブル依存症の恐ろしさは、本人が「依存している」と自覚することの難しさにある。三森氏によれば、依存症は脳の本能的な部分の欲求が狂ってしまう病気だ。
「自分は依存症かも」と客観的に認識できているうちは、まだ初期段階だという。進行すると、「やめなければならない」という理性的な思考と、「でもやめたくない」「理由があるからやっていい」という本能的な思考が脳内で混濁し、自分一人の力で見分けることは不可能に近い。まさに「本当は気づいているが、病気のせいでやめることができない」という状態に陥るのだ。
「嘘がつきやすい」ギャンブル依存症特有の罠
アルコールや薬物依存症と違い、ギャンブル依存には身体的な薬理作用が目に見えにくいという特徴がある。酔っ払うことも、独特の匂いが出ることも、呂律が回らなくなることもない。
そのため「ギャンブルをやっていない」という嘘が成立しやすく、周囲が異変に気づいたときには、すでに多額の借金を抱えているなど、事態が致命的に悪化しているケースが多い。損失が「借金額」という数値で可視化される痛みも、この依存症ならではの過酷さだ。
「楽しいから」ではなく「苦しみから逃れるため」の手段
ギャンブル依存症になりやすい人の傾向として、三森氏は「若い時期からの経験」に加え、「人生のつらい時期」との重なりを指摘する。
多くの当事者は、単に遊びや趣味で溺れたわけではない。現実の苦しみや耐え難い環境を生き延びるための「逃避手段」として、ギャンブルにのめり込んでしまうのだ。依存症は「脳の報酬系」の障害であり、一度その回路が壊れると、以前のように「ほどほどに遊ぶ」ことは二度とできなくなる。
「自分を罰しないでほしい」回復へのメッセージ
三森氏は、依存症は「完治する」ものではなく、「やめ続けることができる」ものだと定義する。脳の機能を元に戻す薬が存在しない以上、ギャンブルから離れ続けることでしか平穏な生活は維持できない。
「依存症は、苦しい環境を生き延びるための手段。もし現在進行形で依存しているなら、そんな自分を罰さないでほしい」。三森氏の言葉は、自己嫌悪に陥る当事者や家族に、救いと回復への希望を提示している。
三森さんは、自身の性犯罪被害と虐待の後遺症の「トラウマ問題」に取り組んでおり、ルポ漫画「
〜トラウマ治療編〜 生きていくのは大変だ〜三森みさのプチエッセイ集〜
」をKindleで公開中だ。
取材協力:三森みさ(@mimorimisa)
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