今や留まるところを知らない“食べられるラー油”ブーム。中でも、桃屋の「辛そうで辛くない少し辛いラー油」(参考価格400円)は、今や品薄状態という人気ぶりだが、実は10年以上前から“食べるラー油”を置いている中華料理店があるのをご存じだろうか? しかも「桃屋のラー油の元になったのでは?」とウワサされるほど、見た目がそっくりだという。気になる記者は早速店を直撃! その真相に迫ってきた。
ウワサの店とは東京都中央区日本橋にある「アジア料理 菜心(さいしん)」。手ごろな価格で本格的な味が楽しめるとあり、ランチ時には行列ができるほどの人気店。「坦々麺」や「餃子」、「ザーサイ」など人気メニューは多いが、多くのお客さんの目当ては手作りの“食べるラー油”。どれだけ食べても無料という、まさに調味料感覚の“おかず”だ。
トウガラシや香ばしく揚げたガーリック、数種類のスパイスなどがてんこ盛りの“菜心・特製ラー油”は、「実8割、油2割」という逆転の配合バランスが特徴。ホカホカの白いごはんの上にかけ一口食べてみると、ピリリとした刺激的な辛さが最初にやって来るが、その後は、炒めたガーリックや香辛料の深い旨みが口いっぱいに広がる。もちろん“実”の部分だけでも、かなりうまいのだが、何種類ものスパイスの風味が溶け込んだ油が染みこんだごはんは、絶品モノ! ガーリックやスパイスで嗅覚も刺激されつつ、あっという間に完食してしまった。よくギョウザにかけるラー油しか知らなかった記者にとっては、まさに目からウロコ状態。でも、こんなラー油、一体どうやってできたの?
「最初はウチの坦々麺に合うようにと、店の料理人が作ったものなんです」とは、オーナーの大森暁子さん。店がオープンした時から作っており、特製ラー油の歴史はもう10年になるという。今では、ランチ時だけで、小さなおわんいっぱいのラー油が7〜8杯、お土産用(500円)は40個以上売れるそうで、ラー油目当てにタクシーでランチにやって来る人や、福岡や名古屋からもお土産用を売ってほしいという声が殺到しているのだとか。
実は、この店の近くには、あの「桃屋」の本社がある。徒歩圏内という近さや、使っている材料が似ていることから、常連のお客さんからは「似てるよね。この店がヒントになったんじゃないの(笑)」という声も多数上がったというが、オーナーの大森さんは意外にも冷静だ。「正直、気にならないですね。ラー油が注目されるのはうれしいですけど、ブームはあくまでブームですから。ウチは、これからも変わらずお客さんに喜んでもらえるラー油をつくり続けたいです」と、真摯なコメント。
そんな姿勢を反映してか、“菜心・特製ラー油”は、下準備だけで3時間以上かかるにも関わらず、決して数量を限定にしようとはしない。「せっかく遠いところから来ていただいていたり、欲しいと言ってくださっているのに、『限定なのでもうないです』なんて言えないですよね。たくさんのお客様に喜んでもらいたいから、営業前や終了後はもちろん、営業中も作っているんですよ」
オープン以来、広告等は一切出さず、口コミだけで広まった「アジア料理 菜心」の手作りラー油。何にかけてもウマイとのことで、常連やファンの間では、冷凍のギョウザやコンビニ弁当、納豆、インスタントラーメンなどに加えて、家での安うまなオリジナルレシピを楽しんでいるのだとか。一度食べたらクセになる菜心の特製ラー油は、ブームに踊らされることなく、これからも人形町の“名物”として語り継がれていきそうだ。 【東京ウォーカー】
※「アジア料理 菜心」 東京都中央区日本橋人形町2-7-12 03-3665-2201 日曜定休