郵便配達員は毎日、町の隅々まで郵便物を届けている。現役局員の送達ねこ(@jinjanosandou)さんが描く『郵便屋が集めた奇談』は、彼らが実際に経験した不思議な話や怖い話を漫画化したものだ。なかでも『開かないポスト』というエピソードは、ある配達員が体験した、怪奇現象よりおぞましい「現実」を描いている。
「開かないポスト」に潜む狂気
I支店で働くKさんは、クリックポストの配達中にある異変に気づく。ある部屋のドアポストが、なぜか開かないのだ。中が何かでいっぱいなのか。不在票を置いて持ち帰るか悩んだが、以前クレームが入ったことを思い出し、Kさんは荷物を力ずくで押し込むことにした。翌日、そのアパートを通りかかったKさんは、驚くべき光景を目にする。
作者の送達ねこさんは、同僚からこの話を聞いたときの心境をこう語る。「配達時にはまさか、中でそんなことが起こっているとは思わないので、本当にあとになるほど震えのくる体験だと思いました。ドアの向こうには、その家の人の日常が普通にあると思っていたので……」。ポストを通して、目には見えないけれど触れてしまった「現実」の重み。それは配達員にとって、一生忘れられないトラウマとなった。
怪異より怖い「現実」の重み
配達員は1人で家々を訪ねるため、常に危険と隣り合わせだ。送達ねこさんによれば、連絡用の端末を携帯し、全員が帰局するまで役職者が残るなど、安全管理は徹底されているという。しかし、殺人事件があった場所でも郵便があれば行かなければならない。配達員たちは「幽霊が出るよりも、犯人がまたやってくる方がずっと怖い」と口を揃える。
本作を読んだ読者からは「ヒェッ!」「ぞわっとキター」という悲鳴が上がっている。「手紙を入れるたびに思い出しそう」というコメントも届くほど、その衝撃は大きい。ネット通販が日常となった現代、どんな場所へも荷物を届ける配達員の苦労は計り知れない。どんなトラウマを抱えようと、彼らは配達先を選り好みすることはできないのだ。日本中のどこかで、今日もひっそりと起こっている「現実」の怪異を、ぜひその目で確かめてほしい。
取材協力:送達ねこ(@jinjanosandou)
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