駅員経験をもとにした漫画を、X(旧Twitter)やブログで発信しているザバック(
@theback_blog
)さん。ユニークな動物キャラクターたちを通して描かれる駅員の日常は、コミカルでありながら、仕事の厳しさや現場の空気もにじむ作品として人気を集めている。今回は、ブログに投稿されている「100日後にやめる契約駅員さん」から、駅員同士の“挨拶”をめぐるエピソードを紹介するとともに、本作に込めた思いを聞いた。
何気ない挨拶に、その会社の空気は表れる
物語の主人公・ペン助は、ある日いつものように退社時間を迎え、先輩に「お疲れさまでした。八木さん」と声をかける。すると先輩も同じように返しながら、「そういえばペン助。この会社では『ご苦労さま』は使わないんだ。上下関係なくみんな『お疲れさま』を使ってるよ」と教えてくれた。
ほんのひと言の違いに見えるかもしれない。けれど、その言葉の選び方には、その職場が人をどう扱っているかがにじむ。働いていると、制度や待遇より先に、日々交わす何気ない言葉に救われたり、逆に削られたりすることがある。だからこそ、このエピソードは地味でありながら強く刺さる。
“みんなで駅を回している”という感覚が、言葉に宿っていた
先輩はさらに、「駅業務は全員が協力して駅をまわすから、全員を敬って『お疲れさま』なんだ。だからペン助も後輩ができたらその気持ちを大事にして言ってあげてほしい」と丁寧に伝える。誰かが上で、誰かが下というより、ひとつの駅を回すために全員が必要な存在であること。その考え方が、たったひとつの挨拶にまできちんと落とし込まれている。
現場仕事ほど、こうした感覚は重要なのかもしれない。表に立つ人も、裏で支える人も、誰かひとり欠ければ回らない。だからこそ、“敬う”ことが形式ではなく、文化として根づいている職場は強い。そしてあたたかい。
「この会社が好きだ」と思える瞬間は、案外こういうところにある
その説明を聞いたペン助は、思わず感動する。大げさな出来事ではない。それでも、自分が働く場所にちゃんと意味のあるよい習慣があると知ったとき、人はその会社を少し好きになれるのかもしれない。仕事そのものが好きになれなくても、そこにいる人たちの考え方や、日々交わされる言葉に救われることはある。
「会社が好き」と言えることは、簡単そうでいて実は難しい。だからこそ、このエピソードにはじんわりとした強さがある。職場の空気は、こういう小さな積み重ねでできているのだと気づかされる。
実話だからこそ、まっすぐ響く駅員の日常漫画
今回紹介したエピソードについて、ザバックさんは「これは実話です!」と明かしている。そして、「自分が働く会社のことが好きになるのは、本当に素晴らしいですね」と語った。漫画として読むとほっこりする話だが、実話だとわかると、その一言の重みがより増して感じられる。
また、読者へのメッセージとして「漫画を読んでいただきありがとうございます。きっと僕の漫画を読んでいる人の中には、鉄道好きな人もいると思います。ちょっと現実的に描きすぎた漫画ですが、よろしければこれからも応援してくれるとうれしいです。Twitterやブログもよろしくお願いします!」とコメントしている。かわいいキャラクターで描かれながらも、現場のリアルがしっかり息づいているのが、ザバック作品の魅力だろう。
“よい職場”は、特別な制度より言葉で伝わることもある
福利厚生や働き方の制度ももちろん大切だが、毎日交わす言葉がやさしい職場は、それだけで働く人の心を少し軽くしてくれる。「お疲れさま」というありふれた言葉の裏に、相手を敬う気持ちがある。それをちゃんと教えてくれる先輩がいる。その積み重ねが、ペン助にとって「この会社が好きだ」と思える理由になったのだ。
仕事を続けるうえで、本当に支えになるのはこういう空気なのかもしれない。駅を回しているのは、誰かひとりではない。そう実感できる職場の尊さが、静かに伝わってくる一編である。
取材協力:ザバック(@theback_blog)
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