「第2回沖縄国際映画祭」カウントダウンイベント最終日。桜坂劇場にて沖縄映画特集『オバアは喜劇の女王〜仲田幸子沖縄芝居に生きる〜』(出馬康成監督)が上映された。上映前のトークショーには出馬監督、沖縄喜劇の女王こと仲田幸子、女王の孫で女優の仲田まさえ、そしてスペシャルゲストにガレッジセール・ゴリが登壇し、会場に訪れた幅広い年齢層の観客を笑いの渦に巻き込んだ。
仲田幸子は沖縄県の有名な喜劇女優で、舞台やCMで活躍。映画は、彼女の芸歴63年を、過去の公演映像とともに、本人や家族、そして県内有名人のインタビューによって表現したドキュメンタリー作品だ。座長として、女優として人気のある仲田の素顔を、戦中戦後、家族、舞台への情熱、現在という構成で映し出している。
「根暗な自分が、仲田幸子さんの舞台を見て初めてゲラゲラと笑ったんです。だから、全国の人に伝えたいと思って映画を作りました」と出馬監督。「普段、人を笑わす仕事をされているけど、その裏にある姿、センシティブな家族愛など、沖縄ならではの喜劇役者の日常生活が見どころです」と述べた。
長い芸歴の中でインタビューや自伝の出版などを断り続けていた仲田幸子だが、監督の情熱に負け3年にわたる密着を承諾した。「私は芸歴63年。12歳で終戦、14歳でこの世界に入りました。今この年齢になり、“仲田幸子”として何かひとつは残したいという思いと、監督の必死ぶりに負けて、“いいよ”って。初めは、いつまで私を追っかけるの?と思っていたけど、進んでいく中で、63年の長い月日を芸一筋で生きてきて、それを残さないといけないなって気持ちが湧いたのと、そして監督にほれました。もう監督とは夫婦みたいさ〜(笑)」と、思いを語りながらも、笑いを呼んだ。
女王の孫で、自身も舞台に立ちオバアを支えている仲田まさえは「(オバアの存在に)感謝しています。そして、この映画には普段目立たないおじいちゃんが出てきます。素晴らしいお芝居を作ったおじいちゃんなので、ぜひこちらも見て楽しんでください」と、これまで仲田幸子の舞台を作・演出してきた“普段は目立たない”(?)オジイをアピール。すると、「オジイはちょっとボケていますけど、ボケる方が長生きするでしょ。“生きてる限りは死なないでおこうね”って」と仲田幸子が応え、会場を沸かせた。
盛り上がったところで、スペシャルゲストのガレッジセール・ゴリが登場! ゴリは「あ、どうも女王」と深くお辞儀をし握手。「(子供の頃からテレビで見ていて)女王は、今から300年くらい前の人かと。誕生が2億年前だよね? ティラノサウルスと同期でしょ?」というゴリのジョークに、会場が再び沸く。仲田幸子は「ゴリちゃんと私は顔が似ていて喜劇に向いている。内地で活躍しているのがうれしいと思っていました」と後輩への思いを口にした。ゴリは、「小さい頃からテレビをつけたら当たり前のようにいたので、てっきりテレビに住んでいるのかと思ってた。俺が小さい頃は、オバアの方言が分からなかったけど、両親が大爆笑していて、親をこれだけ笑わすってスゴイなって思っていましたから、今こうやって初めて同じ舞台に立っているのが不思議な感じです」と女王に賛辞を送った。
それからは、仲田幸子とゴリのアップテンポなトークに会場は爆笑の嵐!「なんで、早く会わなかったね?」と言う女王に対して、「会いたいけど、簡単に会える人じゃないから、言うこときかないって聞いてたから!」とゴリ。すると、仲田幸子は「一度、コンビとして舞台に立ちたいなって思っている。ゴリさん、その時はよろしくお願いしますね」との告白に会場からは一斉に拍手が。その“オファー”にゴリは「緊張する。仲田幸子の伝説はいろいろ聞くんですよ。台詞覚えない、舞台上では自由気ままに演じるって。ついていけるか不安」と胸中を語ると、仲田は「それ、どこで聞いたの!?」。ゴリは「いろんな人から聞くよ、インタビューにもまともに答えてくれないって」。さすが、ウチナーンチュ同士、次から次へと息の合う軽快なトークを繰り広げ、最後は、ゴリの「もし、一緒の舞台に立てることがあったら、一生懸命ついていきます」との決意に対して、仲田は「よろしくお願いします」と応えた。【東京ウォーカー】