真面目で優しい学級委員長・海老原に対し、転校してきたばかりの不良女子・蟹沢が言い放った言葉は「なあ?裏番さんよ」だった。教室内は騒然とし、海老原は戸惑うが、彼女は「あたしには全部お見通しだ」と引かない。一体なぜ、彼女はこのような突拍子もない絡み方をしたのだろうか。
「言いがかり」がまさかのクリーンヒット
数分後、廊下でガッツポーズを決める蟹沢。実はこれ、海老原と話したいがための「言いがかり」だった。心の中では「はよツッコんでや」とドギマギしていた彼女だが、ここは埼玉。誰ひとりツッコまず、ただドン引きされていた。それでも「ついに話しかけたった!!」と浮かれる姿は、まさに恋する乙女である。
一方の海老原は、放課後に頭を抱えていた。「なぜバレたんだ?」と。実は彼、本当に学校の裏番だったのだ。秘密をクラス全員の前でブッコまれた焦りと動揺。本作『殻の向こうのナイショの話』の作者・墨染清(@sumizomesei)さんは、キャラ作りのこだわりをこう語る。「温和な委員長っぽい裏ボスと、ヤンキーっぽい恋する乙女。当時はギャップを出す練習をしていて、読んでいて嫌な感じがせず、かわいいと思ってもらえるよう心掛けていました」
大阪育ちの作者が描く「埼玉」への執着
蟹沢の関西弁が目を引く本作。作者の墨染さんは大阪生まれの大阪育ちだ。「つい喋らせたくなるんです。本当はいろいろな方言を描きたいのですが、理解しているのは関西弁だけで。方言キャラを描きたい欲が出たときは、すべて関西弁にしてしまいます」と明かす。
さらに興味深いのが、墨染作品の9割が「埼玉」を舞台にしている点だ。なんと、一度も訪れたことがないという。「なぜか惹かれるものがあり、描きたい世界観と埼玉のイメージがぴったり合うんです」と話す。
ほかにも、数々の新人賞を受賞してきた墨染さんの作品を読む際は、この「埼玉舞台」という設定を頭の片隅に置いておくと、背景の空気感をおもしろいくらい深く楽しめるかもしれない。勘違いから始まる二人の関係に、今後もうれしい展開を期待せずにはいられない。
取材協力:墨染清(@sumizomesei)
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