右耳難聴や子宮内膜症など、自身の体験をコミカルに描いてきたキクチ( kkc_ayn )さん。母の看取りを描いた「20代、親を看取る。」に続き、「父が全裸で倒れてた。」では、今度は病に倒れた父との日々をつづっている。今回は、父の状態が思った以上に悪い中で、キクチさんが“この先の生活”への不安を強めていく回だ。
決断を迫られ続けるしんどさ
胃の止血は無事に終わったものの、次々に必要になるのは治療の同意書だった。迷う暇もなく判断を重ねなければならず、その重さを一人で抱える不安は大きかったはずだ。
キクチさんも「ひっきりなしに『同意書お願いします!』と呼ばれていました(笑)」と振り返る。「重篤な後遺症が残る可能性は0.05%です」と書かれていても、「その確率なら大丈夫か…」と思って署名するしかなかったという。「私には『YES』の選択肢しかないと思っていました」という言葉に、切迫した状況がにじむ。
助かってほしい。でも、その先が怖い
父の排尿の少なさや実家に残っていた吐いた痕跡を見て、キクチさんの不安はさらに強まっていく。退院後に家をどうするか、介護はどうするか、費用はどうするか。考え始めると止まらなかった。
「未来の行く末が『死』だったら粛々と身辺を片付けるだけなのですが、『生』となった場合はあらゆる可能性が出てくる」とキクチさん。「うれしいけど自分ひとりで支えられるか不安」という気持ちが積み重なっていったという。
そんな中で支えになったのが、夫の「行き当たりばったりで生きよう」「なんとかなるよ。大丈夫だよ」という言葉だった。不安をゼロにはできなくても、少しだけ距離を取ることができたそうだ。
親の「大丈夫」が、子どもには苦しい
キクチさんは、自身の家族について「まずは一人でなんとかしようという思想が強いのかもしれません」と語る。母も父も、弱っていても簡単には頼らない。特に父は「大したことない」と我慢してしまうタイプだった。
だからこそ今回の事態には、「娘だから心配かけたくない」という親心と、「まずは一人でどうにかしたい」という意地のようなものが重なっていたのかもしれない。
キクチさんは「人に迷惑をかけないことは大事ですが、頼るタイミングを見極めることも大事ですね。反面教師にしたいと思います!」と話す。親の愛情だからこそ苦しい。そのもどかしさまで丁寧に描いているのが本作の魅力である。
取材協力:キクチさん(@kkc_ayn)
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