企業の社員食堂レシピを掲載した珍しい料理本がヒットしている。体脂肪計シェアナンバーワンを誇る「タニタ」(東京都板橋区)を取り上げた『体脂肪計タニタの社員食堂 500kcalのまんぷく定食』(1200円、大和書房)だ。食堂で出されているメニュー31品のほか、実際に“やせた”という社員の声も掲載され、説得力抜群。1月末の発売から約2か月で、すでに8万5000部を発行し、“健康的にやせられる料理本”として注目を集めている。そこで、その話題の社員食堂にお邪魔した。
タニタ食堂では100以上(!!)もあるレシピの中から、毎日、メインと2種類の副菜、ご飯と汁物がセットになった定食を1種類提供。この日のメニューはメインが鮭のねぎ味噌焼き、副菜に白菜のひき肉煮とかぼちゃのスィートサラダ、そしてごはん(精白米)と味噌汁だ。カロリーは565kcal、塩分は3.7g。
面白いのは、各自で盛り付ける白米。なんと、炊飯器の横に“はかり”が置いてあるのだ。大小の茶碗どちらかを選んでよそった後、何gあるのかをはかるという仕組みで、なんとも“タニタらしさ”があふれている。さらに驚くのは、男性社員のご飯がものすごく“小盛り”だということ。女性よりも少ない量の人がいるくらいで、これで足りるんですか?と聞くと、「足りますよ」と平然な様子なのだ。
さて、肝心のメニューの中身はというと、料理に大葉やネギなど香味野菜がうまく使われ、何種類もの野菜が入っている。はじめは味が薄いと感じる人が多いそうだが、確かに味噌汁は少々薄めの味だが、ほかはしっかりとした味わいとボリュームがあり、十分満足感が得られる。カロリーが緻密に計算された料理だとはとても思えないくらい、とてもおいしいのだ。
タニタ食堂では、皆、談笑していてとても楽しそう。「ここを利用するようになって、風邪をひかなくなりました。家でも参考にしています」とは、入社3年目の長島千恵美さん。また、34歳男性社員の笠原靖弘さんは「入社5年で4kg増えた体重が、1年で入社時に戻りました」と言う。笠原さんの茶碗はとても小さく、「これにご飯を大盛りにすると、たくさん食べた気になる」のだとか。社員一人ひとりも工夫しながら利用しているようだ。
タニタ食堂がオープンしたのは今から10年前。当初はカロリー重視の献立だったため、ボリュームが少なく、味も薄く、社員からは不満の声が多かったのだそう。そのため、改良を重ねて今の形になったのだという。「しっかりおいしく食べて午後からの仕事を頑張ってもらえるよう、味と“食べ応え”を重視してメニューを構成しています」というのは、現在、食堂を管理する総務部所属の栄養士、荻野菜々子さん。1回に約200gの野菜がとれてカロリーは500kcal前後、塩分は3g前後に。そして昆布とカツオでダシをとるなど、なるべく市販のものは使わないよう心掛けていると言う。
出版後は取材依頼を受けたり社内での反響を聞いたりし、「自分がやってきたことが間違っていなかったんだって、うれしいです」と荻野さん。「今後は外食で出合ったおいしい料理を健康的にアレンジして、新メニューとして出していきたい」と意気込む。
体脂肪計を作る企業柄、もともと健康に対する意識が高い社員が多いタニタ。確かに、食堂を見渡しても太った人は見当たらない。企業カラーと取り組みがリンクして本もヒットしたのだろう。同社HPにも一部レシピが掲載されているので、気になる人は試してみて。【東京ウォーカー】