魔よけとして使われているアイヌ文様。全体として大きな柄に見えますが、基本の文様はとてもシンプルで、それを連続して使用したり、違う柄と組み合わせることでひとつのデザインとなっています。北海道初の伝統的工芸品に指定された二風谷イタ(お盆)と樹皮を材料とする織物、二風谷アットウシのデザインから代表的なアイヌ文様4種をご紹介します。
アイヌ文様にはいくつか基本的なものがありますが、北海道平取町二風谷地区を代表するものと言われるのが渦巻きの形のモウレノカとウロコの形のラムラムノカです。ちなみにノカというのは日本語の「形」、という意味になります。
特にラムラムノカは木彫りの作品ではよく目にします。このイタは木彫師、貝澤守さんの作品。
地に細かく彫られているのがラムラムノカです。ひとつひとつは3ミリ程度。こんなに細かいのにきっちりとウロコ模様になっています!
彫る時は指先をかすかに前後させてひとつひとつ彫っていきます。離れて見ると静止しているかのよう。
イタの中央に見えるひし形はシクノカといい、神の目の形と言われる文様です。貝澤さんはその中にまでラムラムノカを彫りこんでいました!
お盆の左右に広がるのは渦巻きの形のモウレノカ。この文様は着物でもよく使われます。アットウシの工芸家、藤谷るみ子さんが作った着物の背中にもこのとおり。
中央部にはモウレノカを組み合わせて作ったシマフクロウの目のモチーフがあります。
モウレノカは渦巻きの中央部分をどこまでクルリとさせるかで雰囲気がかなり異なります。同じく藤谷さんの作品で、渦巻きを巻き込んで刺繍したものも。
尖った文様はアイウシノカ。トゲを表現しています。袖部分のアイウシノカ。
背中部分にもアイウシノカをつなげた文様があります。
ひとつひとつはシンプルですが、文様の組み合わせは無限。作家の発想次第で色味を足さずとも個性的なものが仕上がります。天然石と組み合わせて全く別の雰囲気の工芸品を作る作家もいます。アイヌ文様を見かけたら上記のどの文様が使われているのかぜひ探してみて。思いがけず個性的な作品に出会うかもしれません。
※文中のアットウシの「ウシ」、ラムラムノカの「ム」、シクノカの「ク」、アイウシノカの「シ」はアイヌ語表記では小文字となります。
貝沢民芸 ■住所:平取町二風谷76-7 ■電話:01457・2・2584 ■時間:9:00~18:00 ■休み:不定
藤谷民芸店 ■住所:平取町二風谷 ■電話:01457・2・3408(店舗には電話なし。連絡はこの番号へ) ■時間:9:00~17:00ころ ■休み:不定休(11~4月は要事前連絡)
二風谷工芸館(貝澤守さん、藤谷るみ子さんの作品を販売) ■住所:平取町二風谷61-6 ■電話:01457-2-3299 ■時間:9:00~17:00 ■休み:12/30~1/5
市村雅代