品川駅からすぐのマクセル アクアパーク品川で2026年1月31日、0〜1歳の子どもと家族に向けたイベント「ファーストアクアリウム」が初めて開催された。水族館に行ってみたい気持ちはあっても、乳幼児を連れての外出には不安がつきまとう。そうした声を受け止めながら、水族館での過ごし方をあらためて見直し、企画されたのがこの取り組みだ。
今後も継続して行われていく予定の「ファーストアクアリウム」。その第1回となった当日の様子をレポートするとともに、イベントが生まれた背景や取り組みの工夫、そしてこれからについて、広報の村上巧さんに話を聞いた。
子どものペースでゆっくり過ごす水族館「ファーストアクアリウム」の見どころ
今回の「ファーストアクアリウム」は、展示を特別なものに変えるというより、赤ちゃん連れでも水族館を楽しみやすくするためのイベントだ。
まず大きな特徴となるのが、開館前の時間帯を使い0〜1歳の子どもとその家族だけ、さらに参加人数を限定している点。通常営業前の館内は人の動きが少なく、ベビーカーでの移動や立ち止まっての鑑賞も自然にできる。周囲に気を遣わず、子どもの反応に合わせて進める空間は、水族館デビューに対する心理的なハードルを下げてくれる。
水槽展示では、トンネル型水槽「ワンダーチューブ」の中にプレイマットが敷かれ、くつろぎながら過ごせる空間が用意されていた。抱っこをしたまま無理な姿勢で覗き込む必要はなく、寝転んだり、ハイハイをしながら、目の前や頭上を泳ぐ生きものを眺められる。視線の高さを子どもに合わせることで、見る側の負担を減らし、自然と目が向くような工夫が施されている。
さらに、チューブ出口の横では、産まれたばかりのカクレクマノミを移動式水槽で紹介するフォトタイムも行われていた。水槽の横にちょこんと座り、カクレクマノミを間近に眺めながら記念撮影をする姿も。この日だけの、優しいひとコマが生まれていた。
展示「リトルライフ」では、カクレクマノミやクラゲなど、水族館内で繁殖・育成された生きものの誕生や成長の様子を紹介。派手な演出ではなく、生命の変化を静かに伝える展示構成が、初めて水槽を見る子どもにも受け止めやすい内容になっていた。
そして、ドルフィンパフォーマンスも、この日のための特別な内容に。あえて照明は控えめで、音量を抑えた童謡や聞き慣れた楽曲に合わせて、ほのぼのかつダイナミックに進んでいく。客席では、手拍子をしたり体を揺らしたりする姿も見られ、ただ眺めるだけで終わらない時間になっていた。ジャンプや水しぶきの迫力はそのままに、子どもが驚きすぎないよう配慮されているのも印象的だった。
体験を終えたあとには、事前に送付しておいた写真を使ったフォトキーホルダーと、日付入りのパスポート風記念カードがプレゼントされる。水族館で過ごした時間を、その日の思い出として、そっと手元に残せるようになっていた。※写真は希望すれば当日撮影も可能
そのほか、授乳室やおむつ替えスペース、ベビーカー置き場などもあらかじめ案内されていた。初めての来館でも迷いにくく、家族それぞれのペースで過ごせるよう配慮されているのが印象的だった。
子育ての経験が、企画になった。広報担当者が語る背景
ここからは、「ファーストアクアリウム」がどのように生まれ、どんな思いで形になったのか、そして今後について、広報の村上巧さんに話を聞いた。
ーーまず、このイベントを開催することになったきっかけを教えてください。
【広報】今回のイベントは、産休・育休を経験したスタッフが中心になって考えました。当館では「多様性は可能性」という考え方を大切にしていて、さまざまな経験をしたスタッフが関わることで、新しい取り組みが生まれると考えています。今回は、子育てを経験した視点を活かして、小さなお子さま向けのイベントを形にしました。
ーー開館前の時間帯に、参加者数を絞って開催した理由を教えてください。
【村上巧】コロナ禍以降、お子さま連れでの外出はどうしても気を遣う場面が増えたと感じています。その影響で、自然や生きものに触れる機会も少なくなっています。通常の営業時間中はどうしても混雑してしまうため、今回は開館前の落ち着いた時間を選びました。参加者数を絞ることで、安全面にも配慮しながら、安心して過ごしていただければという思いがありました。
ーー企画を進めるうえで、大変だったことはありますか?
【村上巧】0〜1歳のお子さま向けということで、何を用意したら喜ばれるのか、どこまでなら安全なのかを一つずつ考える必要がありました。スタッフの中にも実際に子育て中のメンバーが多く、「この年齢だとこれはまだ大きいよね」「この場所での撮影は危ないかも」といった具体的な意見が次々に出てきました。パパ・ママそれぞれの実体験を持ち寄りながら、どうすれば無理なく楽しんでもらえるかを話し合い、少しずつ形にしていきました。
ーー今後について、どのように考えていますか?
【村上巧】 今回は1日限定の開催でしたが、今後も続けていく予定です。具体的な日程はまだ調整中ですが、来年度(4月)以降、春や秋などの時期に、年1〜2回ほど実施できたらと考えています。「水族館デビュー」は一生に一度の体験です。こうした機会を通して、まずは海の世界に興味を持ってもらい、そこから水族館や生きものを好きになってもらえたら、私たちとしてもうれしいですね。
水族館デビューが身近に感じられた日
この日、はじめて行われた「ファーストアクアリウム」。プレイマットの上で寝転んだり、チューブの中を泳ぐ魚を目で追ったり、カクレクマノミの横にちょこんと座って写真を撮ったり。赤ちゃん連れでも、こんなふうに水族館を楽しめるんだと、具体的に思い描ける時間が流れていた。
今回はこの日限定の開催だったが、今後も続けていく予定だという。取材の最後には、イベントとは別に、普段の水族館を親子で楽しむときの話も聞かせてくれた。人の少ない時間帯を選び、展示を全部回ろうとせず、子どもの反応を見ながら少しずつ進むこと。そんな言葉を思い出しながら、次回の「ファーストアクアリウム」も、そっと待ちたい。
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取材・文・撮影=北村康行