【連載/ウワサの映画 Vol.18】 アカデミー賞7ノミネート!GG賞4主要部門に輝いた大人たちの脱線劇

2018年1月26日 11:52更新

東海ウォーカー おおまえ

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本年度GG賞(ゴールデン・グローブ賞)で最多4部門受賞で快勝した「スリー・ビルボード」。1月23日(現地時間)にノミニーが発表されたアカデミー賞では、作品賞、主演女優賞、助演男優賞、脚本賞(GG賞ではこの4部門を制覇!)といった主要部門を含む6部門7ノミネート!意図せず道を外していく大人たちのおかしみと悲哀がコメディの域にまで高まった絶品サスペンスです。ヒロインが吐き散らす毒も妙に味わい深いんですよね~。

アカデミー賞作品賞に最も近い賞と言われている、トロント国際映画祭観客賞も受賞した本作。順当にアカデミー作品賞候補となりました!
©2017 Twentieth Century Fox

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タイトルの「スリー・ビルボード」とは、アメリカの道路脇にどかーんと立っている巨大な広告看板×3枚の意味。ミズーリ州の田舎町の廃れた広告看板に、突然3つのメッセージが掲示されたことから物語は動き出します。「レイプされて死亡」「なぜ?ウィロビー署長」「犯人逮捕はまだ?」。その広告の主は、7か月前に娘を殺されたミルドレッド(フランシス・マクド―マンド)という女性で、進展しない捜査に腹を立て、ウィロビー署長(ウディ・ハレルソン)にケンカを吹っ掛けたのです。署長を父親のように慕う暴力警官・ディクソン(サム・ロックウェル)や町の人々からの抗議や嫌がらせにも動じないミルドレッドでしたが、広告騒ぎにかかわった人々を巡る不穏な事件が次々と起こり始めるのでした…。

とんだとばっちりを受ける署長さんは末期ガンを患っています。ウディ・ハレルソン(左)とフランシス・マクド―マンド(右)の円熟の共演が圧巻の熱量!©2017 Twentieth Century Fox

とんでもなヒロインを演じるのは、本作でGG賞主演女優賞を受賞し、オスカーでも同賞ノミネートを果たしたフランシス・マクドーマンド。過去に4度オスカー候補となり、夫のジョエルとイーサンのコーエン兄弟監督作「ファーゴ」で主演女優賞に輝いた個性派女優さんです。今回は、娘を亡くしたことによる、恨み、怒り、喪失感、悲しみというあらゆる感情をあらぬ方向へ爆発させる頑なな母親役。逆恨みとダークなトークで周囲をドン引かせる困ったおばさんですが、娘との最後のやり取りに十字架を背負い、傷心と悔恨をコワモテで覆い隠している姿が痛々しいったらない…。終始、青いジャンプスーツ姿で”戦う”マクドーマンドはイーストウッドばりの貫録!(ジョン・ウェインを参考にしたそうですけど)

同情されるべき立場なのに、強硬手段に訴えて“イカれた女”と化す主人公。波風を立てれば「何かしら状況が動く」という希望を託した苦肉の策なのでしょうか…©2017 Twentieth Century Fox

ヒロインが呼ぶ嵐の巻き添えになり運命を狂わせる署長役のウディ・ハレルソンとその部下役のサム・ロックウェルは、なんと、アカデミー助演男優賞にWノミネートです。GG賞助演男優賞を受賞したサムが演じるディクソンはイチ押しキャラ!頭が弱いゆえに暴力に訴える超不安定な警官です。本作の監督マーティン・マクドナーの「セブン・サイコパス」で見せた怪演が昇華した印象のサムが、憎たらしいのに憎み切れない人間味をディクソンに与えています。そんな彼の”突然の覚醒”も衝撃で、怒りまみれの場当たり的な行動の先の意外な着地点がニクい!そして、短い出番ながら強烈な存在感を残すウディもシブさ全開。衝撃の行動に出てしまうウィロビー署長が抱える密かなジレンマを、表情ひとつで多くを語る巧演で魅せます。どちらかはオスカーを獲るはず!

サム・ロックウェル(左)演じる、マザコン&人種差別主義者のディクソン警官。彼の成長物語を観たかのような気分にもなります(笑)。右にいるのはママです©2017 Twentieth Century Fox

イギリス演劇界で活躍し、映画監督としても頭角を現してきたマーティン・マクドナー監督の力量も見逃せません。この作品のおもしろさは、まったくもって展開が予想できないという彼の脚本にあります。脱線し暴走するミルドレッド、ウェロビー署長、ディクソンの複雑キャラ3名は「いい人なの?悪い人なの?…いったいどういう人なの!」と意外性の連続。裏をかいて、また裏をかいて、どう転がるかわからない即興的な興奮に満ちています。感傷と笑いを巧妙に行き来し、どちらにも落ち着かない。”人間の本質=ブラック・ユーモア”だと言わんばかりの濃密な脚本は、アカデミー賞もいけると踏んでいます(しかし監督賞に引っかからないのはなぜなんでしょう?)。

宣伝文句に多い「予測不可能」は、たいていは結末のことだったりしますが、本作は”ほんのちょっと先”すら読めないんです!(C)2017 Twentieth Century Fox

優れた脚本の本質を、圧巻の演技で体現したキャストたち。その総合力で、GG作品賞に続き、アカデミー作品賞GETとなるでしょうか!?3月4日(現地時間)の授賞式に注目です!…おっと、忘れるところでした…、私のお気に入り俳優であるケイレブ・ランドリー・ジョーンズくんもいい仕事してます。広告会社の社長役で、ディクソンに半殺しにされちゃうんですが…。因縁の2人の後半の絡みが泣かせる~!【東海ウォーカー】

劇中で象徴的に使われる「anger begets anger(怒りは怒りをきたす)」という言葉。ヒロインと同じように、自分の胸にもなにか響くものがありました…©2017 Twentieth Century Fox

【映画ライター/おおまえ】年間200本以上の映画を鑑賞。ジャンル問わず鑑賞するが、駄作にはクソっ!っとポップコーンを投げつける、という辛口な部分も。そんなライターが、良いも悪いも、最新映画をレビューします! 最近のお気に入りは「グレイテスト・ショーマン」(2月16日公開)のゼンデイヤ!

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